7 / 26
7話「ゼーマン帝国の第三皇子」
しおりを挟む第三皇子を接待するためにガゼボにお通しした。
ガゼボには色とりどりの花が飾られ、とても華やかだ。
「初めましてフォスター公爵令嬢。ゼーマン帝国の第三皇子エデル・ゼーマンです。以後お見知りおきを」
黒髪黒目の美少年が優雅に挨拶した。
スタン殿下も金髪碧眼の美少年でした。
エデル殿下はスタン殿下とは違うタイプの美形ですわ。
「フォスター公爵家の長女、アリシアです」
私は自己紹介をし、カーテシーをした。
エデル殿下は私より三歳年上の十三歳。
エデル殿下の兄二人は皇妃様の子で、エデル殿下は側室の子。
エデル殿下の母親の身分は低い。エデル殿下は第一皇子や第二皇子より優秀なため、祖国で命を狙われていたそうです。
皇帝はゲート国でも力のある公爵家に、第三皇子の保護を求めてきた。
第三皇子が、私の婚約者になりたいと言い出した理由が分かりました。
「エデル殿下、私はある理由からスタン殿下と婚約したくありませんの。そしてエデル殿下は祖国に帰りたくない。私たちの婚約は互いに利益があると思いません?」
「君は自国の王族と結婚したくない。僕は僕の身を保護してくれる力のある貴族と縁を結びたい。確かに互いの利害が一致しているね」
「私たち気が合いそうですわね」
「僕もそう思ったところだよ」
私が愛想笑いをすると、エデル殿下も作り笑いを浮かべた。
「婚約者が決まったのはよかったけど。くロマンチックなムードが一ミリもないね……」
父がため息をついた。
お父様は私に恋愛結婚してほしかったのかしら?
エデル殿下のことは嫌いではありませんが、一度お会いしただけで恋愛感情は抱けませんわ。
一目惚れは前回の人生で懲りましたわ。
ですが何年か一緒に過ごせば、情が移り、彼を好きになることもあるかもしれません。
「お父様、国王陛下に私とエデル殿下の婚約を認めさせることはできますか?」
この国の貴族の婚約には、国王の承認がいる。
国王が第一王子を公爵家に婿入りさせたい場合、私とエデル殿下の婚約を認めない可能性もある。
「もちろんだよアリシア。わしが第二王子の派閥に入り、中立派の貴族を説得して第二王子派閥に入れると言えば、陛下は二つ返事でうなずくよ。ちょうどよい機会だ、陛下に第一王子を捨てる覚悟をさせるよ」
これで第二王子のファルケ殿下が、王太子になることは確定ですね。
「さすがお父様ですわ。ですが私とエデル殿下の婚約は、時期が来るまで内密をにするように、陛下に約束させてください」
「第一王子のスタン殿下を油断させ孤立させるためだね」
「ええ、スタン殿下のことですから、ご自分の危うい立場をご理解していないことでしょう。ファルケ殿下が立太子するまで、自分が王太子になれると信じ疑わないでしょう」
「ファルケ殿下は優秀だがまだ幼い、ファルケ殿下が成長するまでの時間稼ぎもできるね」
「ええ、ファルケ殿下が立太子したときには、周りに誰もいなくなっていますわ。家族も、友人も、側近も、婚約者候補も、全て離れて行っているでしょう。その時になって慌てて婿入り先を探すスタン殿下を想像すると、思わず頬が緩みますわ」
「追い打ちをかけるように、アリシアとエデル殿下の婚約を発表する。確かに愉快だね」
「お父様は中立派の貴族を説得して第二王子派につけるんですもの。当然、私とエデル殿下の婚約を認めさせる以上のことを、してくるのでしょう?」
「もちろんだよアリシア。ファルケ殿下が立太子したら、スタン殿下の王位継承権を剥奪して、王族から除籍して、貴族に婿入りさせる確約も取り付けるよ」
「さすがお父様ですわ」
「君たちもしかして、かなり悪い話してる?」
「エデル殿下、この話を聞いてしまったからには、後戻りはできませんわよ。一蓮托生。私の夫になる方にも同じ罪を背負っていただきますわ」
「どこの家にも他家には言えないことがあるもんだよ。面白いから僕も話にのるよ」
エデル殿下が仲間に加わった。
58
お気に入りに追加
3,319
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?


英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる