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060 盗賊さん、解体する。
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プルが狩ったグラスボアの鮮度が落ちないうちに、ボクは【奪取】で血液だけを分離して手早く[アイテムキューブ]に格納してから、他の部位を別途まとめて別の[アイテムキューブ]に格納した。
さっきのグラスボアの大きさなら体重は余裕で6tくらいはあるだろうし、あの手の大型魔獣なら体重の10%くらいが血液だとレッドグレイヴの魔獣解体担当者に聞いたから、採取出来た血液量は大体600kgくらいかな。
薬草の栽培実験に使用するなら、充分な量を確保出来た。それに「アイテムキューブ]に格納したから複製も可能なはず。それを確かめるように[アイテムキューブ]に魔力を流し込むとぼたぼたと赤い液体が滴り始めた。ただ水を格納した[アイテムキューブ]とは比較にならないほどに生成量は少なく、必要な魔力量は多かった。この様子だと複製するのに消費される魔素の量も水とは比べ物にならないと考えて間違いはなさそうだ。
ボクが雑な検証をしていると、プルがガサガサと音を立てながら草を掻き分けてボクの足元にまで戻って来ていた。ボクは手の中の[アイテムキューブ]をウエストポーチにしまい込んで、足元のプルを抱え上げる。
「ありがとう、プル。プルのおかげで狩りはすぐに終わったよ」
体表面をなでながら成果を褒めてあげると、プルは嬉しそうにぷるぷると身体をふるわせた。
「まだお昼までは時間もあるし、思いっきり遊んで来てもいいよ」
プルは「本当?」とでも言いたげにボクを見上げるような仕草を取っていたので、頷いてあげると喜び勇んで草原の中に飛び込んで行く。その姿を前にボクは付け加えるように注意事項を伝えた。
「ボク以外の人間には見つからないようにするんだよ」
その声はきちんと届いたらしく、プルはボクに見えるように草むらから飛び上がって、身体をぽよぽよとさせ、なにかを訴える動作をしたかと思うと、再び草むらの中に姿を隠してしまった。
ガサガサと草原を掻き分ける音が遠去かって行く。プルとは魔力的に繋がっているので、迷子になることはないはず。
プルが満足して戻って来るまでの間、ボクはどう暇を潰したものかな。狩りはプルが一瞬で終わらせてしまったので、やることがなくなっちゃったんだよね。狩れたのも大物だったし、追加で獲物を得る必要はないしね。
だったらグラスボアを解体するのもありかな。お肉は4t以上はあるだろうから孤児院やアンジーの働いてる食堂にお裾分けしたいしね。とてもじゃないけど、ボクとグレンのふたりだけでは消費しきれないもんね。
問題は解体中のグラスボアの臭いを嗅ぎ付けて、彼らを捕食しているらしいウィードウルフが寄って来ることくらい。しばしどう対処したものかと考え、ボクは強引な解決方法を取ることにした。
魔力をボクを中心に10m四方の地中深くにまで流し込む。そこからは錬金術ギルドの地下空間をつくったときと同じ要領で、簡易の解体部屋を地下に用意した。入口は地下空間の角になる位置に空け、再度【奪取】と【施錠】を用いて壁際に階段を設置した。階段を半ばまで降てから、他人に発見されて困らないように入口は小型動物の巣穴として偽装した。穴の大きさからプルも出入り可能だろうし、ひと通りの下準備は整ったと思っていいかな。
解体部屋の床に降り立ったボクは、ウエストポーチからグラスボアが格納された「アイテムキューブ]を取り出した。それに魔力を流し込んでみたけれど、複製が出現する様子はない。やはりというべきか複製するのに必要な魔力も魔素も全然足りていないようだった。
血液を複製したときの推測が概ね間違っていないと確認が取れたので[アイテムキューブ]を【解錠】して、格納されていたグラスボアを床の上に出現させた。
体長6m以上はあるグラスボアの巨体を前に、ボクは空気を【施錠】して解体道具を創り出した。血液は全て【奪取】で抜いているので、そこまで汚れないはず。多少汚れたとしても、解体後に汚れだけ【奪取】してやればいいかとそのまま進めることにした。
魔力を帯びて頑丈な分厚い皮膚を切り開き、手始めに汚物の詰まった内臓などを【奪取】で取り除き[アイテムキューブ]に格納するなどして悪臭を封じ込めた。その後は順調に解体は進み、蓄積魔力量の多い内臓を選り分け、【奪取】で皮膚と脂肪を分離してから、枝肉を部位ごとに丁寧に切り分けていった。最後に残った骨は、保存し易い形状に【奪取】で変化させて一塊にした。
単純な手作業だけでやっていたらかなりの時間を要したであろう解体作業は、スキルを活用したことで、あっという間に終わった。額に浮かぶ汗を手の甲で拭ってから、全身の汚れを【奪取】で除去したボクは、解体作業に使用した道具類を【解錠】して空気に戻した。
解体を終えて一休みしていると、大自然を満喫したらしいプルが近付いて来るのを感じ取ったので、ボクは解体部屋から地上に出る。そして解体部屋の中に汚物と消化器官などが詰まった[アイテムキューブ]を放り込み、解体部屋と一緒に【解錠】して埋め立てた。痕跡を入念に消してからボクは、ご機嫌なプルと合流した。
さっきのグラスボアの大きさなら体重は余裕で6tくらいはあるだろうし、あの手の大型魔獣なら体重の10%くらいが血液だとレッドグレイヴの魔獣解体担当者に聞いたから、採取出来た血液量は大体600kgくらいかな。
薬草の栽培実験に使用するなら、充分な量を確保出来た。それに「アイテムキューブ]に格納したから複製も可能なはず。それを確かめるように[アイテムキューブ]に魔力を流し込むとぼたぼたと赤い液体が滴り始めた。ただ水を格納した[アイテムキューブ]とは比較にならないほどに生成量は少なく、必要な魔力量は多かった。この様子だと複製するのに消費される魔素の量も水とは比べ物にならないと考えて間違いはなさそうだ。
ボクが雑な検証をしていると、プルがガサガサと音を立てながら草を掻き分けてボクの足元にまで戻って来ていた。ボクは手の中の[アイテムキューブ]をウエストポーチにしまい込んで、足元のプルを抱え上げる。
「ありがとう、プル。プルのおかげで狩りはすぐに終わったよ」
体表面をなでながら成果を褒めてあげると、プルは嬉しそうにぷるぷると身体をふるわせた。
「まだお昼までは時間もあるし、思いっきり遊んで来てもいいよ」
プルは「本当?」とでも言いたげにボクを見上げるような仕草を取っていたので、頷いてあげると喜び勇んで草原の中に飛び込んで行く。その姿を前にボクは付け加えるように注意事項を伝えた。
「ボク以外の人間には見つからないようにするんだよ」
その声はきちんと届いたらしく、プルはボクに見えるように草むらから飛び上がって、身体をぽよぽよとさせ、なにかを訴える動作をしたかと思うと、再び草むらの中に姿を隠してしまった。
ガサガサと草原を掻き分ける音が遠去かって行く。プルとは魔力的に繋がっているので、迷子になることはないはず。
プルが満足して戻って来るまでの間、ボクはどう暇を潰したものかな。狩りはプルが一瞬で終わらせてしまったので、やることがなくなっちゃったんだよね。狩れたのも大物だったし、追加で獲物を得る必要はないしね。
だったらグラスボアを解体するのもありかな。お肉は4t以上はあるだろうから孤児院やアンジーの働いてる食堂にお裾分けしたいしね。とてもじゃないけど、ボクとグレンのふたりだけでは消費しきれないもんね。
問題は解体中のグラスボアの臭いを嗅ぎ付けて、彼らを捕食しているらしいウィードウルフが寄って来ることくらい。しばしどう対処したものかと考え、ボクは強引な解決方法を取ることにした。
魔力をボクを中心に10m四方の地中深くにまで流し込む。そこからは錬金術ギルドの地下空間をつくったときと同じ要領で、簡易の解体部屋を地下に用意した。入口は地下空間の角になる位置に空け、再度【奪取】と【施錠】を用いて壁際に階段を設置した。階段を半ばまで降てから、他人に発見されて困らないように入口は小型動物の巣穴として偽装した。穴の大きさからプルも出入り可能だろうし、ひと通りの下準備は整ったと思っていいかな。
解体部屋の床に降り立ったボクは、ウエストポーチからグラスボアが格納された「アイテムキューブ]を取り出した。それに魔力を流し込んでみたけれど、複製が出現する様子はない。やはりというべきか複製するのに必要な魔力も魔素も全然足りていないようだった。
血液を複製したときの推測が概ね間違っていないと確認が取れたので[アイテムキューブ]を【解錠】して、格納されていたグラスボアを床の上に出現させた。
体長6m以上はあるグラスボアの巨体を前に、ボクは空気を【施錠】して解体道具を創り出した。血液は全て【奪取】で抜いているので、そこまで汚れないはず。多少汚れたとしても、解体後に汚れだけ【奪取】してやればいいかとそのまま進めることにした。
魔力を帯びて頑丈な分厚い皮膚を切り開き、手始めに汚物の詰まった内臓などを【奪取】で取り除き[アイテムキューブ]に格納するなどして悪臭を封じ込めた。その後は順調に解体は進み、蓄積魔力量の多い内臓を選り分け、【奪取】で皮膚と脂肪を分離してから、枝肉を部位ごとに丁寧に切り分けていった。最後に残った骨は、保存し易い形状に【奪取】で変化させて一塊にした。
単純な手作業だけでやっていたらかなりの時間を要したであろう解体作業は、スキルを活用したことで、あっという間に終わった。額に浮かぶ汗を手の甲で拭ってから、全身の汚れを【奪取】で除去したボクは、解体作業に使用した道具類を【解錠】して空気に戻した。
解体を終えて一休みしていると、大自然を満喫したらしいプルが近付いて来るのを感じ取ったので、ボクは解体部屋から地上に出る。そして解体部屋の中に汚物と消化器官などが詰まった[アイテムキューブ]を放り込み、解体部屋と一緒に【解錠】して埋め立てた。痕跡を入念に消してからボクは、ご機嫌なプルと合流した。
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