踏ん張らずに生きよう

虎島沙風

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心に冬がやってきた(㊀)

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風哉ふうやくんッ!?」
 浜崎はまざき海結みゆは思わず甲高い叫び声を上げた。友人の長間ちょうま風哉が虐められている。何かの間違いだ──。どうしても信じられずに瞬きをするのも忘れてただただ見詰めた。
 心に冬がやってきた。こちらの準備を待たずに勝手にずかずかと入り込んで、もちろん荒らすだけ荒らして、やがて凍えるような寒さを残して去っていくのだと思う。寒くて怖くて堪らないから正直今すぐここから逃げ出したい。
「風哉くん!!」
 海結は力の限り叫んだ。だが逃げ出さずに行動しなければいけない。大好きな人を救けるために。

 お盆休み二日目の今日、海結は風哉とショッピングモールでデートをした。『デートだ❤︎』と浮かれていたのは海結だけで、風哉は友人とのお出かけというあっさり塩味認識かもしれない。
 海結は去年の五月二十六日から同級生の風哉に片想いしている。もし告白したら、風哉は”友達として好きなんだ。だから海結の気持ちには答えられない。ごめんね”と申し訳なさそうな顔で深々と頭を下げてきそうだ。
 振られて傷つきたくないし大好きな風哉を困らせたくない。また友人として風哉の傍に居られるだけで充分すぎるくらい幸せだから告白するつもりはない。
 風哉が家まで送ると申し出たので、海結と風哉は仲良くお喋りしながら帰った。途中で電話がかかってきて風哉が話し始めたので、海結は邪魔にならないように大人しくしていた。だが、風哉が『えっ』と声を上げて海結の顔をちらりと見た後に『一人だよ』と答えたので、『一人じゃないじゃん! 何で嘘吐くの!?』と思わず大声を発してしまう。
 すると風哉は珍しくうろたえた様子で、『しーっ』と口の前で人差し指を立てた。風哉にだけは嫌われたくないから通話中は仕方なく黙っていたが、終わると速攻訊いた。
『ねぇ、どうして私と一緒にいるのに一人だって嘘吐いたの?』
 実はね、と風哉は困ったような顔でこう答えた。
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