2 / 8
2話「眷属《けんぞく》」
しおりを挟む「大丈夫ですよ、お嬢様。
人間の張った結界ぐらい、僕の眷属なら簡単に壊せますから」
「えっ?」
「お嬢様。
ちょっと鉄格子の近くまで来てくださいますか?」
「分かったわ」
壁際に蹲っていた私は、立ち上がりレイに言われた通りに鉄格子の側まで行く。
鉄格子の前まで来たことで、鉄格子の向こう側に立っていたレイとの距離が縮まる。
近くで見るとレイの美形さがよりはっきりと分かる。
整った眉、長い睫毛、形の良い鼻と唇……神様に愛されて造形された顔って、レイのような顔のことを言うのね。
「お嬢様。
昔ならお美しかったですが、しばらく見ない間に一段とお美しくなられましたね」
レイが私の目を見てニコリと笑う。
「もうやめてよ、こんなときに……!」
レイは私の前でハニカムの禁止!
私の心臓がドキドキしすぎておかしくなってしまうわ!
…………それに、こんなボロボロの格好をしている私が綺麗に見えるわけがない。
「準備ができたよドラッへ。
壁を攻撃してくれ。
但し中にいるお嬢様を攻撃したらただでは済まさないからな。
壊すのは壁だけだ、分かったな?」
レイはポケットから魔石を取り出して、誰かと通信していた。
ドラッへって誰?
というか、通信用の魔石なんて貴重なものをなんでレイが持ってるの?
ホルン国の王族だって、通信用の魔石は二つしか持ってないのに。
そんな貴重な物をレイは、どこで手に入れたのだろう?
「ぐおおおおおおおおおおお…………!!」
そんなことを考えていると、床や壁が揺れるほどの大きな唸り声が聞こえた。
何? 今の声……?
まるでドラゴンの咆哮みたい……?
ドッゴーーーーン!
と何かが砕ける音がして、私は咄嗟に目を閉じる。
目を開けると壁に大きな穴が開いていた。
塔の外に目を向けると、漆黒の翼と鱗を持つ五本指のドラゴンが………!
「なっ、えっ?
……ど、どどどドラゴンがどうしてここに……?」
私は恐怖と驚きのあまり、その場にへたりこんでしまった。
ドラゴンが鋭い爪を振るうと真空波が起き、次の瞬間には牢屋の鉄格子がスッパリと切られていた。
「ありがとうドラッへ。
これでお嬢様と僕を隔てる障害が完全になくなったよ」
レイは顔色一つ変えずにそう言うと、切られて役目を果たさなくなった鉄格子をまたいだ。
「すみませんお嬢様。
怖い思いをさせてしまいましたね」
レイが私の前に跪き、そっと私の右手を取る。
「外にいるドラゴンさんはレイの知り合いなの?」
「僕の眷属のブラックドラゴンのドラッヘです」
「へっ?」
間抜けな声を出してしまった。
「ドラゴンが眷属って、レイあなた一体……?」
☆☆☆☆☆
3
お気に入りに追加
624
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
溺愛を作ることはできないけれど……~自称病弱な妹に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、イケメン幼馴染と浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる~
弓はあと
恋愛
「センティア、君との婚約は破棄させてもらう。病弱な妹を苛めるような酷い女とは結婚できない」
……病弱な妹?
はて……誰の事でしょう??
今目の前で私に婚約破棄を告げたジラーニ様は、男ふたり兄弟の次男ですし。
私に妹は、元気な義妹がひとりしかいないけれど。
そう、貴方の腕に胸を押しつけるようにして腕を絡ませているアムエッタ、ただひとりです。
※現実世界とは違う異世界のお話です。
※全体的に浮気がテーマの話なので、念のためR15にしています。詳細な性描写はありません。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。
さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます
夜桜
恋愛
令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。
アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。
〖完結〗私は誰からも愛されないと思っていました…
藍川みいな
恋愛
クーバー公爵の一人娘として生まれたティナは、母を亡くした後に父セルドアと後妻ロザリア、その連れ子のイライザに使用人のように扱われていた。
唯一の味方は使用人のミルダだけ。
そんなある日、いきなり嫁ぐように言われたティナ。相手は年の離れた男爵。
それでもこの邸を離れられるならと、ティナはボーメン男爵に嫁いだ。
ティナを急いで嫁がせたのには理由があった。だが、ティナを嫁がせた事により、クーバー家は破滅する。
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
11話で完結になります。
※8話は残酷な表現があるので、R15になってます。
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。
四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。
しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。
だがある時、トレットという青年が現れて……?
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる