1 / 118
001 盗賊さん、円満追放される。
しおりを挟む
実家を追放されることになった。
理由は単純、ボクの天職が王家が忌み嫌っている『盗賊』だったから。そりゃ領主としては廃嫡して追放するしかないよねって感じなんだけど、パパはなかなか納得してくれなかった。
過保護が過ぎるパパは、王命に背いてボクをひっそり匿おうとしていたけれど、王都から密かに派遣されていた監察官にあっさりバレた。パパは抵抗を試みたけれど、騎士団を領都に差し向けられそうになり、泣く泣く諦めていた。
その後、滂沱の涙を流しながらパパは、ボクの廃嫡手続きの書類にサインさせられていた。
そんなわけでボクはレッドグレイヴ家の人間ではなくなった。
ただパパも図太いもので、廃嫡されたボクを一個人として支援することは問題ないはずだ。と勝手な独自解釈を展開した。
まずは生活資金として毎年金貨30枚の給付に、空間拡張の魔術が施されたパパお手製のウエストポーチに、身分証として初級錬金術師の免許証が用意された。
ボクは幼い頃から魔術師となるべく教育されていたので、その一環としてポーション作製なども学んでいた。その過程で初級錬金術師程度の技能は有していたので、天職が錬金術師ではなくとも免許証の発行自体は特に問題なかった。
さらに錬金術師としての就職先も斡旋してくれたみたいだけど、天職が違えばポーションの作製自体は出来ても、効力は一段落ちたものしか作れないので、一生下働きさせられるのは容易に想像出来た。
それなら錬金術ギルドや商人ギルドに登録だけして、たまにポーションを持ち込むくらいでいいような気がした。
それか冒険者になって自分でポーション使っちゃうとかね。
そこまではまだいいんだけど、パパはボクに騎士や魔術師の護衛を付けようとまでしていた。
もちろんそれは断らせてもらった。
他にも女の子のひとり旅は危険だから、変な男に目を付けられないようにと男装させられ、長かった髪は短く切り揃えられた。そのとき切った髪は遺髪でも扱うように、状態保存の付与魔術が施された鍵付きの小箱に入れられ保管されていた。
それでパパが満足してくれるならいいかと、諦めてその後も出来る限りの要求には応えていった。
そんなこんなで1週間近くパパのわがままに付き合って、やっと領都から出奔する日を迎えた。
隣の領まで馬車を出してくれようとしたけど、どう考えても悪目立ちしかしない。なので自分で乗合馬車の手配するからとお断りさせてもらった。
別れを渋るパパに別れを告げる。完全に涙目のパパをこのまま放置していくのも考えものだったので、希望を持たせるように、ひとこと残すことにした。
「ダンジョンから天職を変えることが出来るアイテムが出ることあるらしいから。それ見つけたら一度帰ってくるよ」
「本当かい?」
「本当だよ。ボクの盗賊としてのユニークスキル【トレジャーハント】って、ダンジョンでのアイテム入手率が他の天職より高くなるらしいから、そのアイテムを手に入れる可能性はなくはないんじゃないかな。それで天職が盗賊でなくなれば廃嫡取り消しはされないまでも、領都に戻るくらいは許してもらえるかも」
たぶん無理だろうけど、適当にそんなことを言ったらパパの顔は、ぱっと晴れやかになった。
「そうだね。きっとそうだ。私の方でも情報を集めてみよう。定住先が決まったら連絡してくれるかい」
「うん。生活が落ち着いたら手紙送るよ」
「あぁ、首を長くして待ってるよ」
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、ヒイロ」
そんなこんなでパパや使用人のみんなに見送られ、やっとボクはレッドグレイヴ邸を離れることが出来た。
理由は単純、ボクの天職が王家が忌み嫌っている『盗賊』だったから。そりゃ領主としては廃嫡して追放するしかないよねって感じなんだけど、パパはなかなか納得してくれなかった。
過保護が過ぎるパパは、王命に背いてボクをひっそり匿おうとしていたけれど、王都から密かに派遣されていた監察官にあっさりバレた。パパは抵抗を試みたけれど、騎士団を領都に差し向けられそうになり、泣く泣く諦めていた。
その後、滂沱の涙を流しながらパパは、ボクの廃嫡手続きの書類にサインさせられていた。
そんなわけでボクはレッドグレイヴ家の人間ではなくなった。
ただパパも図太いもので、廃嫡されたボクを一個人として支援することは問題ないはずだ。と勝手な独自解釈を展開した。
まずは生活資金として毎年金貨30枚の給付に、空間拡張の魔術が施されたパパお手製のウエストポーチに、身分証として初級錬金術師の免許証が用意された。
ボクは幼い頃から魔術師となるべく教育されていたので、その一環としてポーション作製なども学んでいた。その過程で初級錬金術師程度の技能は有していたので、天職が錬金術師ではなくとも免許証の発行自体は特に問題なかった。
さらに錬金術師としての就職先も斡旋してくれたみたいだけど、天職が違えばポーションの作製自体は出来ても、効力は一段落ちたものしか作れないので、一生下働きさせられるのは容易に想像出来た。
それなら錬金術ギルドや商人ギルドに登録だけして、たまにポーションを持ち込むくらいでいいような気がした。
それか冒険者になって自分でポーション使っちゃうとかね。
そこまではまだいいんだけど、パパはボクに騎士や魔術師の護衛を付けようとまでしていた。
もちろんそれは断らせてもらった。
他にも女の子のひとり旅は危険だから、変な男に目を付けられないようにと男装させられ、長かった髪は短く切り揃えられた。そのとき切った髪は遺髪でも扱うように、状態保存の付与魔術が施された鍵付きの小箱に入れられ保管されていた。
それでパパが満足してくれるならいいかと、諦めてその後も出来る限りの要求には応えていった。
そんなこんなで1週間近くパパのわがままに付き合って、やっと領都から出奔する日を迎えた。
隣の領まで馬車を出してくれようとしたけど、どう考えても悪目立ちしかしない。なので自分で乗合馬車の手配するからとお断りさせてもらった。
別れを渋るパパに別れを告げる。完全に涙目のパパをこのまま放置していくのも考えものだったので、希望を持たせるように、ひとこと残すことにした。
「ダンジョンから天職を変えることが出来るアイテムが出ることあるらしいから。それ見つけたら一度帰ってくるよ」
「本当かい?」
「本当だよ。ボクの盗賊としてのユニークスキル【トレジャーハント】って、ダンジョンでのアイテム入手率が他の天職より高くなるらしいから、そのアイテムを手に入れる可能性はなくはないんじゃないかな。それで天職が盗賊でなくなれば廃嫡取り消しはされないまでも、領都に戻るくらいは許してもらえるかも」
たぶん無理だろうけど、適当にそんなことを言ったらパパの顔は、ぱっと晴れやかになった。
「そうだね。きっとそうだ。私の方でも情報を集めてみよう。定住先が決まったら連絡してくれるかい」
「うん。生活が落ち着いたら手紙送るよ」
「あぁ、首を長くして待ってるよ」
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、ヒイロ」
そんなこんなでパパや使用人のみんなに見送られ、やっとボクはレッドグレイヴ邸を離れることが出来た。
10
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる