天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。

朱本来未

文字の大きさ
上 下
103 / 118

103 盗賊さん、調査する。

しおりを挟む
 超大型魔物は、ボクがプルにアイテムを取り込ませることでダンジョン外で活動可能になったのと同様に、共同墓地にあったものを摂取するとこで、ダンジョン外に実体を伴って顕現したのは間違いないようだった。おそらくそれは、地下に保管された大量の遺砂なのではないかと思えて仕方がなかった。
 魔物は魔力を持つものを襲う習性を持っている。その魔物が、多くの人々が生活している街を襲うでもなく、真っ直ぐに共同墓地に向かったことからして、地下に保管された遺砂に宿った魔力に惹きつけられたのは、想像に難くなかった。
 遺砂を取り込み、ダンジョン外でも活動可能な肉体を得た超大型魔物は、共同墓地跡にしばしなにもすることなく滞在していたが、なんの前触れもなく、再び活動を再開した。
 液状化した大地に潜り込んだ超大型魔物は、完全に巨体を泥の中に没した。かと思うと、市街地に向けて大地が一直線に陥没し始めた。
 推測でしかないが、超大型魔物は地中を液状化しながら突き進んでいるらしい。地下の地盤が液状化によって緩くなったことで、支えを失った土砂が崩れて液状化した超大型魔物の通過跡に流れ込んでいるようだった。その軌跡が一筋の大地の陥没として現れていた。
 やがてそれはスライムダンジョンがある場所に到達すると、ぴたりと進行が止まった。しかしそれは束の間のことで、再び大地が鳴動するような地響きが辺りに響き渡り、半壊で踏み止まっていた建物群が、とどめを刺されたように次々と倒壊していっていた。
 瓦礫の山が量産される中で、一際大きな地響きとともにスライムダンジョンが存在していた場所に、土砂が柱のように噴き上がった。そこにはもうダンジョンは存在していなかった。
「まさかとは思うけど。あの魔物、ダンジョンを食べてる?」
 そんなボクの疑問に対して、サク姉も同様の見解を抱いているようだった。
「でしょうね。体外に流れ出した魔素を取り込むのが目的じゃないかしら。だとしたら、この付近のダンジョン全て潰されてしまうんじゃないかしら。既にふたつのダンジョンを破壊しているわけだしね」
 そんなボクらの予想は的外れではなかったらしく、眼下では超大型魔物が次の獲物を求めて再度地中に潜り込んでしまった。
 大地を陥没させながら進む超大型魔物は、南地区にあったらしいダンジョンも、これまでと同様に乱暴な食事の糧として喰らい尽くしてしまった。
 最早、バーガンディには領都の経済を維持していたダンジョン資源が、完全に失われてしまっていた。
 領都の城壁内部に存在していたダンジョンのことごとくを食い散らしたことで、それなりに満足感を得たのか。超大型魔物は身体を丸めるようにして、ダンジョン最下層と思われる石質の床で眠りについていた。
 眠ったことで攻撃的な行動を取らなくなった超大型魔物を探るべく、ボクはサク姉に頼み込んで高度を落としてもらった。アンズーを降り、単なる大穴に成り下がったダンジョン跡を覗き込み、超大型魔物の様子を窺う。
 喰い破ったダンジョン跡を寝床にした超大型魔物は、生物としての頂点に近い位置に存在しているからか、天敵など存在しないとばかりに、警戒心などまるで抱いていないようだった。
 この様子なら近付いて超大型魔物を間近で観察することも無理ではない気がした。
 ボクは【隠密】で気配を消し、音を立てないように慎重に歩みを進めて大穴を降り、超大型魔物の皮膚に手が届く位置にまで接近していた。
 さすがに直接手を触れてしまうのは躊躇われたが、間近で超大型魔物の体表面を観察することが出来た。
 その体表面には、上空からでは確認することが難しかった無数のひび割れのようなものが生じていた。
 遺砂を取り込んで受肉するまでに、大量の魔素が垂れ流されたことで、少なからず影響を受けていたらしい。
 そこでやめておけばよかったのにボクは欲を出した。【奪取】で超大型魔物のひび割れて剥がれかけた身体の一部を、採取しようとしたのである。
 それがよくなかった。超大型魔物にとってちっぽけで些細な魔力の変化であったにも関わらず、あからさまな反応をされた。
 超大型魔物の体表全体が高速で微振動し、嫌な音を立て始めた。それが契機となったのだろう。まだ液状化していなかった石質の地面がどろりと溶けた。
 ボクは咄嗟に大穴を脱出すべく、魔力循環による身体能力の強化と合わせて『フィジカルブースト』で能力を強引に底上げした。
 軽い身のこなしで絶壁ような大穴を昇り切り、付近を旋回していたサク姉に向けて腕を伸ばす。その意図を察してくれたサク姉は、ボクの腕を掴み、アンズーの背に乗れるようにと引っ張り上げてくれた。
 すると足元では超大型魔物が気力を取り戻したのか、再び周辺を液状化して、横穴を開けて新たな目的地に向けて進み始めていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...