【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」

まほりろ

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16話「婚約」

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――ミハエル・オーベルト視点――



「まずはオーベルト男爵の家を改装しよう。
新築の家をドカンと建てよう。
オーベルト男爵家はレーアちゃんが住むには狭すぎるし、わしが使う書斎も欲しいし、わしとママの寝室も欲しいし、ママの使う化粧室も欲しいしね」

「図書室もほしいわ~。
ご婦人たちを集めてティーパーティーもしたいから、ダンスホールも欲しいわね。
ガーデンパーティもしたいわ」

「よし王宮に負けないくらい、豪華なダンスホールと立派な庭園も作ろう。
そうなると近隣の土地を買い取る必要があるね」
 
「あの皆さん何の話を……?」

母さんに頼んで、カイテル公爵とお義母様とチェイさんの分のお茶を追加で用意して貰った。

母さんはカイテル公爵夫妻がオーベルト男爵家に訪れたことに、びっくりしていた。

それでも母さんは気を失うこともなく、お客様用にとっておいた、お茶とお茶菓子を出してくれた。

「新居の話をしているんだよミハエルくん。
わしは宰相の職を辞めてきた。
あと数年もすれば息子も成人する。
息子が成人したら、公爵家は息子に任せ、余暇は妻と娘と共に、娘の嫁ぎ先でのんびりと暮らすつもりだよ。
オーベルト男爵家には、レーアちゃんの嫁入りと同時に移り住む予定だからよろしく」

「あの、初耳なんですけど……」

「お金のことは心配いらないよ。
改築費も土地の購入費用も全部カイテル公爵家が出すから。
もちろんわしとママの滞在費もね」

レーア様がお嫁に来るのは分かる、むしろ大歓迎だ!

なぜカイテル公爵夫妻が、娘の嫁ぎ先についてくるんですか?

「まさかこんなことで気が変わった~とか、言わないよね?」

その時鈍く光った公爵閣下の目は、ネズミを殺す時の猫の目だった。

僕に拒否権はないと悟る。

「そんなことあるわけないじゃないですか!
お義父様もお義母様も好きなだけ男爵寮に滞在してください!」

「誰が『お義父様』なのかな?
まだ娘を嫁にやったわけじゃないよ~。
今の段階で気安く『お義父様』と呼ばないでくれるかな~~?」

公爵閣下の口元は笑っているが、目元が全然笑っていなかった。

「すみません」

どさくさに紛れてカイテル公爵を「お義父様」と呼んでみたが、やはり受け入れてはもらえなかった。

僕はカイテル公爵とうまくやっていけるだろうか?

結婚後カイテル公爵と同居? 

胃が痛くなってきた。
 
「お父様、ミハエル様をいじめないでください。
ミハエル様をいじめたら、お父様でも許しませんよ」

レーア様がカイテル公爵を叱りつける。

「私も今の言い方はないと思うわ」

お義母様がカイテル公爵の頬をつねる。

レーア様とお義母様がいてくださるなら、なんとかなりそうな気がする。

「ミハエル様、父が大人気なくてごめんなさい」

レーア様が僕の手を握る。

それだけで、他のことはどうでも良くなってしまう。

「僕は大丈夫ですよ。
レーア様」

話しかけることすら不可能だと思っていた高嶺の花のレーア様が、僕のお嫁様になってくれるんだ。

義父とメイドさんに嫌われていても、平気だ!

レーア様と一緒ならどんな障害でも乗り越えていける!





学園を卒業した僕は、レーア様と正式に婚約した。

今すぐにでも結婚したいけど、まずは婚約から。

一年の婚約期間を経てから、結婚する予定だ。

オーベルト男爵家は改装工事中なので、僕と母はカイテル公爵家でお世話になっている。

僕とレーア様の部屋は別々。

婚約中の身なので仕方ないとはいえ、レーア様の部屋から一番離れた部屋を与えられた。

カイテル公爵家は内装も豪華でおしゃれで、ご飯も美味しくて、宮殿に住んでいるような気持ちだ。

カイテル公爵家に越して来てから、僕はカイテル公爵の雇った家庭教師に、朝は日が昇る前から、真夜中まで貴族の基礎知識を叩き込まれている。

男爵家の教育と、公爵家の教育ではこんなに差があるのかと驚いた。

その他にも、マナーとかダンスとか領地経営の方法とか、覚えることは山ほどある。

僕が勉強している間、オーベルト男爵家の領地経営はレーア様が行っている。

レーア様は、元第一王子のベルンハルト様と婚約していたとき、王子の仕事の殆どをこなしていただけあって、かなり優秀だ。

王子妃教育と、生徒会の仕事と、王子妃と王子の公務までこなしていた方は違う。

それに比べて僕は……学園を卒業したのに、学園の勉強のおさらいまでやらされている……情けない。

「ミハエル様の覚えがよいと、家庭教師が話しておりましたわ」

「えっ?」

レーア様と一カ月ぶりのお茶会。

学園を卒業してからのレーア様はますます美しくなられ、今では大人の魅力まで醸し出している。

「ミハエル様はもともと優秀だったのです。
ですが前男爵様が早くに亡くなられ、領地経営をしなければならなかった。
そのため学業と領地経営の両立が出来ず、成績が下がってしまっただけなのです。
公爵家の雇った優秀な家庭教師の下で勉強した結果、ミハエル様はどんどん知識を吸収し、成績が急上昇しておりますのよ」

「そう、だったんですか?」

レーア様がそんな風に評価してくれていたなんて嬉しいな。

「私も父もミハエル様には期待しておりますわ」

レーア様が僕の手を握る。

柔らかい、あったかい、いい匂い。

それだけで僕は天にも昇る心地になる。

「レーア様の期待に添えるように頑張ります!」

よーーし! もっと勉強して、レーア様にふさわしい男になるぞ!


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