完結・せっかく助け出した初恋の人に、新婚初夜に『お前を愛してないし、これからも愛することはない!』って真顔で言うとか、魔王様はアホっすか!?

まほりろ

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4話「魔王様と従者」

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「だってリッキーさん、カトリーナ様は魔王様の恩人っすよ?!
 いくらカトリーナ様が魔王様の初恋の人でも、
 己の正体も明かさずに攫ってきて、
 魔界に連れてきた当日に理由も言わず花嫁衣装を着せて、
 強制的に結婚式を挙げるとか正気の沙汰じゃないっす!
 いくら好きでも物事には順序があるっす!
 それなのに初夜に『俺はお前を愛してないし、これからも愛することはない! 俺に愛されたいなど思うな!!」って言うとか最低っすよ!」

「それはほら、魔王様にも何か深いお考えがあるのだろう。
 そうですよね、魔王様?」

リッキー様が魔王様に尋ねた。

「にっ……いて、あった」

王様が消え入りそうなほど小さな声で囁いた。

「はっ? 何ですか聞こえませんよ魔王様?」

言いたいことがあるならはっきり言って欲しい。

「小説に、書いてあったのだ……。
 婚約破棄の後、颯爽と現れた王や王子にヒロインは惚れると……」

魔王様がぼそぼそと呟いた。

魔王様がカトリーナ様を迎えに人間界に行ったとき、魔王様の背後には空を埋め尽くすほどの魔王の軍隊がいた。

なのでそのときカトリーナ様が「素敵な王子様が颯爽と現れて私を助けてくれたわ。うっとり(ハートマーク)」と思ってくれたのかは微妙なところっす。

むしろあの光景は人間にとっては地獄絵図だったのでは?

国王は玉座でおもらし、王太子とベティは涙と鼻水をべしゃべしゃと垂らしながらその場に尻もちをついて失禁してたっす。

できるならカトリーナ様をいじめていたカス共の頭を、ドラゴンにパックンとさせたかった。

ドラゴンはグルメだからゴミは食べないか。奴らを食べさせるならオークの方が適任だったかもしれないっすね。

「小説にはこうも書いてあった……。
 新婚初夜には、
『お前を愛してないし、これからも愛することはない! 俺に愛されたいなど思うな!!』
 と言えって……。
 そう言葉にして相手に伝えることで、相手の記憶に夫の印象が強く残る。
 その後なんやかんやあって妻が夫の魅力に気づいて、なんやかんやあって最終的にうまくいくと……」

どこでそんな偏った知識仕入れたんですかね? うちの魔王様は。

その「なんやかんや」の部分が一番大事なのに、具体的にどうするか全然わかってないし。

「魔王様知ってますか? 
 初夜に『お前を愛してないし、これからも愛することはない! 俺に愛されたいなど思うな!!』と言った旦那が、
 新妻に愛想をつかされて、賢い奥さんはその日から離婚に向けて行動を始める小説の方が圧倒的に多いですよ」

「へっ……??」

魔王様がひどく間抜けな声を上げた。

「旦那が奥さんの魅力に気づいてた時には時既に遅く、奥さんに不貞の証拠と離婚届を突きつけられて、白い結婚が成立するっす。
 そういう小説も星の数ほどあるんすよ。
 むしろ最近はこっちの話の方が主流っす」

魔王様はオレの説明を聞いて呆然としていた。


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