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055 盗賊さん、魔獣討伐の予定を立てる。
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ボクの回答を耳にしたグレンは疑わし気にしていた。
「上級ポーションって、そんなもの使ってるのか」
「そうだよ。以前話さなかったかな。呼吸で空気中の魔素を体内に取り込んで、血流に載せて全身に行き渡らせるってさ。それって要するに魔素は血中に溶け込んでるってことなんだよね」
グレンは記憶を掘り返すように視線を上に向け、考え込みながらつぶやく。
「そうだっけか。もっと違う言い方してたような気もするが」
「その辺りの細かいことは、重要じゃないから今は置いとこうか」
ボクもその場その場で適当なことを言いがちなので、強引に話を押し進めると、グレンはたじろいでいた。
「あ、あぁ、そうだな」
「それでさっきの話からもわかるように、生きた血液にはそれなりに魔素が含有されているって訳さ。ポーションに宿ったスキル効果を発揮させるのも血中の魔素を消費するんだから、必然的にスキルを抽出する溶媒に魔素を含有した血液を使おうって考えに至るのは、自然なことだと思わないか」
ボクの説明に納得したらしいグレンは、腕を組んで深く頷いた。
「そうかも知れねぇな」
「そこまでわかってもらえれば充分さ。魔獣の血液は、人間の血液なんかよりも魔素濃度が高いからね。それを使えば人為的に魔素溜まりを造るのも容易なんだ。そこでグレンが薬草を採取していた場所を思い返して欲しいんだけど、集団暴走跡地でもないのに薬草が自生してたりするのを見かけたことってないかな」
眉間に皺を寄せてしばし考えたグレンは思い当たるものがあったらしく、ぱっと表情を緩めた。
「そういえば南の平原なんかは、そんな感じだな。薬草採取の依頼は、基本的に南の平原から採って来るやつらがほとんどだったしな」
「そこに生息してる魔獣の数は、バーガンディ周辺の他の地域と比べてどうかな」
「考えたこともなかったが、他に比べて多かった気もするな。グラスボアなんかは南の平原にしか居ないしな」
「そこにはその魔獣の天敵というか、捕食する魔獣なんかも居たりする?」
「数はすぐねぇが、確かウィードウルフがいたと思うぜ」
そこまで口にしてグレンはボクがなにを言わんとしてるのか気付いたようだった。
「あぁ、そういうことか。要は、ウィードウルフが食い散らかした魔獣の血が地面に染み込んで、薬草が育つのに適した魔素が豊富な土になったってことか」
「そういうことだよ」
「だとしたらグラスボア1匹で結構な量の血が取れそうだな」
「その魔獣はそんなに大きいのかな」
「んあー、大体3から5mくらいあるんじゃねぇかな。食肉として需要あるし、冒険者ギルドで頻繁に討伐依頼出されてんな」
「それなら一頭狩れば充分そうだね」
「そういやよ。魔獣の血液は人体に害があるみたいなこと言ってなかったか。血抜きしてあるつっても、魔獣の肉を食っちまってるが平気なのか」
「生食しなければ平気だよ。ポーション作製するときに加熱すると薬草のスキルが失われるみたいなこと言ったと思うけど、それと似たようなものかな。厳密には違うんだけどね」
「そんなら魔獣の血液も加熱したら無害になるのか」
「そうだね。その代わり素材としては使い物にならなくなるけどね」
グレンはうんざりだとばかりに顔を顰めた。
「なんつーか扱いが面倒そうだな」
「そりゃ上級ポーションの素材で扱いが一番厄介な代物だからね」
「んじゃ、明日はグラスボア狩りってことでいいのか」
その言葉を肯定しようとして、ボクは思い止まった。
「そうしたいところだけど、少し気になることがあるからね。それが解決したと確認が取れたらそうしようかな」
思い当たることがなかったらしいグレンは、顎に手を当てて首を傾げた。
「気になること? 薬師ギルドのこととは別件でか」
「うん。北地区のダンジョンに集団暴走の兆候があったからさ。ちょっと気になってね」
ボクの返答を聞いたグレンは、驚きとともに大きな声を出し、焦りを見せた。
「マジかよ。冒険者ギルドに知らせた方がいいんじゃねぇか」
「それならもう知らせてあるから大丈夫だよ。今、緊急依頼出されてて、結構な数の冒険者が駆り出されてたからね」
集団暴走関連の問題が、既に解決の目処が立っているとわかるとグレンは、ほっと息を吐いて緊張して強張っていた身体から力を抜いていた。
「そうか。それならいいけどよ。こっち帰って来てから、どうにも厄介事ばっかりだな」
「そうみたいだね。ボクも今日はやたらと走り回ることになったよ」
「あー、なんかすまねぇな。こっちの事情にも巻き込んじまってよ」
心底申し訳なさそうにグレンは眉を寄せていた。ボクは別に迷惑だとは感じていなかったので率直に今の気持ちを口にする。
「こんな経験今までなかったからね。退屈しなくていいよ」
「そう言えちまうヒイロは、すげぇよ」
グレンには何故か感心されてしまった。
「この状況を楽しもうとでも思わなきゃ、疲れちゃうからね」
重ねてそんなことを告げると、それまで困ったような顔で苦笑していたグレンは、どこかすっきりとした顔で声をあげて笑った。
「ははっ、そうかもな」
「上級ポーションって、そんなもの使ってるのか」
「そうだよ。以前話さなかったかな。呼吸で空気中の魔素を体内に取り込んで、血流に載せて全身に行き渡らせるってさ。それって要するに魔素は血中に溶け込んでるってことなんだよね」
グレンは記憶を掘り返すように視線を上に向け、考え込みながらつぶやく。
「そうだっけか。もっと違う言い方してたような気もするが」
「その辺りの細かいことは、重要じゃないから今は置いとこうか」
ボクもその場その場で適当なことを言いがちなので、強引に話を押し進めると、グレンはたじろいでいた。
「あ、あぁ、そうだな」
「それでさっきの話からもわかるように、生きた血液にはそれなりに魔素が含有されているって訳さ。ポーションに宿ったスキル効果を発揮させるのも血中の魔素を消費するんだから、必然的にスキルを抽出する溶媒に魔素を含有した血液を使おうって考えに至るのは、自然なことだと思わないか」
ボクの説明に納得したらしいグレンは、腕を組んで深く頷いた。
「そうかも知れねぇな」
「そこまでわかってもらえれば充分さ。魔獣の血液は、人間の血液なんかよりも魔素濃度が高いからね。それを使えば人為的に魔素溜まりを造るのも容易なんだ。そこでグレンが薬草を採取していた場所を思い返して欲しいんだけど、集団暴走跡地でもないのに薬草が自生してたりするのを見かけたことってないかな」
眉間に皺を寄せてしばし考えたグレンは思い当たるものがあったらしく、ぱっと表情を緩めた。
「そういえば南の平原なんかは、そんな感じだな。薬草採取の依頼は、基本的に南の平原から採って来るやつらがほとんどだったしな」
「そこに生息してる魔獣の数は、バーガンディ周辺の他の地域と比べてどうかな」
「考えたこともなかったが、他に比べて多かった気もするな。グラスボアなんかは南の平原にしか居ないしな」
「そこにはその魔獣の天敵というか、捕食する魔獣なんかも居たりする?」
「数はすぐねぇが、確かウィードウルフがいたと思うぜ」
そこまで口にしてグレンはボクがなにを言わんとしてるのか気付いたようだった。
「あぁ、そういうことか。要は、ウィードウルフが食い散らかした魔獣の血が地面に染み込んで、薬草が育つのに適した魔素が豊富な土になったってことか」
「そういうことだよ」
「だとしたらグラスボア1匹で結構な量の血が取れそうだな」
「その魔獣はそんなに大きいのかな」
「んあー、大体3から5mくらいあるんじゃねぇかな。食肉として需要あるし、冒険者ギルドで頻繁に討伐依頼出されてんな」
「それなら一頭狩れば充分そうだね」
「そういやよ。魔獣の血液は人体に害があるみたいなこと言ってなかったか。血抜きしてあるつっても、魔獣の肉を食っちまってるが平気なのか」
「生食しなければ平気だよ。ポーション作製するときに加熱すると薬草のスキルが失われるみたいなこと言ったと思うけど、それと似たようなものかな。厳密には違うんだけどね」
「そんなら魔獣の血液も加熱したら無害になるのか」
「そうだね。その代わり素材としては使い物にならなくなるけどね」
グレンはうんざりだとばかりに顔を顰めた。
「なんつーか扱いが面倒そうだな」
「そりゃ上級ポーションの素材で扱いが一番厄介な代物だからね」
「んじゃ、明日はグラスボア狩りってことでいいのか」
その言葉を肯定しようとして、ボクは思い止まった。
「そうしたいところだけど、少し気になることがあるからね。それが解決したと確認が取れたらそうしようかな」
思い当たることがなかったらしいグレンは、顎に手を当てて首を傾げた。
「気になること? 薬師ギルドのこととは別件でか」
「うん。北地区のダンジョンに集団暴走の兆候があったからさ。ちょっと気になってね」
ボクの返答を聞いたグレンは、驚きとともに大きな声を出し、焦りを見せた。
「マジかよ。冒険者ギルドに知らせた方がいいんじゃねぇか」
「それならもう知らせてあるから大丈夫だよ。今、緊急依頼出されてて、結構な数の冒険者が駆り出されてたからね」
集団暴走関連の問題が、既に解決の目処が立っているとわかるとグレンは、ほっと息を吐いて緊張して強張っていた身体から力を抜いていた。
「そうか。それならいいけどよ。こっち帰って来てから、どうにも厄介事ばっかりだな」
「そうみたいだね。ボクも今日はやたらと走り回ることになったよ」
「あー、なんかすまねぇな。こっちの事情にも巻き込んじまってよ」
心底申し訳なさそうにグレンは眉を寄せていた。ボクは別に迷惑だとは感じていなかったので率直に今の気持ちを口にする。
「こんな経験今までなかったからね。退屈しなくていいよ」
「そう言えちまうヒイロは、すげぇよ」
グレンには何故か感心されてしまった。
「この状況を楽しもうとでも思わなきゃ、疲れちゃうからね」
重ねてそんなことを告げると、それまで困ったような顔で苦笑していたグレンは、どこかすっきりとした顔で声をあげて笑った。
「ははっ、そうかもな」
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