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11話

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――カーリン・ブラーゼ王子視点――

皿とフォークだけ用意され肝心の料理が出てこなくてむしゃくしゃしていたので、その八つ当たりも兼ねて投げつけてやった。

衛兵は皿をヒョイと避けた。生意気な!

「カーリン、今の話は真実か?」

父上がじっと俺の顔を見た。

「いや……あの、どうだったかな?青いトカゲなんてどこにでもいますし……」

「どちらにしてもシュトローム公爵令嬢に詳しく話を聞かねばならん、大臣シュトローム公爵令嬢を城に呼べ」

「承知いたしました」

「アデリナを城に呼ぶんですか!」

婚約破棄したのは昨日だ、アデリナのやつ絶対に怒ってる。

もっと上手くお膳立てして父上と母上にイルゼを気に入って貰ってから、アデリナと婚約破棄した事を伝えるよていだったのに……。

「シュトローム公爵令嬢はそなたの婚約者だろう?なぜ城に呼ぶことを嫌がるの?王族のいやこの国の危機だ、シュトローム公爵令嬢も喜んで協力してくれるだろう」

「そうなのですが……」

「シュトローム公爵令嬢がカーリンの婚約者で良かったよ、竜の神に愛されている娘が第一王子の婚約者ならこの国も安泰だ」

僕の背中を滝のような汗が伝う。

やばい、アデリナとの婚約を破棄してしまった。

アデリナとの婚約を破棄した翌日に井戸と湖が枯れた、十中八九あのときのトカゲが竜の神だ。

「そういえば殿下はシュトローム公爵令嬢が連れていたトカゲを、故意に窓から落として殺したと得意げに話していましたよね」

衛兵がまた余計なことを言った!

「なんだと!それは真か!」

父上が額に青筋を立てて椅子から立ち上がった。

「落ち着いてください父上、血圧が上がりますよ」

俺は必死に父をなだめた。

「陛下、もしシュトローム公爵令嬢が連れていたトカゲが神の化身ならば、窓から落ちた程度では死なないはず」

大臣ナイスフォロー!

「大臣の言うとおりだな、3年前シュトローム公爵令嬢が連れていたトカゲが誠に竜の化身であるのなら、その程度のことでは死なんはずだ、まだシュトローム公爵令嬢の側にいるかもしれん」

まじか!あのトカゲはまだ生きてるのか!そういえば、アデリナはトカゲの死んだ日は泣いていたが、次の日からケロッとしてたな。

気が強いだけかと思っていたが、もしトカゲが死んだふりをしていただけだったら、次の日から元気にしていたのもうなずける。

そのとき食堂の外が騒がしくなった。
 
「困ります、中に入られては……!」

「離してよ!あたしはカーリン様の婚約者なのよ!」

「そのようなお話は伺っておりません。あっ、ちょっと……!」

バァァァァン!!と音を立て扉が開き、桃色の髪の少女が入ってきた。

「カーリン様ぁぁ、あなたの愛しのイルゼが尋ねてきましたよ~~!お食事中でしたか?そこにいる地味なおじさんとおばさんはどなた?」

最悪のタイミングでイルゼが入ってきた。

イルゼが指差した方向には父上と母上がいた、一国の国王と王妃をおじさん、おばさん呼ばわり……不敬罪では済まないかもしれない。

「そなたは何者だ?家名と名を名乗れ?」

「何よ偉そうなおじさんね、私の名はイルゼ・シャオム、シャオム男爵家の長女でカーリン様の新しい婚約者よ!」

イルゼは俺の側まで歩いてくると、俺の腕に自身の腕を絡めた。

豊満な胸が腕に当たるが今はにやにやしている場合ではない。

「カーリンの婚約者だと?カーリンの婚約者は、シュトローム公爵家のアデリナのはずだが」

「おじさんいつの話をしてるの?カーリン様の婚約者は私よ!アデリナ様は昨日の卒業パーティーでカーリン様に婚約破棄されて泣きながら無様にパーティー会場をあとにしたわ、本当惨めよね」

父上が鋭い目つきで俺とイルゼを睨み、母上が額を押さえて深いため息を吐いた。

「カーリン!貴様には部屋での謹慎を申しつける!シャオム男爵令嬢を拘束し直ちに牢屋に入れろ!罪名は王に対する不敬罪だ!貴族用の牢屋ではなく罪人を入れる一般牢で構わん!大臣は直ちにシュトローム公爵家に参りシュトローム公爵令嬢に謝罪せよ!」

俺とイルゼは衛兵に拘束された。

「ちょっと!どこ触ってるのよ!フケイザイって何よ?おじさんをおじさんって呼んだだけじゃない!離してよ!助けてカーリン様ぁぁぁぁ!!」

昨日まで愛らしく聞こえたイルゼの高い肥が今は耳障りで仕方ない。イルゼが不敬罪の意味も知らない馬鹿だとは思わなかった。

 



このときの俺はアデリナに土下座して謝罪すれば許されると思っていた。

アデリナはこのときにはすでに国内にはおらず、謝罪する機会すら与えてもらえないなど夢にも思わなかった。

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