11 / 118
011 盗賊さん、錬金術ギルドの現状を知る。
しおりを挟む
特になんの問題もなくバーガンディの領都に入場出来たボクらは、グレンの案内のもと錬金術ギルドに向かった。
それからほどなくして到着したのは、随分と年季の入った建物だった。強風が吹けば軋んで音を立てそうな外観に、ボクは押し黙る。そんなボクの反応を見て取ったグレンは、言い訳でもするように早口で捲し立てた。
「一応ここが錬金術ギルドの本部なんだ。見た目はちっとばかしボロっちいけど、地下の工房はきちっとしてるんで……あー、そのなんて言うか」
「ここでの錬金術の地位がどの程度かよくわかる見た目をしてるね」
「まぁ、はっきり言っちまうとそうなんだよな。とりあえず入ってくれ、ここで立ち話すんのもあれだしな」
グレンは鍵を開け、ボクを招き入れる。屋内に踏み込むと外観ほど痛んではいないようで、今すぐ修繕が必要といった感じではなかった。ただ長い間無人だったのか、少しホコリっぽかった。
ボクらは軽くホコリを払って、4人掛けのテーブルに腰を落ち着けた。
「誰もいないようだね」
「オレが技術指導受けにいってる間に、みんな出てっちまったらしくてさ。今じゃもぬけの殻さ」
「錬金術の仕事がないなんてよっぽどだね。下級ポーションだけでもそれなりに需要あるだろうからやっていけると思うんだけど」
「ポーション類なんかもつくっちゃいたんだが、あんま売れなくてな」
「なにか理由でも?」
「ポーションは錬金術師じゃなくてもつくれるからってのが主な理由だな。ここじゃポーション類の市場を一手に担ってるのは薬師ギルドなのさ。なんなら回復効果も向こうの方が上なんじゃねぇかな」
「薬師か。確かに薬師なら病なんかの治療薬では上だろうけど、外傷を治す魔法薬でなら負けるなんてことはないんじゃないかな」
感じた疑問をそのまま口にするとグレンは渋い顔をした。
「それがそうでもねぇんだ。向こうには腕のいい錬金術師が居るからさ」
「その人物とは仲違いでもしたの?」
「そんなところだよ。元々うちで働いてた錬金術師だったのさ。それも唯一の天職持ちのな。あのひとは不満だったんだろさ、天職が錬金術師でもないやつに使われんのがよ」
「そういうことかい。で、それはどうにかなりそうなの」
「ギルドとしてやってくのは、もう無理かもしれねぇが。個人経営の店舗としてやってくくらいなら何とかなるかもしれねぇってレベルさ。幸いにも近くにダンジョンがあるしよ。生傷の絶えない冒険者相手にポーション売って、細々と商売してくんならどうにかなると思うんだが」
「ポーションの素材を薬師ギルドに押さえられる未来しか見えないよ。それならいっそ薬師ギルドの傘下に入ってしまった方がいいね」
グレンは首を横に振った。
「それは無理なんだ。昔、親父が頭を下げにいったことがあったんだが、すげなく断られちまってよ。うちを根絶やしにしねぇと気がすまねぇって感じらしいんだ」
「厄介な話だね。それだといくら言葉や誠意を尽くしても無駄だろうね」
「だろうな。単に嫌われてるだけってんなら気にしねぇが、こっちにとっちゃ実害が出てるしな。まぁ、人材の足りてねぇ弱小ギルドの扱いなんて、どこもそうなんだろうけどな」
そんなグレンの様子から、城壁外でボクが馬車の同乗者達から避けられていたことに憤慨していたのは、自身の境遇に重ね合わせていたからなのかも知れないと思い至った。
「ところでグレンの天職は錬金術師じゃないのかな」
「ん、あぁ、オレは裁縫師さ。んで、親父は細工師。うちの家系で錬金術師だったのは、曾祖父さんくらいのもんさ。あとはみんな生産職だったな」
魔法効果の付与された衣類や装身具をつくる技術があればどうにかなりそうだね。天職が魔術職でもないのにポーションをつくれるのだから、魔石の扱いは既に体得していると考えていい。錬金術ギルドを掲げているのならポーションだけにこだわる理由もないしね。
「ここではポーション以外はなにつくってたの」
「基本的に魔法効果のある水薬ばっかりだな。ポーションのレシピを多少いじっていろいろつくってたんで。他に錬金術のレシピ残されてなかったしな。知らねぇうちに曾祖父さんの遺したレシピ処分されちまってたらしくてさ」
「素材の買い付けは?」
「冒険者ギルドから卸してもらってたな。今じゃ足元見られて素材の価格吊り上げられちまってるけどな」
「そんな状態なのに冒険者相手に商売する気だったの」
「仕方ねぇだろ。他になにも思いつかねぇんだからよ。最悪は、自分で素材採りに行くしかねぇかもな」
「戦闘職でもないのに、それは厳しいんじゃない。野盗相手に善戦出来るくらいの実力があるなら問題ないだろうけど」
「……」
取りつく島もないボクの言葉に、グレンは押し黙ってしまった。あまり否定的なことを言い過ぎだかも知れない。でも、放って置けばグレンは無謀な選択をしてしまいそうな直情的な性格をしているので、くどいくらいに釘を刺した方がいい気がする。
思い立ったらすぐに実行してしまいそうな行動力がグレンにはあった。現に失われた錬金術のレシピをどうにかするために、レッドグレイヴ領まで技術指導を受けに単身で乗り込むほどだからね。
「なぁ、オレはどうすりゃよかったんだ。3年かけて錬金術を学んで来たってのに。全部、無駄だったのか。ただ無意味な時間を費やして、親父の死目にすら会えなかっただけだったのか」
「無駄なんてことはないと思うよ。城門前で別れた馭者のおじさんは、錬金術ギルドに対して好印象を抱いていたようだったし、乗合馬車関連でなにかしらの繋がりがあったんじゃないかな」
悲嘆にくれそうになるグレンの言葉を打ち切るように、ここに至るまでに見聞きした情報から適当な推測を述べた。するとグレンは何か思い当たるものがあったらしく、俯かせていた頭を上げた。
「あぁ、それなら多分蹄鉄なんじゃねぇかな」
鍛治師の方が優遇されそうな物だけど、なにか慕われるだけの理由があったのかな。
「なんでも親父がつくったもんは、鍛冶屋のそれより長持ちするらしくってな。あとは願掛けみてぇなもんなのか、親父の蹄鉄使ってっと馬が怪我しねぇとか聞いたな」
そんなグレンの発言を耳にして、もしかして彼のお父さんは自覚してなかっただけで、魔導具をつくっていたのだと思えてならなかった。
それからほどなくして到着したのは、随分と年季の入った建物だった。強風が吹けば軋んで音を立てそうな外観に、ボクは押し黙る。そんなボクの反応を見て取ったグレンは、言い訳でもするように早口で捲し立てた。
「一応ここが錬金術ギルドの本部なんだ。見た目はちっとばかしボロっちいけど、地下の工房はきちっとしてるんで……あー、そのなんて言うか」
「ここでの錬金術の地位がどの程度かよくわかる見た目をしてるね」
「まぁ、はっきり言っちまうとそうなんだよな。とりあえず入ってくれ、ここで立ち話すんのもあれだしな」
グレンは鍵を開け、ボクを招き入れる。屋内に踏み込むと外観ほど痛んではいないようで、今すぐ修繕が必要といった感じではなかった。ただ長い間無人だったのか、少しホコリっぽかった。
ボクらは軽くホコリを払って、4人掛けのテーブルに腰を落ち着けた。
「誰もいないようだね」
「オレが技術指導受けにいってる間に、みんな出てっちまったらしくてさ。今じゃもぬけの殻さ」
「錬金術の仕事がないなんてよっぽどだね。下級ポーションだけでもそれなりに需要あるだろうからやっていけると思うんだけど」
「ポーション類なんかもつくっちゃいたんだが、あんま売れなくてな」
「なにか理由でも?」
「ポーションは錬金術師じゃなくてもつくれるからってのが主な理由だな。ここじゃポーション類の市場を一手に担ってるのは薬師ギルドなのさ。なんなら回復効果も向こうの方が上なんじゃねぇかな」
「薬師か。確かに薬師なら病なんかの治療薬では上だろうけど、外傷を治す魔法薬でなら負けるなんてことはないんじゃないかな」
感じた疑問をそのまま口にするとグレンは渋い顔をした。
「それがそうでもねぇんだ。向こうには腕のいい錬金術師が居るからさ」
「その人物とは仲違いでもしたの?」
「そんなところだよ。元々うちで働いてた錬金術師だったのさ。それも唯一の天職持ちのな。あのひとは不満だったんだろさ、天職が錬金術師でもないやつに使われんのがよ」
「そういうことかい。で、それはどうにかなりそうなの」
「ギルドとしてやってくのは、もう無理かもしれねぇが。個人経営の店舗としてやってくくらいなら何とかなるかもしれねぇってレベルさ。幸いにも近くにダンジョンがあるしよ。生傷の絶えない冒険者相手にポーション売って、細々と商売してくんならどうにかなると思うんだが」
「ポーションの素材を薬師ギルドに押さえられる未来しか見えないよ。それならいっそ薬師ギルドの傘下に入ってしまった方がいいね」
グレンは首を横に振った。
「それは無理なんだ。昔、親父が頭を下げにいったことがあったんだが、すげなく断られちまってよ。うちを根絶やしにしねぇと気がすまねぇって感じらしいんだ」
「厄介な話だね。それだといくら言葉や誠意を尽くしても無駄だろうね」
「だろうな。単に嫌われてるだけってんなら気にしねぇが、こっちにとっちゃ実害が出てるしな。まぁ、人材の足りてねぇ弱小ギルドの扱いなんて、どこもそうなんだろうけどな」
そんなグレンの様子から、城壁外でボクが馬車の同乗者達から避けられていたことに憤慨していたのは、自身の境遇に重ね合わせていたからなのかも知れないと思い至った。
「ところでグレンの天職は錬金術師じゃないのかな」
「ん、あぁ、オレは裁縫師さ。んで、親父は細工師。うちの家系で錬金術師だったのは、曾祖父さんくらいのもんさ。あとはみんな生産職だったな」
魔法効果の付与された衣類や装身具をつくる技術があればどうにかなりそうだね。天職が魔術職でもないのにポーションをつくれるのだから、魔石の扱いは既に体得していると考えていい。錬金術ギルドを掲げているのならポーションだけにこだわる理由もないしね。
「ここではポーション以外はなにつくってたの」
「基本的に魔法効果のある水薬ばっかりだな。ポーションのレシピを多少いじっていろいろつくってたんで。他に錬金術のレシピ残されてなかったしな。知らねぇうちに曾祖父さんの遺したレシピ処分されちまってたらしくてさ」
「素材の買い付けは?」
「冒険者ギルドから卸してもらってたな。今じゃ足元見られて素材の価格吊り上げられちまってるけどな」
「そんな状態なのに冒険者相手に商売する気だったの」
「仕方ねぇだろ。他になにも思いつかねぇんだからよ。最悪は、自分で素材採りに行くしかねぇかもな」
「戦闘職でもないのに、それは厳しいんじゃない。野盗相手に善戦出来るくらいの実力があるなら問題ないだろうけど」
「……」
取りつく島もないボクの言葉に、グレンは押し黙ってしまった。あまり否定的なことを言い過ぎだかも知れない。でも、放って置けばグレンは無謀な選択をしてしまいそうな直情的な性格をしているので、くどいくらいに釘を刺した方がいい気がする。
思い立ったらすぐに実行してしまいそうな行動力がグレンにはあった。現に失われた錬金術のレシピをどうにかするために、レッドグレイヴ領まで技術指導を受けに単身で乗り込むほどだからね。
「なぁ、オレはどうすりゃよかったんだ。3年かけて錬金術を学んで来たってのに。全部、無駄だったのか。ただ無意味な時間を費やして、親父の死目にすら会えなかっただけだったのか」
「無駄なんてことはないと思うよ。城門前で別れた馭者のおじさんは、錬金術ギルドに対して好印象を抱いていたようだったし、乗合馬車関連でなにかしらの繋がりがあったんじゃないかな」
悲嘆にくれそうになるグレンの言葉を打ち切るように、ここに至るまでに見聞きした情報から適当な推測を述べた。するとグレンは何か思い当たるものがあったらしく、俯かせていた頭を上げた。
「あぁ、それなら多分蹄鉄なんじゃねぇかな」
鍛治師の方が優遇されそうな物だけど、なにか慕われるだけの理由があったのかな。
「なんでも親父がつくったもんは、鍛冶屋のそれより長持ちするらしくってな。あとは願掛けみてぇなもんなのか、親父の蹄鉄使ってっと馬が怪我しねぇとか聞いたな」
そんなグレンの発言を耳にして、もしかして彼のお父さんは自覚してなかっただけで、魔導具をつくっていたのだと思えてならなかった。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる