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100 盗賊さん、異常の原因を探る。
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孤児院の所有する田畑へと近付くにつれて、違和感を覚えた。それを確かめるようにサク姉に声をかける。
「サク姉、昨日からこうだったの?」
ボクの曖昧な質問に対して、サク姉は首を横に振った。
「昨日はここまで魔素が濃いなんてことはなかったわ。でも、原因となるものがこの付近にあるのは間違いないはず」
グレンが懸命に耕している場所までたどり着いたボクらは、彼への挨拶もそこそこに魔素の発生源を特定すべく付近の調査を開始した。
「これだけ魔素の濃い土地で、魔力循環を維持したまま1日中働いていたから基礎能力が想定以上の成長速度を出してたのかな」
「ありそうな話だけど、昨晩はそうでもなかったはずなんだよね」
「日中だけ魔素濃度が高くなってるのかな」
「だとしたら日中にだけ、この付近で起こる変化があるはず」
魔素濃度を探りながら歩き回っていると、ほどなく原因と思われるものに行きあたった。ボクは耕作地の間を流れる水路へと降り、魔力を流し込むことで水に含まれる魔素の量を探った。すると水路の水は魔力に反応して淡く発光する粒が多数観測出来た。その光は晴天の日中だと言うのにはっきりと視認出来るほどの明るさを誇っていた。
「サク姉、この水が原因で間違いなさそう」
「じゃあ、この上流に遡っていけば」
「行き着く先は、今日ボクらが行く予定だったダンジョンだよ。この水路はそこから引いてるって話だったからね」
「ダンジョン外に出ても、その濃度ってのは変ね。ダンジョンから湧き出した水だとしても、ここまで魔素濃度が高いまま外に流れ出すことはないと思うんだけど」
「無駄に魔素をダンジョン外に流出させたら、ダンジョンの資源そのものが枯れちゃうしね」
「そうね。だとしたらなにか人為的なものが絡んでいるとしか思えないわ」
「だとしたら早急にダンジョンを探った方がよさそうですね」
次の方針を話し合っていると、さすがにボクらの様子が気になったらしいグレンが、手拭いで汗を拭きながら畑仕事をひと休みして歩み寄って来た。
「どうしたんだ。さっきから深刻そうな様子だが」
「ここの水源になってるダンジョンになにか問題があるようでね。これから調査に行こうかと話し合ってたところなんだよ」
「この水は大丈夫なのか。ここの農作には、この水を使っちまってるが」
「それなら問題ないよ。人体に悪影響はないからね。ただこの時間帯の水を多用すると作物の育ちが悪くなる可能性がなくはないって程度かな」
そこまで言って、ひとつ気になることが脳裏に浮かび、グレンに質問した。
「グレン、ここでの収穫が年々減ってるみたいな話を聞いてたりしないかな」
グレンは腕を組み、しばし考え込んでからおもむろに口を開いた。
「そういや、ここのガキんちょどもが去年より作物の実り具合が悪くて、採れる量が少なくなったみたいなこと言ってたな」
「そう。そういうことなら空き時間に、この付近に薬草が自生してないか調べておいてくれるかな。草があまり生えてない場所を探すだけでもいいからさ」
「別にかまわねぇが」
「あぁ、それと子供達には水路の水を使うのなら、水瓶に汲み上げて数日置いてから使った方がいいって伝えておいてくれるかな」
万全を望むなら夜に水を汲み上げた方がいいんだけど、子供達にそんな危険なことさせられないしね。夜中に水路に落ちて溺れたり、なんてこともないとは言い切れないしね。
「わかったよ。時間がねぇみたいだから今は聞かねぇが、後で説明してくれよ」
「夕食のときにでも話すよ」
そこで話を切り上げたボクは、ダンジョン探索の申請を得るためにサク姉と一緒に冒険者ギルドを目指した。
時間がかかってしまうのは仕方ないので諦めるとして、手続きで往復する間の時間を無駄にしたくなかったボクは、駆けながらサク姉にひとつ頼みごとをした。
「サク姉、怪しまれない小動物型の召喚獣をダンジョンに先行させられないかな」
「そうね。それなら──」
サク姉は水路に向けて【召喚】を行使する。
「【召喚】『ケイヴトラウト』」
その詠唱に応じて出現したのは、伸ばした片腕と同じくらいの体長をした白黄色の魚だった。水路直上に【召喚】された魚は、そのままとぷんっと水路に飛び込むと凄い勢いで遡上して行った。
「サク姉、昨日からこうだったの?」
ボクの曖昧な質問に対して、サク姉は首を横に振った。
「昨日はここまで魔素が濃いなんてことはなかったわ。でも、原因となるものがこの付近にあるのは間違いないはず」
グレンが懸命に耕している場所までたどり着いたボクらは、彼への挨拶もそこそこに魔素の発生源を特定すべく付近の調査を開始した。
「これだけ魔素の濃い土地で、魔力循環を維持したまま1日中働いていたから基礎能力が想定以上の成長速度を出してたのかな」
「ありそうな話だけど、昨晩はそうでもなかったはずなんだよね」
「日中だけ魔素濃度が高くなってるのかな」
「だとしたら日中にだけ、この付近で起こる変化があるはず」
魔素濃度を探りながら歩き回っていると、ほどなく原因と思われるものに行きあたった。ボクは耕作地の間を流れる水路へと降り、魔力を流し込むことで水に含まれる魔素の量を探った。すると水路の水は魔力に反応して淡く発光する粒が多数観測出来た。その光は晴天の日中だと言うのにはっきりと視認出来るほどの明るさを誇っていた。
「サク姉、この水が原因で間違いなさそう」
「じゃあ、この上流に遡っていけば」
「行き着く先は、今日ボクらが行く予定だったダンジョンだよ。この水路はそこから引いてるって話だったからね」
「ダンジョン外に出ても、その濃度ってのは変ね。ダンジョンから湧き出した水だとしても、ここまで魔素濃度が高いまま外に流れ出すことはないと思うんだけど」
「無駄に魔素をダンジョン外に流出させたら、ダンジョンの資源そのものが枯れちゃうしね」
「そうね。だとしたらなにか人為的なものが絡んでいるとしか思えないわ」
「だとしたら早急にダンジョンを探った方がよさそうですね」
次の方針を話し合っていると、さすがにボクらの様子が気になったらしいグレンが、手拭いで汗を拭きながら畑仕事をひと休みして歩み寄って来た。
「どうしたんだ。さっきから深刻そうな様子だが」
「ここの水源になってるダンジョンになにか問題があるようでね。これから調査に行こうかと話し合ってたところなんだよ」
「この水は大丈夫なのか。ここの農作には、この水を使っちまってるが」
「それなら問題ないよ。人体に悪影響はないからね。ただこの時間帯の水を多用すると作物の育ちが悪くなる可能性がなくはないって程度かな」
そこまで言って、ひとつ気になることが脳裏に浮かび、グレンに質問した。
「グレン、ここでの収穫が年々減ってるみたいな話を聞いてたりしないかな」
グレンは腕を組み、しばし考え込んでからおもむろに口を開いた。
「そういや、ここのガキんちょどもが去年より作物の実り具合が悪くて、採れる量が少なくなったみたいなこと言ってたな」
「そう。そういうことなら空き時間に、この付近に薬草が自生してないか調べておいてくれるかな。草があまり生えてない場所を探すだけでもいいからさ」
「別にかまわねぇが」
「あぁ、それと子供達には水路の水を使うのなら、水瓶に汲み上げて数日置いてから使った方がいいって伝えておいてくれるかな」
万全を望むなら夜に水を汲み上げた方がいいんだけど、子供達にそんな危険なことさせられないしね。夜中に水路に落ちて溺れたり、なんてこともないとは言い切れないしね。
「わかったよ。時間がねぇみたいだから今は聞かねぇが、後で説明してくれよ」
「夕食のときにでも話すよ」
そこで話を切り上げたボクは、ダンジョン探索の申請を得るためにサク姉と一緒に冒険者ギルドを目指した。
時間がかかってしまうのは仕方ないので諦めるとして、手続きで往復する間の時間を無駄にしたくなかったボクは、駆けながらサク姉にひとつ頼みごとをした。
「サク姉、怪しまれない小動物型の召喚獣をダンジョンに先行させられないかな」
「そうね。それなら──」
サク姉は水路に向けて【召喚】を行使する。
「【召喚】『ケイヴトラウト』」
その詠唱に応じて出現したのは、伸ばした片腕と同じくらいの体長をした白黄色の魚だった。水路直上に【召喚】された魚は、そのままとぷんっと水路に飛び込むと凄い勢いで遡上して行った。
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