3 / 5
3話「落ち込むレイチェル」
しおりを挟む「レイチェル、メイクを落とさなくてはだめよお肌に悪いわ。ドレスを着たまま寝たのね、ドレスがしわくちゃじゃない、ドレスを脱いでお風呂に入りましょう」
「レイチェルや、ホットレモネードとクッキーを作ってきたよ、少しは食べなさい」
お母様とお祖母様が私の部屋に入って来て、あれこれと世話をやいて下さいました。
私、帰宅してからずっと部屋で泣いておりましたの、メイクは涙でぐちゃぐちゃ、オートクチュールのドレスはシワだらけ、髪はボサボサ、最低の状態ですわ。
ホットレモネードを飲んで、顔を洗って、髪をとかし、普段着に着替えをしたら少しだけ落ち着きました。
「お母様、お祖母様、騙しましたわね、【カウントダウンするラブ日傘】の話は嘘でしたのね!」
「嘘じゃないのよ」
「騙してはいないよ」
「だって、アルフレッド様に「好き」と言われるどころか婚約破棄されましたのよ。
お母様も、お祖母様も、ひいひいお祖母様も【カウントダウンするラブ日傘】の予知通りに思いを寄せる殿方から告白されたと聞かされていたから、私もアルフレッド様から告白をされるものだと信じて疑いませんでしたのに……!」
あら? そういえばひいお祖母様が【カウントダウンするラブ日傘】のお陰で幸せになれたというお話は聞いたことがないですわ? なぜかしら?
「告白とは「好き」と告げられることだけじゃないってことよ」
「お母様それはどういう意味ですか?」
「「嫌い」「婚約を破棄する」と告げられるのも、恋愛関係の告白のくくりってことさね」
「お祖母様、そんな……!」
「私の母、お前のひいお祖母様も当時の婚約者から誕生パーティーで婚約破棄されたのさ、【カウントダウンするラブ日傘】はそのことをちゃんと予知していた」
「それではお母様もお祖母様も、私が卒業パーティーでアルフレッド様に婚約破棄される可能性を考えていたと……」
「お母様は婚約破棄される可能性の方が高いと思っていたわ、アルフレッドはレイチェルの誕生日にプレゼント一つよこしたことなかったでしょう? パーティーでもエスコートしたことなかったし、お茶会ではいつも仏頂面だったし」
「わたしも婚約破棄されると思っていたよ、我が家での晩餐を断って幼馴染といちゃついていたような男だからね」
「お母様もお祖母様も、ミラが犬ではなく人間だと知っていたのですね、知っていて黙っていたなんて酷いわ!」
「ごめんなさい、でもこういう事態にならないとレイチェルはアルフレッドのことを諦めきれなかったでしょう?」
「恋は盲目というからね、どんなクズでゲスで救いようのないカス男でも恋愛フィルターがかかると王子様に見えてしまうものだからね、初恋の呪いを断ち切るには荒療治が必要だったんだよ」
「そうでしたの……」
お母様とお祖母様は私のためにしてくれたのね、私が不誠実な相手と結婚しないために。
「お母様、お祖母様、酷いことを言ってごめんなさい、二人は私のためにだまっていて下さったのに」
「いいのよ、娘のことを思うのが母親ですもの」
「孫が可愛くてしたことさ、一生恨まれるのを覚悟の上でね」
「お母様! お祖母様!」
お母様とお祖母様の思いやりの心が伝わってきて、涙がとめどなく溢れてきた。
☆
1
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。


婚約解消と婚約破棄から始まって~義兄候補が婚約者に?!~
琴葉悠
恋愛
ディラック伯爵家の令嬢アイリーンは、ある日父から婚約が相手の不義理で解消になったと告げられる。
婚約者の行動からなんとなく理解していたアイリーンはそれに納得する。
アイリーンは、婚約解消を聞きつけた友人から夜会に誘われ参加すると、義兄となるはずだったウィルコックス侯爵家の嫡男レックスが、婚約者に対し不倫が原因の婚約破棄を言い渡している場面に出くわす。
そして夜会から数日後、アイリーンは父からレックスが新しい婚約者になったと告げられる──

顔も知らない旦那さま
ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。
しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない
私の結婚相手は一体どんな人?

婚約破棄された令嬢の父親は最強?
岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。


【完結】婚約破棄されるはずが、婚約破棄してしまいました
チンアナゴ🐬
恋愛
「お前みたいなビッチとは結婚できない!!お前とは婚約を破棄する!!」
私の婚約者であるマドラー・アドリード様は、両家の家族全員が集まった部屋でそう叫びました。自分の横に令嬢を従えて。

王子様からの溺愛プロポーズを今までさんざんバカにしてきたみんなに見せつけることにしました。
朱之ユク
恋愛
スカーレットは今までこの国の王子と付き合っていたが、まわりからの僻みや嫉妬で散々不釣り合いだの、女の方だけ地味とか言われてきた。
だけど、それでもいい。
今まで散々バカにしてきたクラスメイトに王子からの溺愛プロ―ポーズを見せつけることで、あわよくば王子の婚約者を狙っていた女どもを撃沈してやろうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる