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22話「一言話せれば!」ざまぁ・番外編8
しおりを挟む――カスパー・ラウ――
ぼくは侯爵家の嫡男に生まれた。
父は宰相。
十歳のとき、当時第一王子だったスタン殿下の側近に選ばれた。
ぼくの人生は順風満帆、将来安泰、輝かしい未来が約束されている……………はずだった。
頭の軽い王太子を陰で操り、
王太子の側近に選ばれたルーウィーやジェイを利用し、
王太子が一目惚れしたというゲレとこっそりいちゃいちゃし、
美味しいとこ取りで、
楽勝な人生を歩むはずだったんだ。
「世の中の人間はお前よりみんな愚かだ。利用しろ、盾にせよ、踏み台にするのだ」
それが宰相である父の教えだった。
卒業パーティの後、アリシア討伐に成功した祝杯をあげにレストランに行った。
気持ちよく飲んでいると、隣の席に座っていた男性客が喧嘩を始めた。
せっかくのお祝い気分が台無しだ。
隣の席から聞こえてきた話から推測すると、部下が上司の妻と寝たようだ。
上司にバレるなんて愚かな奴だ。
そういうのは、バレないように上手くやるんだよ。
店員が気を効かせてくれたようで、個室に案内された。
個室に案内してくれた店員はなかなかの美人だった。
スタン殿下が女性店員を抱いたらどうだと言って、ルーウィーをからかっていた。
ルーウィーはゲレに首ったけなので、相手が美人でも浮気はしないだろう。
ルーウィーは童貞だし、割と純粋だからな。
スタン殿下もルーウィーも、ゲレに騙されている。
ゲレは庶民出身の天真爛漫な性格で、庇護欲を誘う可愛らしい見た目だが、見た目ほどピュアな女じゃない。
ゲレは男を手玉に取って玩ぶタイプのしたたかな女だ。
スタン殿下もルーウィーも、ゲレがぼくの手付きだとも知らないで、のぼせ上がっているんだからお気楽なものだ。
それにしてもさっきの店員は、かなりの美形だったな。
スタイルも良かったし、ルーウィーがいらないと言うのならぼくが引き受けよう。
どうせ今日はこのままレストランに隣接しているホテルに泊まる。
スタン殿下とゲレは、朝までお楽しみだろう。
ジェイとルーウィーと同室なんてお断りだ。
ぼくも適当な女を抱きたい。
そういえば、アリシアもかなり美人だったな。
神秘的な紫の髪と瞳。
ボンキュッボンのナイスバディ。
豊富な知識に洗練された身のこなし、高嶺の花という言葉がピッタリだった。
卒業パーティで殺すのは惜しかったな。
あんな上玉めったにいない。
殺す前に一回くらい抱いておけばよかった。
死んだ人間のことを考えても仕方ないな。
今はどうやって美人店員をくどこうか考えよう。
その時、誰かがフォークを落とした。
誰だ、行儀が悪いな。
続けざまに、ガシャーン、パリーンという音がした。
気づけば全員がグラスやナイフやフォークを床に落としていた。
ぼくも手にしていたナイフを落としていた。
目が回る……体がしびれる……気持ち悪い……。
気がつけばぼくは床に倒れていた。
☆
敵の仕組んだ罠だと気づいたときには、手遅れだった。
敵はフォスター公爵。
ぼくたちをこの部屋に案内した美人店員も、フォスター公爵の仲間だった。
レストランで隣の席の客が喧嘩を始めたときから、敵の策略にハマっていたんだ。
全員が動けなくなったこの状況で、状況をひっくり返すのはかなり難しい。
初めはルーウィーがハサミで手や足を刺され、頭から硫酸をかけられた。
次はゲレが両手に杭を打ち込まれ、顔に硫酸がかけられた。
三人目はジェイが、ハンマーで指の骨を一本一本折られた。
可愛かったゲレの顔を焼きただれ、二目と見れない顔になった。
ゲレはもうだめだな。
体の相性は良かったが、あんな顔の女は抱けない、捨てどきだな。
オレはルーウィーやゲレやジェイとは違う。
公爵に無様にやられたりしない。
考えろ!
他の四人を犠牲にしても、自分だけが生き残る方法を!
ぼくの父は宰相だ。
フォスター公爵に「金、地位、名誉、なんでも与えるから見逃してくれ!」と懇願すれば、助けてもらえるかもしれない。
いやそれよりもフォスター公爵みたいなタイプには、情に訴えた方がいいかもな。
一言だ。
フォスター公爵がジェイへの裁きを終え、ぼくに意識が向いた瞬間に公爵の心を掴むんだ。
フォスター公爵は、ジェイの両方の指の骨を全て砕き、ジェイの足に硫酸をかけていた。
フォスター公爵が、ジェイへの仕置を終える。
フォスター公爵の意識がぼくに向いた瞬間を狙い、ぼくは声をあげ…………。
「カスパーの舌を切れ。奴は口から先に生まれてきたような男だからな」
「はい、閣下。
声帯はいかがいたしましょう?」
「潰せ」
「承知いたしました」
「えっ……?」
ぼくは声は発言する機会すら与えられず、美人店員だと思っていた公爵の手下に、口を強制的に開けられ、口の中にあるぼくの大事な大事な舌をちょん切られ、声帯を潰された。
「…………………っっっっ!!!!」
ぼくは悲鳴を上げることすら許されなかった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
※サイトの規約違反(R18表現)になると困るので本編には書いてませんが、カスパーは下半身の大事なものもちょん切られてます。
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