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2章 学園パートの始まり
第30話 イベント終了
しおりを挟むリアムが勇者の力を覚醒して以降、当然ながら課外授業は強制終了となった。
生き残っている傭兵と講師達が生徒達を王都へ避難させ、続けて王都騎士団への通報も行われる。
関係者が後処理を続けていく一方、リアムは気絶したまま王都へと運び込まれた。
王都までは俺達も一緒だったのだが、マリア嬢が気絶中のリアムをレイエス家の屋敷へ搬送すると言って別れることに。
「大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない?」
心配そうに見送るリリたんに、俺は楽観的な意見を返す。
本来なら見れないリアム視点を知っているからね。
――気絶したリアムはマリア嬢の実家に搬送されたあと、王都にいる最高位の医者から診察を受ける。
単なる魔力切れによる気絶と診断され、二日後には目を覚ますはずだ。
ただ、事態が動くはここから。
手の甲に浮かんだ『勇者の紋章』は当然ながら注目を惹く。同時にマリア嬢が語った現場の様子にも。
これらの事実がマリア嬢の父であるジョージ・レイエス侯爵の耳に入るのだ。
王国貴族の中でも重鎮である彼は娘から聞いた事実、リアムの手に浮かぶ紋章の情報を持って王の元へ。
それを聞いた王は勇者の伝説に詳しく、創造の女神リュケルを崇め奉る『リュケル教会』へ更なる助言を求める。
話を聞いたリュケル教会はリアムを『勇者』と断定し、同時に――
『勇者が誕生したという事実は、裏を返すと世界に危機が迫っている証拠とも言えます』
と、語るわけ。
それを聞いた王様はゴクリと唾の飲み込み、プレイヤーには「次の展開へ進むぜ!」と示すわけだ。
そして、学園パート中盤で勇者の剣を抜き、終盤で魔王の存在が明らかになる――という流れ。
今日で学園パートの序盤が終了したってことだな。
とにかく、戦乙女による『やり直し』のおかげもあって、ここまではシナリオ通りと言えよう。
女神様が決めた正史ルート通りに展開されている。
今後の人生と勇者イベントとの関わりについては、一度考えなければならないが……。
「ふわぁ~」
今は考えるよりも眠りたい。
明日の授業も中止になったし、ひと眠りして休日を堪能したいね。
「レオ君、明日ってお休みになったでしょ? 明日、一緒にお出かけしない?」
「うん、いいよ」
リリたんを女子寮まで送った別れ際、彼女とデートの約束をして。
俺はルンルン気分で寮へ戻ると、エントランスには一足早く戻っていたシャルの姿があった。
「レオン君、明日休みって聞いた?」
「ああ、聞いたよ」
「そっか。でも、早朝トレーニングはするよね?」
「もちろん」
そんな話をしながら部屋へ向かい、鍵を開けて――
「もう寝る?」
「ああ。さすがに眠い」
「だよね~」
服を脱いでパンツ一丁になると、何故かシャルの姿がパジャマ姿に早変わりしていた。
「明日のトレーニングも頑張ろうね?」
「あ? ああ」
そして、何故かシャルは一緒に俺のベッドに潜り込むのである。
「なんで?」
「ん?」
「なんで俺のベッドで寝てるの?」
当然の質問をぶつけると、シャルは若干ながら頬を赤らめて笑みを浮かべた。
「だって、課外授業で一緒に寝れなかったから」
「そう……」
頭の中では「なんでだよ」とツッコミを入れたが、眠気が限界だ。
シャルを追い出す気力すら湧かない。
とにかく眠って、起きたらリリたんとのデートを堪能して……。
それから色々考えよう。
今後、俺がハッピーエンドを迎えるための方法を。
リリたんと最高の人生を送るための方法を。
悪役転生した俺の青春学園ファンタジーはこれからも続くんだからね。
「スヤァ」
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