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❿
救ってくれてありがとう(㊁)
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「それにしても今日はかっこ悪いところをいっぱい晒しちゃったなぁ……。海結はいつも俺を『凄い!』って褒めてくれるけど本当は全然凄くないことが分かっちゃったでしょ。幻滅して嫌いになった?」
口元だけを見れば楽しそうな子犬で、目元だけを見れば怯えている子犬のようだ。海結は一刻も早く風哉を安心させたくて、
「嫌いになるわけないじゃん!」
はっきりと言い切った。怯えていた目が安堵したように笑う。
「私を必死に逃そうとしてくれたし『許さねぇ』と『触れるな』は風哉くんらしからぬ乱暴な言葉遣いでびっくりしたけどかっこよすぎてドキッとしちゃった」
「あ、あれはさすがに言葉遣いが悪かったや……。つい感情的になってしまって。今後は気をつけます。でも海結に褒められるとなんか照れるなぁ。けど、俺は海結の方が間違いなくかっこよかったと思うよ」
「えっ……私?」
「うん。今日一番かっこよかったのは海結だよ。……『耳糞溜まってんじゃないの』。裕平に向かって言った言葉。あれは最高だったなぁ」
「ちょっ、ちょっと!!」
意地悪、と海結がボソッと言うと風哉は「冗談だよ。ごめん!」と申し訳なさそうに詫びた。
「海結」
「ん?」
「俺を助けてくれて……いや。救ってくれてありがとう」
風哉から言われたその言葉に顔が強張るのを感じた。何と返事しよう迷った後に頑張って口を開く。
「私……救ってないよ。何にもできなかった。『救ける』って言っておきながら怖くて一歩も近づけなかった」
「後先考えずに速攻走って助けにくるなんて無茶なことしなくてよかったと思うしあいつらが怖くて近づけないのは当たり前だから気に病まなくていい。……救われたよ。俺は海結に。海結がここに来てくれなかったら俺は、いずれ人間じゃなくなってた。これは冗談じゃなくて本当。脅されてされるがままなんて、そんな状況がずっと続けば俺は壊れて人じゃなくなる」
「お……おどされてたの?」
「うん。今日も優護に脅された。優護が俺に耳打ちしてきたこと覚えてる?」
海結はこくりと頷いた。
「あの時、『お前が動いたら俺は真っ先に海結ちゃんを捕まえて傷つけるから』……。優護は俺にそう言ったんだ。もし俺が動いて、それに気づいた優護が海結に襲いかかって傷つけたら……。想像しただけでもう恐ろしくて動くに動けなかった。
元々二人で逃げ切れる自信なんてなかった。虐め初日に『逃げない』って約束させられたし俺が少しでも逃げる素振りを見せただけで罰として散々殴ってきたし。だから、俺は『逃げて』って必死に頼んだんだ。本当に今すぐ逃げて欲しかった。海結だけでも助かって欲しかった」
「ほっ、本当にごめん!! 全然言うこと聞かなくて」
「ううん。海結が無事で本当によかった……。でも今度からはちゃんと言うこと聞いて欲しい」
「わ、分かりましたっ!」
暗闇の中でも分かるほど真剣な表情の風哉に緊張して思わず敬語を使ってしまったら、「大丈夫怒ってないよ」という優しい声と共に頭を撫でられる感触がした。
「ハラハラさせられたけど、助けるまでは逃げないはマジで感動した。多分、裕平たちがいなかったらわんわん泣いてたよ。
で、話を元に戻すけど……。動いたらいけないって分かってたのに、裕平が海結に近づくのを見た時に考える間もなく立ち上がってしまった。それから裕平が海結の腕を掴んだのを見た瞬間はもう、海結に触れるなんて絶対許さないって腹が立った。ああ、これは友達だからじゃなくて好きだから誰かが海結に触れただけであんなに取り乱してしまうんだって気づいた。
ごめん。ロマンチックなことなんて言えないから俺の気持ちを率直に伝えさせてもらうね。前々から薄々勘づいてたけど今日やっと確信した。大好きだよ海結」
風哉から突然告白されて海結は自分の器官ではないような気持ち悪い感覚を抱きながら口をパクパクと動かす。
「い、ま、な、ん、て?」
ぎこちなく尋ねると風哉は唐突に腕を伸ばしてきてそのまま頬を両手で挟まれる。相変わらず風哉の手は熱を持っていたが温かい優しさを注入されているようで心地好く感じた。
「めちゃんこ可愛いっ」
口元だけを見れば楽しそうな子犬で、目元だけを見れば怯えている子犬のようだ。海結は一刻も早く風哉を安心させたくて、
「嫌いになるわけないじゃん!」
はっきりと言い切った。怯えていた目が安堵したように笑う。
「私を必死に逃そうとしてくれたし『許さねぇ』と『触れるな』は風哉くんらしからぬ乱暴な言葉遣いでびっくりしたけどかっこよすぎてドキッとしちゃった」
「あ、あれはさすがに言葉遣いが悪かったや……。つい感情的になってしまって。今後は気をつけます。でも海結に褒められるとなんか照れるなぁ。けど、俺は海結の方が間違いなくかっこよかったと思うよ」
「えっ……私?」
「うん。今日一番かっこよかったのは海結だよ。……『耳糞溜まってんじゃないの』。裕平に向かって言った言葉。あれは最高だったなぁ」
「ちょっ、ちょっと!!」
意地悪、と海結がボソッと言うと風哉は「冗談だよ。ごめん!」と申し訳なさそうに詫びた。
「海結」
「ん?」
「俺を助けてくれて……いや。救ってくれてありがとう」
風哉から言われたその言葉に顔が強張るのを感じた。何と返事しよう迷った後に頑張って口を開く。
「私……救ってないよ。何にもできなかった。『救ける』って言っておきながら怖くて一歩も近づけなかった」
「後先考えずに速攻走って助けにくるなんて無茶なことしなくてよかったと思うしあいつらが怖くて近づけないのは当たり前だから気に病まなくていい。……救われたよ。俺は海結に。海結がここに来てくれなかったら俺は、いずれ人間じゃなくなってた。これは冗談じゃなくて本当。脅されてされるがままなんて、そんな状況がずっと続けば俺は壊れて人じゃなくなる」
「お……おどされてたの?」
「うん。今日も優護に脅された。優護が俺に耳打ちしてきたこと覚えてる?」
海結はこくりと頷いた。
「あの時、『お前が動いたら俺は真っ先に海結ちゃんを捕まえて傷つけるから』……。優護は俺にそう言ったんだ。もし俺が動いて、それに気づいた優護が海結に襲いかかって傷つけたら……。想像しただけでもう恐ろしくて動くに動けなかった。
元々二人で逃げ切れる自信なんてなかった。虐め初日に『逃げない』って約束させられたし俺が少しでも逃げる素振りを見せただけで罰として散々殴ってきたし。だから、俺は『逃げて』って必死に頼んだんだ。本当に今すぐ逃げて欲しかった。海結だけでも助かって欲しかった」
「ほっ、本当にごめん!! 全然言うこと聞かなくて」
「ううん。海結が無事で本当によかった……。でも今度からはちゃんと言うこと聞いて欲しい」
「わ、分かりましたっ!」
暗闇の中でも分かるほど真剣な表情の風哉に緊張して思わず敬語を使ってしまったら、「大丈夫怒ってないよ」という優しい声と共に頭を撫でられる感触がした。
「ハラハラさせられたけど、助けるまでは逃げないはマジで感動した。多分、裕平たちがいなかったらわんわん泣いてたよ。
で、話を元に戻すけど……。動いたらいけないって分かってたのに、裕平が海結に近づくのを見た時に考える間もなく立ち上がってしまった。それから裕平が海結の腕を掴んだのを見た瞬間はもう、海結に触れるなんて絶対許さないって腹が立った。ああ、これは友達だからじゃなくて好きだから誰かが海結に触れただけであんなに取り乱してしまうんだって気づいた。
ごめん。ロマンチックなことなんて言えないから俺の気持ちを率直に伝えさせてもらうね。前々から薄々勘づいてたけど今日やっと確信した。大好きだよ海結」
風哉から突然告白されて海結は自分の器官ではないような気持ち悪い感覚を抱きながら口をパクパクと動かす。
「い、ま、な、ん、て?」
ぎこちなく尋ねると風哉は唐突に腕を伸ばしてきてそのまま頬を両手で挟まれる。相変わらず風哉の手は熱を持っていたが温かい優しさを注入されているようで心地好く感じた。
「めちゃんこ可愛いっ」
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