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8話「優秀で優雅でやさしくて」
しおりを挟む便箋の束が高速でめくられていく。
速読ができるなんて、カトリーナ様は優秀なんですね。
カトリーナ様は人間界にいたとき、継母に虐待されてお風呂に入らせて貰えず髪はボサボサ、栄養失調で青白い顔をして肌はカサカサだった。
今のカトリーナ様は髪はサラサラ、頬は桃色、お肌はつやつや、どこから見ても健康的で知的な美女っす。
魔界特性シャンプーとトリートメントと化粧水と美味しい物のおかげっすね。
水色のドレスもよく似合ってるっす。
手紙を読む所作も優雅っす。
これがカトリーナ様の本来の美しさなんすね。
カトリーナ様がこんな美人だと知ったら、彼女の元婚約者は地団駄踏んで悔しがるだろうな。
王家も公爵家も見る目がないっす。こんなに美しくて優秀な人の価値に気づかずに国外追放を命じるなんて。
手紙を読み終えたカトリーナ様は、便箋をテーブルに置くとふうと息を吐いた。
オレは魔王様の手紙を推敲したので、手紙に書かれていることを知っている。
魔王様の手紙には、子供の頃に子犬の姿に変えられ人間界に追放されたこと。
そのときカトリーナ様に救われたこと。
それからの数年間公爵家で過ごしたこと。
優しかったカトリーナ様の母親が亡くなり、そのあとやってきた継母に森に捨てられたこと。
そのあと先代の魔王様が亡くなり魔法が解け、魔界に帰り魔王になったこと。
魔王になったあともカトリーナ様のことを見守っていたことの説明。
すぐにでも助けたかったけどカトリーナ様に婚約者がいたので手を出せなかったこと。
カトリーナ様が王太子に婚約破棄された日、カトリーナ様の同意なく魔界に連れさったこと。
カトリーナ様を魔界に連れて来てからのあれこれについての謝罪が記されていた。
「カトリーナ様、魔王様は初夜にカトリーナ様に言ってしまった暴言をかなり反省してます。
魔王様は人間黒界の常識に疎かっただけでして……。
だから婚初夜にカトリーナ様に『お前を愛してないし、これからも愛することはない! 俺に愛されたいなど思うな!!』って言ったのは何と言うか……言葉のあやって言いますか」
「…………」
カトリーナ様の表情は読めない。
やはり謝るなら、人間界から同意なく連れ去ったところから詫びるべきだろうか?
「ふふふ」
カトリーナ様は口元を手で隠しくすりと笑った。
この状況でこの笑みは何を意味するのか?
「ラード様とおっしゃいましたね?
私は初めから怒っていませんよ」
「えっ?」
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