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#46-1満ちる饗宴が剣の結末
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<カリス>
放たれた閃光で目が眩む。
全てが純白に支配された世界を、デルタの掛け声が貫通した。
「リデコレ~イト!」
直後。
閃光が晴れると同時に、賑やかなリズムの合奏が周囲の空気を一掃する。
メインストリートの地面には純白のカーペットが一面に敷かれていた。
デルタの掛け声による振動でカーペットの糸に伝う水滴が弾け、夜空に舞い上がる。
暗がりの中、光の粒の煌めきはカリスのいる屋根の上にまで舞い散った。
「これは一体……」
あれだけ怒りに燃えていた群衆の目が変わっていく。
誰もがキラキラとした煌めきに魅了され、無数の光を瞳に映していた。
メインストリートの中央には、純白の指揮棒を右手に持つデルタが立っている。天に向かって高々と掲げた指揮棒を振り下ろすと、空中に銀糸の五線譜が生み出された。巻かれたリボンが引き出されるように五線譜が指揮棒の軌跡を残していく。
デルタが巧みに指揮棒と左手を振ると、アップテンポのオーケストラが彼の意図に追随した。
競り上がるような旋律でドラムとトランペットが出迎え、折り重なったヴァイオリンがリード。流麗なフルートが華を添える。時折、小気味の良いハンドベルの音色が挟まれ、遠くで鐘塔の大鐘が鳴り響いた。
「いーっ」
「いーいー」
「いー!」
デルタの手振りで数え切れないほど生み出された五線譜は、あっという間に村のそこかしこへ張り巡らされていった。その上を奏者の死霊たちが行進する。
純白の礼装を着用した 死霊たちが足踏みするたび辺りに光の粒が弾けていく。
村の誰もが口を開けて見入っていた。光と音の奔流に完全に呑まれている。
「まだまだ序の口、これより本領発揮。さあさあ皆さまお見逃しなく!」
曲調が一旦ゆるんだところでデルタが指揮棒を細かくかき混ぜるように振りだした。棒先で絡まった五線譜が純白の塊になっていく。塊が拳大になった所で、勢いよく指揮棒を上に引き上げ、弾き飛ばした。
天高く打ちあがった光の塊。ドーム状に張られた竜気にぶつかると、閃光を上げて烈しく破裂する。
メインストリートに自然と歓声が上がった。
光の粒を散らしながら五線譜の花火がカザ村全域に降り注ぐ。
やがて五線譜が倒壊した家屋に落ちきると、銀糸が家屋の亀裂に沿って走った。
「嘘だろ……」
崩れた屋根、壁、瓦礫。すべてが夥しい数の銀糸によって持ち上がっていく。
その様子を見た人間たちが信じられないとばかりにざわめいた。
「リフォームのご要望がありましたら今のうちに! 竜の力による補強はピカイチですよ!」
指揮棒を振り続けるデルタへ人々が殺到するのに、そう時間はかからなかった。
『人間とは……まことに脆弱であるな。色々な意味で』
少し引き気味の【賭しきもの】が、ため息交じりで呟く。
我先にと目を輝かせる群衆に、今度はカリスの方が否定を告げられなくなっていた。
放たれた閃光で目が眩む。
全てが純白に支配された世界を、デルタの掛け声が貫通した。
「リデコレ~イト!」
直後。
閃光が晴れると同時に、賑やかなリズムの合奏が周囲の空気を一掃する。
メインストリートの地面には純白のカーペットが一面に敷かれていた。
デルタの掛け声による振動でカーペットの糸に伝う水滴が弾け、夜空に舞い上がる。
暗がりの中、光の粒の煌めきはカリスのいる屋根の上にまで舞い散った。
「これは一体……」
あれだけ怒りに燃えていた群衆の目が変わっていく。
誰もがキラキラとした煌めきに魅了され、無数の光を瞳に映していた。
メインストリートの中央には、純白の指揮棒を右手に持つデルタが立っている。天に向かって高々と掲げた指揮棒を振り下ろすと、空中に銀糸の五線譜が生み出された。巻かれたリボンが引き出されるように五線譜が指揮棒の軌跡を残していく。
デルタが巧みに指揮棒と左手を振ると、アップテンポのオーケストラが彼の意図に追随した。
競り上がるような旋律でドラムとトランペットが出迎え、折り重なったヴァイオリンがリード。流麗なフルートが華を添える。時折、小気味の良いハンドベルの音色が挟まれ、遠くで鐘塔の大鐘が鳴り響いた。
「いーっ」
「いーいー」
「いー!」
デルタの手振りで数え切れないほど生み出された五線譜は、あっという間に村のそこかしこへ張り巡らされていった。その上を奏者の死霊たちが行進する。
純白の礼装を着用した 死霊たちが足踏みするたび辺りに光の粒が弾けていく。
村の誰もが口を開けて見入っていた。光と音の奔流に完全に呑まれている。
「まだまだ序の口、これより本領発揮。さあさあ皆さまお見逃しなく!」
曲調が一旦ゆるんだところでデルタが指揮棒を細かくかき混ぜるように振りだした。棒先で絡まった五線譜が純白の塊になっていく。塊が拳大になった所で、勢いよく指揮棒を上に引き上げ、弾き飛ばした。
天高く打ちあがった光の塊。ドーム状に張られた竜気にぶつかると、閃光を上げて烈しく破裂する。
メインストリートに自然と歓声が上がった。
光の粒を散らしながら五線譜の花火がカザ村全域に降り注ぐ。
やがて五線譜が倒壊した家屋に落ちきると、銀糸が家屋の亀裂に沿って走った。
「嘘だろ……」
崩れた屋根、壁、瓦礫。すべてが夥しい数の銀糸によって持ち上がっていく。
その様子を見た人間たちが信じられないとばかりにざわめいた。
「リフォームのご要望がありましたら今のうちに! 竜の力による補強はピカイチですよ!」
指揮棒を振り続けるデルタへ人々が殺到するのに、そう時間はかからなかった。
『人間とは……まことに脆弱であるな。色々な意味で』
少し引き気味の【賭しきもの】が、ため息交じりで呟く。
我先にと目を輝かせる群衆に、今度はカリスの方が否定を告げられなくなっていた。
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