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4話「一年」

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芽依さんが交通事故に遭った日から一年が過ぎた。

芽依さんは彼女が生前やり込んでいた乙女ゲーム「魔法学園の白薔薇」の世界に転移したことが判明した。

なぜ分かったのかというと、「女神の掲示板」に芽依さんが異世界に転移した後の物語が掲載されたからだ。

芽依さんは異世界からやってきた神子として、異世界人から崇められ大切にされているようだ。

芽依さんは異世界の文化や風習に慣れず苦しんだり、王太子の婚約者の嫌がらせを受けたり、国家転覆を企む枢機卿の陰謀に巻き込まれたり……色々と大変そうだが、攻略対象の美少年を仲間に引き込み楽しくやっているようだ。

目覚めたら異世界で蜘蛛やドラゴンなどのモンスターになっていた……ということもあるのでそれよりはずっといいだろう。

それから「女神の掲示板」に掲載されていた漫画に芽依さんの回想シーンがあったのだが、そこで芽依さんが両親からの虐待を受けていたことが分かった。

異世界に転移される人の多くはこちらの世界で不遇な人生を送っている。

親や兄妹から虐待を受けていたり、学校や会社でいじめにあっていたり、馬車馬のように働かされていたり。

芽依さんもそのパターンに当てはまったようだ。

吉川夫妻が、芽依さんの捜索を私に依頼してきたのか不思議だった。

自分で言うのもなんだが、私の経営する探偵事務所は儲かっていない。

私が複数のアルバイトを掛け持ちしているのを見れば分かるだろう。

それなのに吉川夫妻は私に娘の捜索を依頼してきたのだ。

おそらく吉川夫妻は同じマンションに住む私立探偵の私に娘の捜索を依頼することで、「いなくなった娘を必死に探す良い親」であることを近所の人間に印象づけようとしたのだろう。

なんとも浅ましいことだ。

その後吉川夫妻はマンションに居づらくなったのかどこかへ引っ越して行った。

吉川夫妻が住んでいた二〇一号室はしばらく空き部屋だったが、一年後一条夫妻という新婚の夫婦が引っ越してきた。




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