天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。

朱本来未

文字の大きさ
上 下
15 / 118

015 盗賊さん、ダンジョンの話を聞く。

しおりを挟む
「随分と弱気だね」
「……確かにな」
 グレンは苦笑し、すぐに表情を改めた。
「厚かましいとは思うが、オレにポーションのつくり方を教授してくれないか」
「もちろんさ」
 ボクは笑みをつくって端的に、そう応じた。

 新たな材料を用意して、グレンの前でレッドグレイヴで一般的に行われているポーション作製過程を披露した。ひと通りの流れを見せ、完成品でボクの手の平が治癒する様子を見せながら、疑問はないかと問いかける。
「何か質問はある?」
「あぁ、ひとつ気になったんだが。薬草を加熱するとスキルが失われるんだよな。ならすり潰しても結果は同じになるんじゃないのか」
「確かにすり潰した後、長時間放置したらそうなるね。でも、すり潰してすぐは薬草が損傷を癒そうとスキルが発動するんだ。それがポーション作製の際には重要なのさ。スキルが発動中でなければ、スキルの抽出は出来ないからね。それに薬草をすり潰すのには、もうひとつ理由があって、薬草に魔力を均一に浸透させやすくするためでもあるのさ。茎や葉脈、葉身と各部位でそれぞれ魔力の浸透しやすさが違うからね」
「そういうことか。あとはオレが魔力操作をマスターすりゃいいんだな」
「そうなるね。あとはポーション作製には必須の水の魔石をどこかで仕入れる必要があるね。一応、ボクもそれなりにストックしてるけど個人的に消費する程度しか手持ちがないからね」
 グレンは腕を組み、眉間に深いシワをつくった。
「練習するにしても素材をどうにかしないことにはな」
「ここの現状や薬師ギルドの妨害なんかを考えると、領都内で仕入れるのは難しそうだね」
「確実にふっかけられるだろうしな」
「そうなって来ると、取れる選択は限られて来るね」
「あぁ、自分で採って来るなりするしかねぇだろうな。薬草は城壁外に自生してたりするが、水の魔石はダンジョンに潜るしかねぇな」
「付近のダンジョンで水の魔石をドロップするモンスターの情報は把握してたりするかな?」
「確か北地区のダンジョン1階層で、スライムが小粒のやつをドロップするって話だったと思うぜ」
「スライムか。それならすぐに数を集められそうだね」
「簡単に言ってくれるな」
「低階層ならちょくちょく素材採取でダンジョンに潜ってたりしてたからね」
「そんなこともしてたのか」
「そうでもしなきゃ、ひとに頼んだらいつまで待たされるかわからないからね。自分で出来るんなら自分でやるさ。グレンだって似たようなものだろ。単身でレッドグレイヴまで乗り込んでったくらいなんだしさ」
「なんか違うような気もするが、やることがわかってんなら今はそれを自分でやるしかないっては違いねぇな」
 レッドグレイヴに技術指導を受けに行った話を例えに出したが、グレンはもう吹っ切れたらしく、気にした様子を微塵も見せなかった。
「それじゃ、ダンジョンに行くのは決定として、ここはダンジョンに入るのに制限とかはあるのか?」
「あー、冒険者ギルドの登録がいるな。ダンジョンの管理してんのがあっこだからな。入場料として銀貨3枚の支払いと入場時に攻略計画書の提出が義務化されてる」
「攻略計画書? なんだいそれは」
 ボクが潜っていたのはレッドグレイヴ邸の敷地内にあったダンジョンだったので、そういった手続きなどは一切必要なかっただけに初めて耳にする単語に興味を惹かれた。
「パーティーメンバーの名前と緊急時の連絡先、攻略予定階層と行動予定の日時、持ち込む装備の詳細なんかを記した書類だな。専用用紙は冒険者ギルドにあるぞ」
「かなり厳重に管理してるんだね」
「そうでもしなきゃ無茶するやつが後を絶たなくてな。無茶して行方不明になったやつの捜索時にも役には立ってるみたいだしな。あとはそうだな、ダンジョン内での犯罪もある程度は抑制出来てるらしいぞ」
「持ち込む装備の詳細も申告するってことは、ダンジョンからの持ち出しに関しては、なにか制限はあるのかな」
「ドロップアイテムに関しては、特に言及されてなかったはず。そこ縛ったりなんかしたらさすがに冒険者達から反発されるんじゃないか」
「かもしれないな。それならスライムを乱獲しても咎められることはなさそうだな」
「乱獲出来るほど出て来てくれりゃいいけどな」
「1回の入場料で銀貨3枚取られるんなら、その1回でそれなりの素材を稼いでおきたいじゃないか」
「まぁな。それもあってかダンジョン行くやつは事前準備にそれなりに時間かけてたりするな。その辺りも冒険者ギルドの狙いなのかもな」
「なるほどね」
 あとは低階層で長時間うろうろしても稼げないから実力のない新人は入場料支払うのを躊躇うだろうし、追い剥ぎするようなやつも毎回銀貨3枚支払うのもバカらしいと思わせる意図もありそうだ。
「そういうので損したくないやつは、城壁外の魔獣討伐とか受けてんじゃねぇかな。ダンジョンと違ってアイテムはドロップしねぇが、魔獣は丸々素材として買い取ってもらえるしな」
「冒険者ギルドに関しては概ねわかったよ。でも、実地に勝るものもないだろうし、これから冒険者登録のついでに様子を見に行ってみないか、ダンジョンに」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...