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一口目

〜18〜

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「本来の計画ならば、だ。君の手の甲に口付けして、夕寝するのに最適な場所までエスコートする。そうして歳桃王子様ドッキリが終わり次第、子守唄を歌って寝不足の君を寝かしつけるつもりだった。そして、君の無防備でお間抜けな寝顔を堂々と胸を張りつつ、スマホで撮影するのも忘れずに……。あれもこれもそれも不審者の邪魔が入ってできなかった。計画の半分が未達成」
 歳桃の野郎は頼んでもないのに白状した。こんな状況下に相応しくない呑気なことを。
 まだふざけるだけの余裕はあるとポジティブに捉えさせてもらう。
 さらっと言ったが口付けだと? いや冗談なのか本気なのか分からないから聞かなかったことにしよう。
 それから、ちゃんと寝かせてくれる予定ではあったことが判明した。
 歳桃相手となるとなかなか素直に感謝しづらいところではあるが、ここは素直に感謝すべきだろう。………………感謝する。
 だが、感謝以上に言いたい文句が山ほどある。
 とりあえず一言だけ。堂々と胸を張りつつ盗撮すんな。あと赤ん坊扱いすんな。あっ、二言になっちまった。
「で。僕は最初こそ、不審者が君を殺害する過程でその場に居合わせたというだけで巻き添え食うの嫌だし。僕の死因は他殺ではなく自殺であると100万年前から決まっているし。帰ろ帰ろって帰る気満々だったのだけど。
 今の僕は、自分の計画の残り半分を台無しにした不審者に対して復讐したくなっている。
 君は当然、不審者に殺されたくない。
 そこで提案なのだけど。僕たち、手を組まないかい? ……。よし、じゃあ決まり。今日ここであいぼう……、いや相棒と書いてバディと読む。相棒バディを結成する」
 私が返事できないことをいいことに何でもかんでも一人で決めやがって。
 まあ、バディっていう言葉の響きは悪くねえ。マジカッケー。
 私がどちらかと言うとカタカナ語を好んでいるのを知ってて、わざわざ読み方を変更しやがった。
 最初から一つしかない選択肢を選択するように誘導されてる気がしてならない。
 いや、間違いなく誘導されているが、こんな何もないところで仲良くおっ死ぬよりかは、協力する方が100万倍マシだ。
 それに、納得して自分の意思で選択したんなら、私はその選択をこの先何があっても絶対に後悔しないと決めている。
 いいぜ。テメェと相棒バディになるっていうその提案、ノッてやる。
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