【完結】「私が彼から離れた七つの理由」

まほりろ

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8話「さよならコニー」ざまぁ

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「あなたみたいな最低な男、死んでもお断りです!!」

彼の言葉にあまりにも腹がたったので、私はドアを開けて叫んでいました。

コニーは私を見て、しばし呆然としていました。

しばらくして、彼は目を何度も瞬かせていました。

「アリーゼなのか……?
 驚いたよ、こんなに美しくなるなんて……。
 僕はグリゼルダに騙されていたんだ……!
 頼むよ許してくれ!
 もう一度やり直そう!」

あれだけ最低なことを言ったくせに、舌の根もかわかないうちにこの男は……!

「やり直すも何も、あなたとは何も始まっていません!
 あなたとはただの幼馴染です!
 いいえ、あなたに絶縁されたので幼馴染ですらありません!
 赤の他人です!
 お帰り下さい!
 顔も見たくありません!!」

私がそう言うと、コニーは眉を吊り上げ、額に複数の青筋を立てました。

「ちょっと可愛くなったからって調子に乗るなよ!
 メイドも執事も下がらせた!
 ここには僕と君しかいない!
 僕がその気になれば、お前を手籠めにだってできるんだ!
 そうだ!
 先に体の関係を結んでしまおう、それから婚約だ!」

そう言ってコニーが私の部屋に押し入ってきました。

コニーが私の肩に向かって手を伸ばしました。

しかし彼の手が私に届くことはありませんでした。

彼の手は別の男性によって捻り上げられていたのです。

「痛っっ……!!
 誰だ!
 僕は子爵家の長男だぞ!
 使用人風情が、貴族に手を出してただで済むと思うってんのか!」

コニーは、自分の腕をひねり上げている男に向かってそう叫びました。

「誰って、俺はアリーゼの恋人だよ!
 このゲス野郎!」

そう言って彼は、コニーの腕を更に強く締め上げました。

彼に締め上げられたコニーは、泣きべそをかいていました。

「フリード様、ありがとうございます。
 お陰で助かりました」

実は、私の部屋にはフリード様がいらしたのです。

彼は、コニーに襲われそうになった私を助けてくれたのです。

部屋を乱暴に叩く人がいるのに、使用人も味方もいない状態で、扉を開けるほど、間抜けではありませんわ。

「部屋の中に男がいたなんて……!
 僕はお前と二人きりで話がしたかったのに!
 僕を騙すなんて、この卑怯者!!」

コニーが喚いています。

卑怯も何も勝手に私が部屋に一人でいると思ったのはそちらです。

私が扉を開けたとき、フリード様には扉の死角に隠れて貰ったので、こちらにも多少彼を騙す意図はありましたけれど。

「か弱い女性が、一人であなたみたいな最低な人間と対面するわけないでしょう?」

「君の話はすべて録音させてもらったよ。
 後でクルツ夫妻にも聞いて貰おう」

フリード様はポケットから録音機を取り出しました。

彼は機械の開発もしているのです。

「コニー・ナヨタ子爵令息、今日限りあなたとの縁を切ります。
 もうあなたを幼馴染だとは思いません。
 二度と私に話しかけないでください。
 そして二度と我が家の敷居を跨がないでください」

私が冷然と言い放つと、コニーが怒りの為か顔を真っ赤にしていました。

「お前がなんと言おうと、僕の両親と君の両親は仲良しなんだ!
 僕は君と必ず結婚する!」

コニーはフリード様に拘束されながら、なおも吠えていました。

いっそのこと縄でもかけてやろうかしら?

「残念ながらそれはないよ、コニーくん」

そこへ私の両親がやってきました。

廊下でコニーと揉めたメイドが、彼らを呼んできてくれたようです。

「おじさま、おばさま……!」

コニーは、すがるような目で私の両親を見ました。

娘の部屋に押し入って乱暴をしようとしておいて、その両親になぜすがれるのでしょうか?

彼の思考回路はよくわかりません。

「ナヨタ子爵夫妻との交渉は決裂したよ。
 もう彼らは私達の友人ではない。
 先に関係を壊したのは君だよ、コニーくん。
 娘にパーティーで恥をかかせておいて、うちとの関係が続くと思っていたのかね?
 だとしたらクルツ子爵家も舐められたものだ。
 君はもうアリーゼの幼馴染ではない、赤の他人だ。
 二度と我が家の敷居を跨がないでくれ。
 これはお願いではない、警告だ」

お父様に睨まれ、コニーはガックリと肩を落としました。

普段優しいお父様が怒るなんて、彼は想像していなかったようです。

コニーは執事に拘束され、屋敷の外に連行されていきました。

彼は、先に我が家を追い出されていたナヨタ子爵夫妻と共に馬車に乗り、去っていきました。

さよならコニー、二度と話すことはないでしょう。

同情はしないわ。あなたが自ら招いたことなのだから。




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