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十三話「兄様と僕が馬車の中でいちゃいちゃしている話②」
しおりを挟む「うわぁ、ディックの卵焼き美味しそう!」
「本当? ボクが作ったんだ。エミリーに褒められて嬉しいな、よかったら一口食べる?」
「いいの? ありがとう!」
「エミリー、あーんして」
「あーん」
僕に差し出されたディックの手は、卵焼きが僕の口に入る寸前に誰かに掴まれた。
「悪いね、シュトラウス家の者は専属のシェフが作ったもの以外口にしてはいけないという決まりがあるんだ」
「兄様!」
聞き覚えのある声に振り返ると、兄様がにこにこと笑いながらディックの腕を掴んでいた。
兄様のサファイアの瞳から吹雪が出ていた気がするけど、僕の気のせいだよね?
「ディック・ランペ、君とは生徒会室で二人きりで話した方がよさそうだね」
兄様がにこりと笑うと、ディックの手からフォークが落ちた。
ディックの顔が青を通り越して紫色になり、口から白いものが出ていた。ディックの口から出てるのってもしかして魂? まさかね。
「行くよ、エミリー」
兄様が僕の手を取り、椅子から立ち上がらせる。
「ごめん、ディックまたね」
ディックに手を振るがディックから返事はなかった。
いつの間にか僕と兄様はカフェテリア中の注目を集めていた。
兄様は皆の視線を気にすることなく、僕の手を引きカフェテリアの出口に向かう。
◇◇◇◇◇
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