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118 盗賊さん、新たな居住地を創り上げる。
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夜が深まり、街の人々が寝静まる頃合いまで待ってからボクは錬金術ギルドを出た。【隠密】と【潜伏】を駆使して、ボクは冒険者ギルドの職員と衛兵隊の目を掻い潜って目的のダンジョン跡地付近にまで至った。
バーガンディで最も深い階層を誇っていたダンジョン跡地は、煌々としたまばゆい光で照らし出されており、【隠密】を使って接近したとしても即座に見咎められそうな状況だった。
ボクは地面に手を付き魔力を流し込み、周辺の地面の液状化具合を確かめた。それによって得た情報を基に、ボクは比較的地盤のしっかりした場所に足を運んだ。そこには倒壊した住宅の瓦礫が積み上がっており、ひとの目を避けるには都合の良い環境だった。
早速、ボクは【奪取】で地面に穴を開け、ダンジョン跡地へと続く地下通路を掘り進めていくことにした。ただ入口をそのままにして発見されるわけにもいかなかったので、救助活動の際に[アイテムキューブ]化した瓦礫を使って入口を覆い隠した。
それからは時間を無駄にしないよう、ダンジョン跡地に向けて一直線に地下通路を掘り進めて行った。やがて魔力浸透が鈍い地盤に行き当たったことで、ダンジョン跡地にまで至ったことを察した。そこからは慎重に掘り進めて、例の魔物が空けた大穴にまで到達した。
暗視魔術を常時発動していることもあり、ボクの方では明かりを灯していなかったので、辺りは完全に暗闇に覆われている。そんな具合だったので、やたらと明るくしている照らし出している地上からボクの空けた穴を窺うことは難しそうだった。
大穴に通じる横穴を空けたところで、大体の位置を把握したボクは、予定していた部屋の配置を進めていくことにした。
ふたりが集めて来てくれた情報とカネナリ・トキハ氏の冊子を基に練り直した居住空間を創り上げていく。スライムダンジョンに創り上げた部屋には、採光部を設けられていなかったこともあり、牢獄のような印象が強かったとの意見が出ていたので、階層を上下する階段は部屋を挟んで大穴とは逆側に設けて、大穴側に採光部として大きな窓を創ることにした。その採光部の窓にはガラスや木窓ではなく、手早く用意出来る空気を【施錠】することで代用した。また落下防止も兼ねて、窓は開閉の出来ないはめ殺しと呼ばれる形式にした。
手始めに創り上げた広めの居住空間をリビングとして、そこを起点にダイニングやキッチンスペースとベッドルームを継ぎ足していく。それは冊子を参考に創り上げた『1LDK』と呼ばれる形式の間取りを採用したものだった。ただ本来ならバスルームやトイレもひとつの枠組みの中に組み込みたいところだったけれど、排水関係の処理が難しいと判断したボクは、それらだけは公衆浴場や公衆トイレとして階層ごとに別途用意することにして切り離すことにした。
とりあえず基本となる枠組みのひとつを完成させたボクは、それに魔力を流し込んで形状を記憶した。そこからの作業は早かった。次々と同一規格の間取りを創り上げて行った。大穴の外周をぐるっと一周したボクは、次に公衆トイレと公衆浴場、それと公共洗濯場などの水回り関係の設備を廊下を挟んで部屋とは反対側に用意した。排水処理は、事前に考案しておいたスライムを用いたモノで構築して問題なく機能することを確かめた。
スライムが吸収分解しきれない処理水に関しては、例の魔物が液状化して創り出した地下深くに空けられた横穴に流し込むことにした。ダンジョン間を移動するのに使われていたし、例の魔物の大きさから横穴の直径は20m以上あるのは確実だった。しかも、その横穴は未開拓ダンジョンにまで続いていて、最終的にはダンジョンの一部として取り込まれる可能性があった。それは危険も孕んではいたが、さすがにダンジョンのそのものとして、ここのダンジョン跡地が即座に取り込まれることはないだろうし、取り込まれるとしても数百年単位の時間が必要なのは間違いなかった。
それにここに多くのひとが住めば、蓄積される魔素は限りなく薄くなり、ダンジョン化することもまずなくなるはず。
どうにかこうにか水回りの処理を片付けたボクは、次の階層の構築を急ぐべく階段を創り上げる。その際に階段の中間点となる位置には、踏み幅1.2mを越える踊り場を設けた。これは冊子を参考にした処置で、これに関しては理由はわからなかいが、おそらく階段で足を踏み外して滑落した場合に備えてのことだろうと勝手に納得した。
そこからは階層ごとに繰り返し繰り返し同じような手順で作業を進めていき、その中で階層を下がるごとに間取りに変化を持たせるように『2LDK』『3LDK』と広くしていった。
階層が深くなれば深くなるほど、地上に上がるのが厳しいものになるので、間取りの拡張はそれを考慮してのことだった。
最終的な階層は20階層で、創り上げた居住空間は全部で1300室前後になっていた。暗がりの中で集中していたこともあってか、そこまでの作業を終えた時には、すっかり日が昇ってしまっていた。
バーガンディで最も深い階層を誇っていたダンジョン跡地は、煌々としたまばゆい光で照らし出されており、【隠密】を使って接近したとしても即座に見咎められそうな状況だった。
ボクは地面に手を付き魔力を流し込み、周辺の地面の液状化具合を確かめた。それによって得た情報を基に、ボクは比較的地盤のしっかりした場所に足を運んだ。そこには倒壊した住宅の瓦礫が積み上がっており、ひとの目を避けるには都合の良い環境だった。
早速、ボクは【奪取】で地面に穴を開け、ダンジョン跡地へと続く地下通路を掘り進めていくことにした。ただ入口をそのままにして発見されるわけにもいかなかったので、救助活動の際に[アイテムキューブ]化した瓦礫を使って入口を覆い隠した。
それからは時間を無駄にしないよう、ダンジョン跡地に向けて一直線に地下通路を掘り進めて行った。やがて魔力浸透が鈍い地盤に行き当たったことで、ダンジョン跡地にまで至ったことを察した。そこからは慎重に掘り進めて、例の魔物が空けた大穴にまで到達した。
暗視魔術を常時発動していることもあり、ボクの方では明かりを灯していなかったので、辺りは完全に暗闇に覆われている。そんな具合だったので、やたらと明るくしている照らし出している地上からボクの空けた穴を窺うことは難しそうだった。
大穴に通じる横穴を空けたところで、大体の位置を把握したボクは、予定していた部屋の配置を進めていくことにした。
ふたりが集めて来てくれた情報とカネナリ・トキハ氏の冊子を基に練り直した居住空間を創り上げていく。スライムダンジョンに創り上げた部屋には、採光部を設けられていなかったこともあり、牢獄のような印象が強かったとの意見が出ていたので、階層を上下する階段は部屋を挟んで大穴とは逆側に設けて、大穴側に採光部として大きな窓を創ることにした。その採光部の窓にはガラスや木窓ではなく、手早く用意出来る空気を【施錠】することで代用した。また落下防止も兼ねて、窓は開閉の出来ないはめ殺しと呼ばれる形式にした。
手始めに創り上げた広めの居住空間をリビングとして、そこを起点にダイニングやキッチンスペースとベッドルームを継ぎ足していく。それは冊子を参考に創り上げた『1LDK』と呼ばれる形式の間取りを採用したものだった。ただ本来ならバスルームやトイレもひとつの枠組みの中に組み込みたいところだったけれど、排水関係の処理が難しいと判断したボクは、それらだけは公衆浴場や公衆トイレとして階層ごとに別途用意することにして切り離すことにした。
とりあえず基本となる枠組みのひとつを完成させたボクは、それに魔力を流し込んで形状を記憶した。そこからの作業は早かった。次々と同一規格の間取りを創り上げて行った。大穴の外周をぐるっと一周したボクは、次に公衆トイレと公衆浴場、それと公共洗濯場などの水回り関係の設備を廊下を挟んで部屋とは反対側に用意した。排水処理は、事前に考案しておいたスライムを用いたモノで構築して問題なく機能することを確かめた。
スライムが吸収分解しきれない処理水に関しては、例の魔物が液状化して創り出した地下深くに空けられた横穴に流し込むことにした。ダンジョン間を移動するのに使われていたし、例の魔物の大きさから横穴の直径は20m以上あるのは確実だった。しかも、その横穴は未開拓ダンジョンにまで続いていて、最終的にはダンジョンの一部として取り込まれる可能性があった。それは危険も孕んではいたが、さすがにダンジョンのそのものとして、ここのダンジョン跡地が即座に取り込まれることはないだろうし、取り込まれるとしても数百年単位の時間が必要なのは間違いなかった。
それにここに多くのひとが住めば、蓄積される魔素は限りなく薄くなり、ダンジョン化することもまずなくなるはず。
どうにかこうにか水回りの処理を片付けたボクは、次の階層の構築を急ぐべく階段を創り上げる。その際に階段の中間点となる位置には、踏み幅1.2mを越える踊り場を設けた。これは冊子を参考にした処置で、これに関しては理由はわからなかいが、おそらく階段で足を踏み外して滑落した場合に備えてのことだろうと勝手に納得した。
そこからは階層ごとに繰り返し繰り返し同じような手順で作業を進めていき、その中で階層を下がるごとに間取りに変化を持たせるように『2LDK』『3LDK』と広くしていった。
階層が深くなれば深くなるほど、地上に上がるのが厳しいものになるので、間取りの拡張はそれを考慮してのことだった。
最終的な階層は20階層で、創り上げた居住空間は全部で1300室前後になっていた。暗がりの中で集中していたこともあってか、そこまでの作業を終えた時には、すっかり日が昇ってしまっていた。
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