【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ

文字の大きさ
上 下
4 / 8

4話「それぞれの過去」

しおりを挟む

「どういうことなのレイ! 
 説明して!」

「お嬢様、お顔が怖いですよ。
 美人が台無しです」

思わずレイに詰め寄ってしまった。

レイは苦笑いを浮かべ困った顔をしている。

「実はですね……」

レイは十二歳のとき、冒険者になると言って家を出ていった。

レイはロイエンタール侯爵家の住み込みの使用人の息子だった。

レイの父親は庭師のラルドおじさん、母親はメイドのカーラおばさん。

二人ともとても気さくで良い人たちだった。

ラルドおじさんとカーラおばさんは、侯爵夫人だった母と仲が良かった。

そのせいか、私とレイは幼いときから兄弟のように育ち、何をするのも一緒だった。

だからレイが冒険者になると言って、屋敷から出て行ってしまったときはショックだった。

冒険者になるために家を出たレイは、メキメキと頭角を現し、四年でAランク冒険者になったそうだ。

ある日、レイは冒険者ギルドからの依頼を受けて、シュテルンベルク帝国にモンスター退治に行った。

依頼自体は簡単なもので、すぐに達成できたらしい。

帰りに帝都に寄ったとき、レイの前に一台の豪華な馬車が止まり、貴婦人が降りてきて、
「レイナード! 生きていたのね!!」
と言ってレイを抱きしめたそうな。

「その貴婦人が僕の生き別れの母親で、皇帝の側室だったんですよ。
 実母は十六年前、皇后一派との勢力争いに巻き込まれ、赤ん坊だった僕は皇后派に誘拐された。
 ちなみに実母が僕が生き別れの息子だと気づいたのは、皇帝の若い頃の顔に、僕がそっくりだったからです。
 実母との再会後、僕は宮廷で魔力鑑定を受け皇帝の実の息子だと判明しました。
 何年も前に皇后一派は一掃され、今は政権が安定しているので、僕がお嬢様を連れてシュテルンベルク帝国に行っても問題ありません」

「じゃあ、ラルドとカーラは……」

「僕の本当の親ではありません。
 何らかの理由で誘拐犯が死んだか、誘拐犯が僕を手放した。
 義父母は赤ん坊の僕を拾い、実の子として育ててくれたのです」

「ラルドとカーラに会えたの?
 あの二人は三年前に……」

「知ってます。
 先代の奥様が亡くなったときに解雇されたんですよね?
 大丈夫ですよ、育ての親のことは必ず探し出して保護しますから」

「ごめんなさい。
 二人を守ってあげられなくて。
 あの二人が解雇されたのは私のせいなの。
 ラルドとカーラは、継母と腹違いの妹から私をかばってそれで……」

母が亡くなってすぐ、父は愛人と結婚した。

父と愛人の間には、私の一つ下の妹がいた。

私に味方する使用人は次々と解雇され、その中にはラルドとカーラもいた。


☆☆☆☆☆
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました

お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

婚約破棄された令嬢の父親は最強?

岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

公爵令嬢は結婚前日に親友を捨てた男を許せない

有川カナデ
恋愛
シェーラ国公爵令嬢であるエルヴィーラは、隣国の親友であるフェリシアナの結婚式にやってきた。だけれどエルヴィーラが見たのは、恋人に捨てられ酷く傷ついた友の姿で。彼女を捨てたという恋人の話を聞き、エルヴィーラの脳裏にある出来事の思い出が浮かぶ。 魅了魔法は、かけた側だけでなくかけられた側にも責任があった。 「お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。」に出てくるエルヴィーラのお話。

処理中です...