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第10話
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現代社会では60歳から上のいわゆるシニア世代がアルバイト労働者として仕事を求めるのが常となっている。警備、清掃、飲食業が主な就職先となるのだが、大体において今までの人生で培った経験を活かして新たな職場をさがす。
中にはそうでない者もいて、そういう者は必ずと言っていいほどなれない仕事に、またその職場の心無いいじめにより短期間でやめていく。
ゴンさんは九州出身で、30年ほど前に和歌山に出てきたらしいが、今までどこでどんな仕事をしてきたのか謎の人物である。
仕事中の会話はなくわからないことを聞くときだけぼそっと、少し喋りにくそうに話す。
体型はずんぐりむっくりといった感じで話す言葉のトーンと相まって独特な雰囲気を醸し出していた。
そんなゴンさんを見て、何にでも突っ込みたがるエゴバが、「高津さん、あの人一人もん?どこに住んでんの?よる11時に終わってから歩いてY駅まで行って電車で帰るらしいけど車の免許持ってないんかなあ?」とか、「九州から出てきたんやろ?どんな仕事やってたんやろなあ、もう年金もらってるんやろか?」などと聞いてくる。
高津が、「知らん。個人的なことは聞かんようにしてるからね」というとそれ以上ゴンさんのことを根掘り葉掘り聞いても無駄と思ったのか高津から離れていった。
人は人の幸福を心から喜ぶことはないが、人の不幸を聞いて安心することはできる。エゴバはゴンさんが見るからに何か事情がありそうなのを探ってその不幸を自分の生活の安堵感にしたかったのだ。所詮人間はそんなものなのだ。
高津から突き放された形になったエゴバはまだ仕事になれないゴンさんにああしろこうしろと口うるさく言い始めた。ゴンさんは言われるがままに従ったが言葉を発しては答えず、それが高津には、ゴンさんのエゴバに対するささやかな抵抗と映った。
しばらくそうしたやり取りが続いたが一向に収まる気配がないのを見て高津は、「エゴバ、もうええ加減にしたれや、しつこいぞあんた」と言った。「そやけど言わんとちゃんとせんのやから言わんとしかたないやろ」とエゴバ。
「あんたなあ、そうやっていじめて今まで何人辞めさせてきたんや。あんたのせいで人生の一時期をぶっ壊された人間が何人いると思ってるんや。人を不幸に落とすんがそんなに楽しいか?」高津はついに声を荒げながらエゴバに詰め寄った。
周りの人間が3人の様子を横目で見ながら次に起きる高津の行動を半ば期待しながら息を潜めた。
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