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❾
友達になりたい(㊂)
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問われた遥輝はくしゃっと顔を歪めて声を上げずに静かに涙を流した。
「ごっごめん!!」
風哉はひどく狼狽えた様子で謝罪する。
「本当にごめん。間違えた。今の質問はよくなかった。そうじゃなくて……もし。もし、裕平と優護に裏切られたら俺と友達になって欲しい」
「何でそんなこと言うの?」
尖った声が海結の口を衝いて出た。風哉は意に介した様子もなく穏やかに微笑んで、
「虐められる前から……虐められるようになってからも変わらず、俺は遥輝と友達になりたいって思ってるからだよ」
ゆっくりとした口調でそう答えた。だが海結から遥輝に向き直った途端に風哉の表情が一変した。笑みを消して、雷鳴に両耳を後ろに倒して怯えている犬のような表情で遥輝の顔を見詰めている。
「でも、これは俺のわがままだし、遥輝が嫌だったら断ってもらって全然構わないから」
じゃあ断る、と遥輝は風哉が言い終わった直後に即答した。風哉は目を丸くして遥輝を見た。
「俺とお前が友達になることなんてあり得ねぇよ」
「それは……、二人が裏切らないから?」
「ああ。あいつらは絶対裏切らないし、俺が嫌だから」
遥輝はそう言うと乱暴に頭を掻いた。
「嫌な理由が分からないならいい」
遥輝の口から出た一言に風哉は思案顔で腕を組む。
「あのさ……。もしかして、俺の顔を見ると遥輝が俺にやったことを鮮明に思い出してしまって辛いから?」
風哉が質問した瞬間、遥輝の肩がぴくりと動いた。しばらくするとくるりと背を向けて「ノーコメント」と答える。
風哉は目をしばたたいて、「ノーコメントかぁ……」と思いがけずプレゼントをもらって喜ぶ子供のように嬉しそうに笑った。海結には笑った理由が分からなかったが、風哉が正解を言い当てたことだけは何となく分かった。
「それで、訊きたいことは全部訊けたのか?」
遥輝が尋ねると風哉は「えっ?」ときょとんとした顔で首を傾げた。
「えっ、じゃないだろ……。俺に訊きたいことがあったから呼び止めたんだったよな? 質問し終わったんなら俺は帰るぞ」
「そっ、そういえばそうだったね! ごめんごめん。……うん! 多分全部訊けた。虐めをやめてくれるかどうか。遥輝が俺を虐める理由。それから……何で苦痛に感じてるのに虐めをやめずに続けているのか。ずっと気になってから訊けてよかったよ。遥輝にとって、裕平と優護の二人は本当に大切な友達なんだね……。色々教えてくれて本当にありがとう。俺、前々から遥輝とちゃんと話がしたいと思ってたから今日話せて凄く嬉しかった。また話せたら嬉しいな。……あれ? 『帰る』って言ったよね? 裕平たちを追いかけなくてもいいの?」
「ああ。今はもう家に帰り着いてる頃だと思うしな。それに……、この目で会えるかよ。絶対馬鹿にされる」
遥輝が泣いたことで充血してしまった瞳を指差すと風哉はふふっと笑った。
「確かに」
じゃあな、と遥輝はぶっきらぼうに言うなり歩き出した。今言った通り友人二人の後は追いかけずにそのまま家に帰るのだろう。
「ごっごめん!!」
風哉はひどく狼狽えた様子で謝罪する。
「本当にごめん。間違えた。今の質問はよくなかった。そうじゃなくて……もし。もし、裕平と優護に裏切られたら俺と友達になって欲しい」
「何でそんなこと言うの?」
尖った声が海結の口を衝いて出た。風哉は意に介した様子もなく穏やかに微笑んで、
「虐められる前から……虐められるようになってからも変わらず、俺は遥輝と友達になりたいって思ってるからだよ」
ゆっくりとした口調でそう答えた。だが海結から遥輝に向き直った途端に風哉の表情が一変した。笑みを消して、雷鳴に両耳を後ろに倒して怯えている犬のような表情で遥輝の顔を見詰めている。
「でも、これは俺のわがままだし、遥輝が嫌だったら断ってもらって全然構わないから」
じゃあ断る、と遥輝は風哉が言い終わった直後に即答した。風哉は目を丸くして遥輝を見た。
「俺とお前が友達になることなんてあり得ねぇよ」
「それは……、二人が裏切らないから?」
「ああ。あいつらは絶対裏切らないし、俺が嫌だから」
遥輝はそう言うと乱暴に頭を掻いた。
「嫌な理由が分からないならいい」
遥輝の口から出た一言に風哉は思案顔で腕を組む。
「あのさ……。もしかして、俺の顔を見ると遥輝が俺にやったことを鮮明に思い出してしまって辛いから?」
風哉が質問した瞬間、遥輝の肩がぴくりと動いた。しばらくするとくるりと背を向けて「ノーコメント」と答える。
風哉は目をしばたたいて、「ノーコメントかぁ……」と思いがけずプレゼントをもらって喜ぶ子供のように嬉しそうに笑った。海結には笑った理由が分からなかったが、風哉が正解を言い当てたことだけは何となく分かった。
「それで、訊きたいことは全部訊けたのか?」
遥輝が尋ねると風哉は「えっ?」ときょとんとした顔で首を傾げた。
「えっ、じゃないだろ……。俺に訊きたいことがあったから呼び止めたんだったよな? 質問し終わったんなら俺は帰るぞ」
「そっ、そういえばそうだったね! ごめんごめん。……うん! 多分全部訊けた。虐めをやめてくれるかどうか。遥輝が俺を虐める理由。それから……何で苦痛に感じてるのに虐めをやめずに続けているのか。ずっと気になってから訊けてよかったよ。遥輝にとって、裕平と優護の二人は本当に大切な友達なんだね……。色々教えてくれて本当にありがとう。俺、前々から遥輝とちゃんと話がしたいと思ってたから今日話せて凄く嬉しかった。また話せたら嬉しいな。……あれ? 『帰る』って言ったよね? 裕平たちを追いかけなくてもいいの?」
「ああ。今はもう家に帰り着いてる頃だと思うしな。それに……、この目で会えるかよ。絶対馬鹿にされる」
遥輝が泣いたことで充血してしまった瞳を指差すと風哉はふふっと笑った。
「確かに」
じゃあな、と遥輝はぶっきらぼうに言うなり歩き出した。今言った通り友人二人の後は追いかけずにそのまま家に帰るのだろう。
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