【完結】「私が彼から離れた七つの理由」

9話「フリード様と共に」最終話

私が彼から離れた七つ目の理由、私に素敵な恋人が出来たから。




「アリーゼ、怖くなかったかい？」

フリード様が私の手を取りそっと握りしめました。

彼の瞳には慈しみと愛情が溢れていました。

ああ……好き。

お慕いしておりますフリード様。

「平気です。
　フリード様が守ってくれると信じていましたから」

手を取り合い見つめ合う私たちを見て、お父様が咳払いをしました。

「分かっていると思うが、君たちはまだ婚約前だからね」

「アリーゼ、フリード様、節度のあるお付き合いをしてね」

両親が近くにいたことを思い出し、私はフリード様の手を離しました。

短期留学中、ローレンツ家にお世話になっている間、いつしか私とフリード様は恋仲になっていました。

フリード様と一緒に帰国したのも、両親と婚約について話し合いをするためです。

「しかし彼がアリーゼの初恋の相手だったとはね」

フリード様が窓の外を見て、眉根を寄せました。

窓の外を眺めても、もうナヨタ子爵家の馬車は見えません。

「昔の話です。
　黒歴史ですわ」

抹消したい過去です。

「これからは俺がアリーゼの側にいる。
　コニーはもちろん他の男も近づけさせないよ」

「フリード様、では我が国の学園に通ってくださるのですか？」

「新学期から通うつもりだよ。
　転入手続きはすでに済ませてある」

「嬉しいわ。
　フリード様と一緒に学園に通えるのね！」

「まだ婚約の許しを出していないのに、フリードくんに外堀から埋められてしまいそうだよ」

お父様が寂しげな顔で感想を漏らした。

「俺は次男なのでクルツ子爵家に婿入りできます。
　そう悲しまないでください、クルツ子爵」

フリード様の言葉にお父様は複雑そうな顔をしていた。




☆☆☆☆☆



それから程なくして、フリード様がクルツ子爵家に婿入りするという条件で、私と彼の婚約が決まりました。

フリード様は新学期から私と同じ学園に通うことになりました。

容姿端麗で文武両道なフリード様に、学園の女生徒たちはあっという間に夢中になったのですが。

フリード様は他の女子には見向きもせず、私の側にいてくれます。







同じ頃、ベッヒャー伯爵家は借金が膨らんで破産しました。

ベッヒャー伯爵家に投資していたナヨタ子爵家も共倒れしました。

ベッヒャー伯爵家もナヨタ子爵家も爵位を返上することになったそうです。

コニーは学園を退学し、両親と共に田舎に引っ越しました。

グリゼルダ様が没落後、どのような人生を歩んでいるのかはわかりません。

地方の娼館で彼女によく似た少女を見たという話もあるが、真相は定かではありません。

一つ言えるのは、平民になった彼らに、私が会うことはないということです。

グリゼルダの被害者が私の他にもいて、彼女たちが私と同じ目にあっていたことを証言してくれたので、私の悪評はすぐに払拭されました。

みな、ベッヒャー伯爵家が怖くて証言できなかったのです。





追伸。

私とコニーの仲を最初に引き裂いたロジャー・ムッキーは、初等部のとき女子を軽視してたせいで女子から毛嫌いされ、弱い男子を殴っていたせいで男子からも無視されています。

私にとってはコニーとの縁を切る最初のきっかけをくれたある意味恩人？なので、挨拶だけは交わしています。

そうしたら彼に妙に懐かれて、私の護衛騎士になりたいとか言ってきたので丁重にお断りしておきました。

彼にはぜひ、彼の父親と同じ騎士団に所属してもらいたい。




――終わり―――





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【書籍化のお知らせ】
この度、下記作品が書籍化されることになりました。

「彼女を愛することはない　王太子に婚約破棄された私の嫁ぎ先は呪われた王兄殿下が暮らす北の森でした」
著者 / まほりろ 
イラスト / 晴
販売元 / レジーナブックス
発売日 / 2025年01月31日
販売形態 / 電子書籍、紙の書籍両方
（紙の書籍が全国の書店に行き渡るのは2月4日頃になると思います）
https://www.alphapolis.co.jp/novel/749914798/681592804


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