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#47-2騎士団のお出ましでして
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ジルヴァ団長。
いきなり騎士団トップのご登場とは光栄の至り。
皮肉に口角を上げたつもりだったが僅かにひくつくだけだった。
「竜の捕獲に成功。討伐命令は遂行された。これより騎士団に帰還せよ、カリス」
ぞんざいで有無を言わさぬ声音にムッとする。
騎士団の人形というからには、そりゃ無機物扱いなんだろう。騎士団所有の魔道具だものな。
理解はできるが、納得はできない。
唇を動かそうとするも、空気がひゅうひゅうと漏れるばかりで言葉にならず、ただ錆の味がするだけに終わった。
あまりの衝撃で熱いとしか感じなかった痛みが遅れて、じわじわと沸き上がってくる。
体の内側でバーベキューでもしてんのかってくらい、焼けつくような疼痛。
ぐらつく頭から、開いた胸の風穴から、血液が地面に向かって落ちていく。
震える手で額を貫通する刃に触れようとして、背後から咎めるように柄を押し込まれる。
背中に硬くて縦長の異物が触れている……あれ、これ入っちゃいけない剣の柄の部分まで入ってない?
すいませーん。入れすぎ。入れすぎですよー。
「カリス、返事は?」
「………………それ、は」
ジルヴァ団長だとかいう居丈高な奴にカリスが言い淀む。
カリスの顔が見たいのに、見られない。
視覚も聴覚もぼやける中、聞き覚えのある甲高い声が届いた。
「何やってんだよ、お前らーっ」
「そのひと放してー!」
色しかわからない世界に、子供たちの小さなシルエットが入り込む。
声を発したのはカザリ少年とリコかな。他にも小さなシルエットがざわめいているので魔力のない子供たちが集まってきているのだろう。
「邪魔をするな。こいつは村を破壊した竜なんだぞ」
「知ってるよ! でも、その竜のおかげで俺たち村に受け入れてもらったんだ」
「それに暴れたことは、すごく反省してるよ。だからもう放してあげて。刺すなんてやりすぎだよ」
「そんなに悪い竜じゃないんだってば」
「お願い!」
「離れろ魔力なし!」
「やだーっ!」
ぼやけた視界だとよくわからないが、とにかく子供たちが騎士たちに抗議をしてくれているらしい。
子供たちには迷惑をかけっぱなしだな。俺のせいで大層怖い思いをしただろうに。
彼らは気絶した村民たちをメインストリートに集めて運んでくれていた。
もちろんその折に謝罪して感謝の意を伝えている。ふるふると震えながらも情に厚い彼らは謝罪を受け入れてくれた。
こうして抗議してくれる気持ちはとてもありがたい。
が、この相手に対する抗議はかなりリスキーだ。
「お前たち、なにやってる!」
この声は村長の上の息子・トイか。
立端のある大きなシルエットが覆い被さるように子供たちを騎士から引き剥がす。
「なんでだよ、もうあのひと謝ったじゃん!」
「そうだよ。壊した村だってこんなに綺麗にしてくれたのに!」
「なんで皆、助けてあげないの」
「意気地無し!」
「もとはといえば、あのひとを酒瓶なんかで殴るから」
「いいかお前ら、この状況で道理は関係ねえ。相手は兵士じゃない。騎士なんだぞ!」
普段は穏やかな物言いのトイによる一喝に、子供たちの戸惑う声が聞こえる。
兵士と騎士の違いはなにか。その答えは実に単純だ。
「騎士と名乗れるのは貴族だけだ。貴族に楯突いたら全員、死刑だぞ!」
騒がしかった子供たちが、絶句した。
いきなり騎士団トップのご登場とは光栄の至り。
皮肉に口角を上げたつもりだったが僅かにひくつくだけだった。
「竜の捕獲に成功。討伐命令は遂行された。これより騎士団に帰還せよ、カリス」
ぞんざいで有無を言わさぬ声音にムッとする。
騎士団の人形というからには、そりゃ無機物扱いなんだろう。騎士団所有の魔道具だものな。
理解はできるが、納得はできない。
唇を動かそうとするも、空気がひゅうひゅうと漏れるばかりで言葉にならず、ただ錆の味がするだけに終わった。
あまりの衝撃で熱いとしか感じなかった痛みが遅れて、じわじわと沸き上がってくる。
体の内側でバーベキューでもしてんのかってくらい、焼けつくような疼痛。
ぐらつく頭から、開いた胸の風穴から、血液が地面に向かって落ちていく。
震える手で額を貫通する刃に触れようとして、背後から咎めるように柄を押し込まれる。
背中に硬くて縦長の異物が触れている……あれ、これ入っちゃいけない剣の柄の部分まで入ってない?
すいませーん。入れすぎ。入れすぎですよー。
「カリス、返事は?」
「………………それ、は」
ジルヴァ団長だとかいう居丈高な奴にカリスが言い淀む。
カリスの顔が見たいのに、見られない。
視覚も聴覚もぼやける中、聞き覚えのある甲高い声が届いた。
「何やってんだよ、お前らーっ」
「そのひと放してー!」
色しかわからない世界に、子供たちの小さなシルエットが入り込む。
声を発したのはカザリ少年とリコかな。他にも小さなシルエットがざわめいているので魔力のない子供たちが集まってきているのだろう。
「邪魔をするな。こいつは村を破壊した竜なんだぞ」
「知ってるよ! でも、その竜のおかげで俺たち村に受け入れてもらったんだ」
「それに暴れたことは、すごく反省してるよ。だからもう放してあげて。刺すなんてやりすぎだよ」
「そんなに悪い竜じゃないんだってば」
「お願い!」
「離れろ魔力なし!」
「やだーっ!」
ぼやけた視界だとよくわからないが、とにかく子供たちが騎士たちに抗議をしてくれているらしい。
子供たちには迷惑をかけっぱなしだな。俺のせいで大層怖い思いをしただろうに。
彼らは気絶した村民たちをメインストリートに集めて運んでくれていた。
もちろんその折に謝罪して感謝の意を伝えている。ふるふると震えながらも情に厚い彼らは謝罪を受け入れてくれた。
こうして抗議してくれる気持ちはとてもありがたい。
が、この相手に対する抗議はかなりリスキーだ。
「お前たち、なにやってる!」
この声は村長の上の息子・トイか。
立端のある大きなシルエットが覆い被さるように子供たちを騎士から引き剥がす。
「なんでだよ、もうあのひと謝ったじゃん!」
「そうだよ。壊した村だってこんなに綺麗にしてくれたのに!」
「なんで皆、助けてあげないの」
「意気地無し!」
「もとはといえば、あのひとを酒瓶なんかで殴るから」
「いいかお前ら、この状況で道理は関係ねえ。相手は兵士じゃない。騎士なんだぞ!」
普段は穏やかな物言いのトイによる一喝に、子供たちの戸惑う声が聞こえる。
兵士と騎士の違いはなにか。その答えは実に単純だ。
「騎士と名乗れるのは貴族だけだ。貴族に楯突いたら全員、死刑だぞ!」
騒がしかった子供たちが、絶句した。
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