7 / 9
7話「黒歴史」
しおりを挟むコニーとグリゼルダがどうなろうと私には関係ありません。
しかしナヨタ子爵家はそう思っていないようで……。
ナヨタ子爵家はベッヒャー伯爵家に多額の融資をしていたそうです。
ベッヒャー伯爵家が破産したら、ナヨタ子爵家も共倒れです。
そこでナヨタ子爵家は、うち(クルツ子爵家)に援助を求めてきたのです。
彼らはグリセルダと婚約破棄したばかりの、コニーを引き連れてやってきました。
私はコニーに会いたくなくて、彼らが訪ねて来たことを知り自室にこもりました。
両親が応接室でナヨタ子爵たちの相手をしています。
当家の優秀な使用人が、応接室での話を逐一教えてくれるので、部屋にいても両親が彼らと何を話しているか分かりました。
ナヨタ子爵はこのように言っているようです。
「昔からの約束通りコニーとアリーゼを結婚させよう。
やはり気心がしれた幼馴染と結婚するのが一番いい。
コニーもアリーゼもお互い初恋同士。
悪い話ではないだろう?」
今更、どの口がいっているのでしょうか?
状況によって、手のひらをくるっくる返すような家を信用できるはずがありません。
「グリゼルダと婚約するから、クルツ子爵家とは縁を切る!」
夏休み前、私はコニーからこのように言われているというのに。
コニーは、学園のパーティという公の場で、皆が見ている前でそう宣言し、当家の名誉を傷つけたのです。
子供の戯言では済まされません。
パーティーのあと、ナヨタ子爵家から当家に対する謝罪はありませんでした。
それはコニーの言葉をナヨタ子爵家が認めたも同然です。
なのに今更どの面下げて当家の敷居をまたげるのでしょうか?
あの一件で私がどれだけ傷ついたか……!
それなのに謝罪もないなんて……!
ナヨタ子爵家の図太さに、私は心底辟易していました。
メイドが「両家の話し合いは決裂しそうです」と告げに来ました。
まあ、そうなるだろうと私も思っていました。
両親は、パーティ会場から帰ってきた酷い状況の私を見ています。
事実確認もしないでコニーは私を悪者と決めつけ、皆の前で断罪しました。
公衆の面前で、当家に絶縁を突きつけて置きながら、あっさり許されると思っている方がどうかしているのです。
話し合いの情報を仕入れる為に、メイドが私の部屋を出ていきました。
しばらくして、メイドと誰かが廊下で言い争う声が聞こえました。
この声はコニーです。
どうやらコニーが応接室を抜け出し、私の部屋の近くまで来ているらしいのです。
幼馴染とはいえ、他人の家を許可なく歩き回るなんて礼儀のなってない男です。
コニーはメイドの制止を振り切り、私の部屋の前まで来ました。
コニーは私の部屋の扉をドンドンと乱暴に叩きました。
「アリーゼいるんだろ!
僕だよ、コニーだよ!
パーティーでのことは謝るよ、開けてくれ!
仲直りしよう!」
はぁ……、なぜあれだけの事をしておいて許されると思っているのでしょう?
彼はきっと当家のお金だけが目当てなんですね。
当家がお金を貸さなかったら、ナヨタ子爵家は破産してしまいますものね。
「帰ってください! 迷惑です!」
私が冷たく言い返すと、今度は部屋の外から怒鳴り声が聞こえてきました。
彼はドカドカと乱暴に扉を叩きました。
「おい開けろよ!
優しく声をかけてやれば調子に乗りやがって!
お前、学校での自分の評判を知っているのか!?
『グリゼルダの劣化コピー』『嘘つきアリーゼ』だ!
評判が悪くブサイクでセンスのないお前を、嫁に貰いたがる物好きはこの国にはいないんだよ!
イケメンの僕がお前ごときで手を打ってやるって言ってるんだ!
下手に出てる間に出てきて『はい』と返事をしろ!
応接室に行って、おばさまとおじさまにこう言うんだ!
『コニーは初恋の人よ。私、彼と結婚するわ!』ってな!
それからナヨタ子爵家へ融資をするように、おじさまとおばさまを説得しろ!!」
わかってはいましたが、こうもはっきりと財産目当てと言われると、嫌な気分になりますね。
彼に惚れていた時期があるなんて、完全に黒歴史です。
56
お気に入りに追加
710
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください
未知香
恋愛
婚約破棄を告げられたミレーナは、冷静にそれを受け入れた。
「ただ、正式な婚約破棄は呪いを解いてからにしてもらえますか」
婚約破棄から始まる自由と新たな恋の予感を手に入れる話。
全4話で短いお話です!
やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」
家紋武範
恋愛
ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。
ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。
婚約者が幼馴染のことが好きだとか言い出しました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のテレーズは学園内で第6王子殿下のビスタに振られてしまった。
その理由は彼が幼馴染と結婚したいと言い出したからだ。
ビスタはテレーズと別れる為に最悪の嫌がらせを彼女に仕出かすのだが……。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?
青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。
エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・
エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・
※異世界、ゆるふわ設定。
とある令嬢の婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある街で、王子と令嬢が出会いある約束を交わしました。
彼女と王子は仲睦まじく過ごしていましたが・・・
学園に通う事になると、王子は彼女をほって他の女にかかりきりになってしまいました。
その女はなんと彼女の妹でした。
これはそんな彼女が婚約破棄から幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる