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第11話

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「え~?今日、野牛さん休みなん?」
一番早く出勤してくる準社員の寒子が早朝品出しが遅れている現場を見て叫ぶ。
「高津さん、野牛さん、どうしたん?」
「この前、僕の休みの日に代わりに野牛さんに出てもらったんやけどね、牛乳しか出来ない野牛さんに、パンパーンが、高津さんの代わりに出勤したんなら高津さんの担当のところやってくれって言われたらしいんよ。やったことないのわかっててね。それで野牛さんがへそ曲げて、自分が休みたい日の代わりの人探すのやめたみたいやで。」

シルバー世代ばかりの早朝品出しでは、仕事できる、出来ないの前に、意固地で融通の聞かない、おまけに目や指などが満足に使えない、はたまた立ってる時間が長いと「椅子に座って」でないと作業が続けられないといったシルバー世代が抱える体の不具合が問題になる。パンパーンは中でも最年長で、おそらくそのすべての問題を抱えている。
守備範囲が狭い分、その中に誰も入れたがらない。
だから野牛さんが自分のテリトリーに入ってくるのを快く思っていない。何かにつけイチャモンをつけるのだ。極論的にはこの職場から消えてくれと願っている。

どの職場でもそうだが、自分の仕事を取られることを良しとしないもので、若い人は余裕もあり何でもできるからかんたんに自分の持ち場を開け放つが、シルバー世代ではそうはいかない。やっと掴んだ、もう新たな仕事など巡ってくることなどありえないと思うと、今この仕事は誰にも渡さない、っとなるのは致し方ないことだ。パンパーンに関してはまさにそういう状況に違いない。

寒子は、なんでパンパーンはそんなこと言うん?と
高津に言ってきたが高津は「本人に言って」と一蹴した。言いにくいからと本人に直接言わないことが問題の解決を先延ばしする。喧嘩になっても構わない。いうべき相手に直接言うことが仕事上の問題解決には必須である。あっちで言いこっちで言ってる間に相手も言い訳を考える。言うなら本人にすぐにというのが高津が長年のサラリーマン生活で養ってきた常識だ。

寒子はここの職場では良く出来ると重要ポストに抜擢されてるのだがまだまだである。
結局パンパーン本人に何も言うことはなく、結果的に何も解決できずに終わった。
高津はシルバーの大御所といい、中堅のやり手と言われている寒子といい、この職場に抱える問題の核心を見たように思えた。
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