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踏ん張らずに生きよう
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楓寧からいきなり罵倒されて風哉は驚きの声を上げた。
「ば、馬鹿!? 俺が!?」
ああと楓寧は肯定する。
「岩渕には絶対に言わない。約束する。……だけどお前は馬鹿だ。とっくに限界超えてんのに独りで踏ん張りすぎだ。もっと俺を頼れ。もっと踏ん張らずに生きろ」
「……踏ん張らずに?」
「ああ」
「それ、いいかもね!」
海結が明るい口調で言った。
「既に心も身体も傷だらけなのに気づかない振りをしてそのまま踏ん張り続けたら……いつか必ず壊れてしまう。それより、その傷を自分で癒したり誰かに癒してもらったりしながら気張らずに頑張る。これが踏ん張らずに生きるってことだと私は思う。……ねぇ踏ん張らずに生きよう?」
「俺が言いたかったことを浜崎が代わりに言ってくれて助かった……。俺は踏ん張らずに生きてる。お前がどう生きるかはお前が決めろ」
「風哉くんが踏ん張らなくても生きられるように友達……ううん恋人の私が支える」
「……二人とも本当にありがとう。俺、踏ん張らずに生きることにするよ。そりゃあ踏ん張らないといけない時はあると思うけど。基本的には」
風哉は泣くのを我慢しながら「もうすぐ秋だね」と言う。えっ。海結と楓寧は同時に困惑の声を上げた。
「秋になればこの雑木林は落ち葉が沢山積もって景色が変わる。その頃にはここをリラックスできる場所に変えたい。そうだな……。落ち葉の上でお昼寝できるようになれば達成かな。まず、お父さんとの大切な思い出があるこの場所を……虐められた恐い場所から安心できる居場所に変えること。これが海結と楓寧が教えてくれた、踏ん張らずに生きるの第一歩になるような気がしてさ」
なるほどな、と楓寧は納得したように相槌を打った。
「要は、俺たちがその雑木林ですげぇ楽しい思い出を沢山作ればいいんだろ?」
「じゃあ、残りのお盆休みにこの三人で虫捕りしたり秘密基地作ったりしない?」
海結が出した提案はとても楽しそうで風哉は想像しただけで胸が弾んだ。
「あ、あれ? 風哉くん? 大丈夫?」
海結の慌てふためく姿がぼやけて見える。大丈夫だよ。そう答えたが息が苦しくて途切れ途切れになってしまった。
「ほ、本当に大丈夫!?」
「おい、風哉に何かあったのか!?」
「……風哉くんが泣いてるの……どうしよう」
「泣いてる!?」
「二人とも落ち着いて。俺の大切な彼女と大切な親友は心配症だなぁ……。心配いらないよ。俺は嬉しくて泣いてるんだから」
「嬉しくて?」
風哉は海結を見詰めながら大きく頷いた。
「あんなに……辛くて死にたいと思ってたのに今は死にたくない。生きたいと思えること」
風哉は鼻を啜ってTシャツの袖で涙を拭ってからニッと笑った。作り笑顔ではなく嬉しくてたまらなくて笑った。
「未来を楽しみに思えていることが涙が出るほど嬉しいんだ」
「ば、馬鹿!? 俺が!?」
ああと楓寧は肯定する。
「岩渕には絶対に言わない。約束する。……だけどお前は馬鹿だ。とっくに限界超えてんのに独りで踏ん張りすぎだ。もっと俺を頼れ。もっと踏ん張らずに生きろ」
「……踏ん張らずに?」
「ああ」
「それ、いいかもね!」
海結が明るい口調で言った。
「既に心も身体も傷だらけなのに気づかない振りをしてそのまま踏ん張り続けたら……いつか必ず壊れてしまう。それより、その傷を自分で癒したり誰かに癒してもらったりしながら気張らずに頑張る。これが踏ん張らずに生きるってことだと私は思う。……ねぇ踏ん張らずに生きよう?」
「俺が言いたかったことを浜崎が代わりに言ってくれて助かった……。俺は踏ん張らずに生きてる。お前がどう生きるかはお前が決めろ」
「風哉くんが踏ん張らなくても生きられるように友達……ううん恋人の私が支える」
「……二人とも本当にありがとう。俺、踏ん張らずに生きることにするよ。そりゃあ踏ん張らないといけない時はあると思うけど。基本的には」
風哉は泣くのを我慢しながら「もうすぐ秋だね」と言う。えっ。海結と楓寧は同時に困惑の声を上げた。
「秋になればこの雑木林は落ち葉が沢山積もって景色が変わる。その頃にはここをリラックスできる場所に変えたい。そうだな……。落ち葉の上でお昼寝できるようになれば達成かな。まず、お父さんとの大切な思い出があるこの場所を……虐められた恐い場所から安心できる居場所に変えること。これが海結と楓寧が教えてくれた、踏ん張らずに生きるの第一歩になるような気がしてさ」
なるほどな、と楓寧は納得したように相槌を打った。
「要は、俺たちがその雑木林ですげぇ楽しい思い出を沢山作ればいいんだろ?」
「じゃあ、残りのお盆休みにこの三人で虫捕りしたり秘密基地作ったりしない?」
海結が出した提案はとても楽しそうで風哉は想像しただけで胸が弾んだ。
「あ、あれ? 風哉くん? 大丈夫?」
海結の慌てふためく姿がぼやけて見える。大丈夫だよ。そう答えたが息が苦しくて途切れ途切れになってしまった。
「ほ、本当に大丈夫!?」
「おい、風哉に何かあったのか!?」
「……風哉くんが泣いてるの……どうしよう」
「泣いてる!?」
「二人とも落ち着いて。俺の大切な彼女と大切な親友は心配症だなぁ……。心配いらないよ。俺は嬉しくて泣いてるんだから」
「嬉しくて?」
風哉は海結を見詰めながら大きく頷いた。
「あんなに……辛くて死にたいと思ってたのに今は死にたくない。生きたいと思えること」
風哉は鼻を啜ってTシャツの袖で涙を拭ってからニッと笑った。作り笑顔ではなく嬉しくてたまらなくて笑った。
「未来を楽しみに思えていることが涙が出るほど嬉しいんだ」
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