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016 盗賊さん、冒険者ギルドに赴く。
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「思い立ったが吉日ってやつか。いいぜ、まだ昼にもなってねぇし、充分に時間もあるだろうしな」
日を改められるかとも思ったけれど、ダンジョン探索に関してグレンは存外に乗り気なようだった。
グレンの案内の下、領都中央通りの一角に陣取る冒険者ギルドに到着した。冒険者ギルドは木造3階建ての建物で、見渡せる範囲にある建物の中では比較的大きな部類に入った。その外観から窺える印象は、ギルドの資金繰りも治安も良さそうだと一目でわかるもので、それは開口部が木窓ではなく、透明度の高いガラスが惜しみなく使われていることからも明らかだった。
ボクらは今も多くの武装した人々が出入りする冒険者ギルド正面のスイングドアを抜け、屋内に踏み込む。グレンは迷う様子も見せずに、受付カウンター前に立つ若い男性のギルド職員に歩み寄ると声をかけられた。
「ご用件は?」
「オレの後ろにいるやつの冒険者登録とオレらのパーティーのダンジョン探索の申請に」
「では、こちらを」
グレンは男性職員から中央に大きく3桁の数字が書かれた緑色の木札を1枚と書類らしきものを2枚を受け取り、側に置かれたボードに渡された木札の色と数字を書き入れた。
「順番が来るまで、まだそれなりにかかりそうだし、向こうで待ってようぜ」
そう言ってグレンが指し示したのギルド内に併設された飲食店だった。
「朝食もまだだし、ちょうどいいかもね」
ボクが肯定の意を示すとグレンは
円卓のひとつに腰を下ろし、近くを通りかかった店員にグレンが適当に注文をしていた。それが届くまで周囲の人々を軽く見回してみると冒険者らしき格好をした人々は、一様に頭を突き合わせてなんらかの書類を確かめていた。するとそこによく通るギルド職員が響く。内容は「赤の14番の方は6番カウンターまでお越し下さい」といったものだった。すると付近の円卓に着いていた冒険者のひとりが書類を持って、6と記されたプレートが掲げられたカウンターに足を運んでいた。
その様子から冒険者ギルドでの手続きの流れをなんとなく把握した。受付カウンターの方に向けていた顔を戻し、グレンの方に視線をやると彼は書類の記入作業の最中だった。
「それ、ボクは書かなくてもいいのかな」
「あ、悪ぃ。こっち頼む。というかこっちはヒイロが書かないとダメなやつだったわ」
渡されたのは冒険者の新規登録申請書だった。
「筆記具はどこにあるんだろうか?」
「テーブルの真ん中に突っ立ってるやつがそうだぜ」
グレンの言葉が示す先に目を向けると円卓の中央には、細い棒が3本突き立っており、その近くに細い棒と同じ太さの穴がひとつ空いていた。グレンが手にしている筆記具は、そこから取ったのだろう。ボクは手を伸ばし、筆記具を手に取った。
手元の書類に目を落とす。そこには名前と生年月日、戦闘スタイルに関するものが必須項目として記され、書類の下部に任意記入項目として天職や使用可能スキルなどを記すスペースが確保されていた。
ボクは手早く名前と生年月日を記入した。
戦闘スタイルの項目は、武器の欄には短剣、魔術使用の可否は可に○を付けた。天職の分類に関しては、戦闘職にするか迷ったけれど、最終的に支援職を選んだ。錬金術師を装うならその方がいいとの判断だった。
その辺りまで記入したところで飲食店の店員がやって来て「こちらに置いておきますね」と円卓の空いたスペースにふたり分の軽食を置いて行った。
任意記入項目以外をすべて埋めたボクは、書類を裏返して汚さぬように脇に退け、届いたばかりの焼き立てのトーストを齧った。対面に座るグレンはというとトーストをはむはむと口に加えながら書類記入を続行していた。ただパリッと焼き上げられたトーストの一部がパラパラと書類の上に落ちているのが少し気になった。
「グレン、その書類汚すと書き直しになるんじゃないか」
そう言って釘を刺すとグレンは、はたと気付いたようにもごもごと口に咥えていたトーストを一気に口の中に押し込み、手元の書類をパタパタと振ってパン屑を払い飛ばしていた。
あまりのズボラさに苦笑しながら軽食の残りを片付け、ウエストポーチからハンカチを取り出して手を拭う。それからほどなくしてグレンの持つ緑色の木札の番号が呼ばれ、指定された番号のカウンターに向かうことになった。席を立つ前に会計を済ませようと店員を探しているとグレンは気にすることなくカウンターに向かっていくので慌てて引き止めた。
「会計しないのか」
「問題ないぜ。ここの手続きに来てた場合は、朝の軽食だけはサービスなんだ」
「そうなのか、気前がいいんだな」
「タダでもらえるもんがあるなら、書類が面倒でも大抵の冒険者は朝から来るからな。まぁ、ダンジョンの入場料の還元って意味もあるんだろうけどな」
そんな解説をグレンから受けていると再び木札の番号が呼ばれ、ボクらは急いで指定されたカウンターに向かった。
日を改められるかとも思ったけれど、ダンジョン探索に関してグレンは存外に乗り気なようだった。
グレンの案内の下、領都中央通りの一角に陣取る冒険者ギルドに到着した。冒険者ギルドは木造3階建ての建物で、見渡せる範囲にある建物の中では比較的大きな部類に入った。その外観から窺える印象は、ギルドの資金繰りも治安も良さそうだと一目でわかるもので、それは開口部が木窓ではなく、透明度の高いガラスが惜しみなく使われていることからも明らかだった。
ボクらは今も多くの武装した人々が出入りする冒険者ギルド正面のスイングドアを抜け、屋内に踏み込む。グレンは迷う様子も見せずに、受付カウンター前に立つ若い男性のギルド職員に歩み寄ると声をかけられた。
「ご用件は?」
「オレの後ろにいるやつの冒険者登録とオレらのパーティーのダンジョン探索の申請に」
「では、こちらを」
グレンは男性職員から中央に大きく3桁の数字が書かれた緑色の木札を1枚と書類らしきものを2枚を受け取り、側に置かれたボードに渡された木札の色と数字を書き入れた。
「順番が来るまで、まだそれなりにかかりそうだし、向こうで待ってようぜ」
そう言ってグレンが指し示したのギルド内に併設された飲食店だった。
「朝食もまだだし、ちょうどいいかもね」
ボクが肯定の意を示すとグレンは
円卓のひとつに腰を下ろし、近くを通りかかった店員にグレンが適当に注文をしていた。それが届くまで周囲の人々を軽く見回してみると冒険者らしき格好をした人々は、一様に頭を突き合わせてなんらかの書類を確かめていた。するとそこによく通るギルド職員が響く。内容は「赤の14番の方は6番カウンターまでお越し下さい」といったものだった。すると付近の円卓に着いていた冒険者のひとりが書類を持って、6と記されたプレートが掲げられたカウンターに足を運んでいた。
その様子から冒険者ギルドでの手続きの流れをなんとなく把握した。受付カウンターの方に向けていた顔を戻し、グレンの方に視線をやると彼は書類の記入作業の最中だった。
「それ、ボクは書かなくてもいいのかな」
「あ、悪ぃ。こっち頼む。というかこっちはヒイロが書かないとダメなやつだったわ」
渡されたのは冒険者の新規登録申請書だった。
「筆記具はどこにあるんだろうか?」
「テーブルの真ん中に突っ立ってるやつがそうだぜ」
グレンの言葉が示す先に目を向けると円卓の中央には、細い棒が3本突き立っており、その近くに細い棒と同じ太さの穴がひとつ空いていた。グレンが手にしている筆記具は、そこから取ったのだろう。ボクは手を伸ばし、筆記具を手に取った。
手元の書類に目を落とす。そこには名前と生年月日、戦闘スタイルに関するものが必須項目として記され、書類の下部に任意記入項目として天職や使用可能スキルなどを記すスペースが確保されていた。
ボクは手早く名前と生年月日を記入した。
戦闘スタイルの項目は、武器の欄には短剣、魔術使用の可否は可に○を付けた。天職の分類に関しては、戦闘職にするか迷ったけれど、最終的に支援職を選んだ。錬金術師を装うならその方がいいとの判断だった。
その辺りまで記入したところで飲食店の店員がやって来て「こちらに置いておきますね」と円卓の空いたスペースにふたり分の軽食を置いて行った。
任意記入項目以外をすべて埋めたボクは、書類を裏返して汚さぬように脇に退け、届いたばかりの焼き立てのトーストを齧った。対面に座るグレンはというとトーストをはむはむと口に加えながら書類記入を続行していた。ただパリッと焼き上げられたトーストの一部がパラパラと書類の上に落ちているのが少し気になった。
「グレン、その書類汚すと書き直しになるんじゃないか」
そう言って釘を刺すとグレンは、はたと気付いたようにもごもごと口に咥えていたトーストを一気に口の中に押し込み、手元の書類をパタパタと振ってパン屑を払い飛ばしていた。
あまりのズボラさに苦笑しながら軽食の残りを片付け、ウエストポーチからハンカチを取り出して手を拭う。それからほどなくしてグレンの持つ緑色の木札の番号が呼ばれ、指定された番号のカウンターに向かうことになった。席を立つ前に会計を済ませようと店員を探しているとグレンは気にすることなくカウンターに向かっていくので慌てて引き止めた。
「会計しないのか」
「問題ないぜ。ここの手続きに来てた場合は、朝の軽食だけはサービスなんだ」
「そうなのか、気前がいいんだな」
「タダでもらえるもんがあるなら、書類が面倒でも大抵の冒険者は朝から来るからな。まぁ、ダンジョンの入場料の還元って意味もあるんだろうけどな」
そんな解説をグレンから受けていると再び木札の番号が呼ばれ、ボクらは急いで指定されたカウンターに向かった。
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