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#37-3とんだ罠につきまして
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「いぃ~……」
『やれ、困った死霊である。また 手土産でも用意して出直すがよかろう 』
え、嘘でしょ。こんな振り向きたくないことある?
あまりの衝撃でジョッキを握りつぶす一歩手前だったぞ!
某猫型ロボットの今はいなかったことにされてるアラビアンな親友みたいな語尾しやがって。こんな独特のしゃべり方、確実に一柱しか存在しない。
というか普通に念話使うな【賭しきもの】!
というか、なんで? なんでここにいるの? いつの間についてきたの?
ダンジョン出がけの時も挨拶くらいしとこうと思って地面バンバンしても案内スライム探しても地下への穴開けてくれなかった癖に、なぜわざわざこんな所でひょっこり出て来るんだ。
「なんだい、この妙な感じでしゃべる肉の切り身でできた人形は」
「いー」
「いーいー」
「い~」
「アンタらの方便ほんと変わってるわねえ。何言ってるのか全然分かんないわ。それで本当に伝わってんのかしら」
パレードのフロートの中にいたみたいって、なにそれ全然気づかなかった……!
聞いた本人である女主人には死霊の言語は通じなかっただろうが、お陰でこっちは把握できた。
要点は掴めたので現状への経緯は逆算できる。
あの花吹雪はフロートの花だ。
骸骨フロートの中に忍び込んでいた【賭しきもの】は、骨魔ちゃんと骨小僧が花を回収する際に出てきてくっついてきたのだろう。
そういや今日は制裁が解かれる日だったか。
そこまで分かったはいいが、さてどうする。
こうなってくると打合せも糞もないこの現状では【賭しきもの】の機嫌次第で、どんな状況にも転び得る。
【賭しきもの】は身に纏う肉の量が少なくなっただけで力が弱くなった訳じゃない。機嫌を損なえば最悪、カザ村に生肉パーティーが開催されてしまうだろう。
「ライちゃんさー、お仲間みんなその黒い眼帯してるけど何か意味あるのかい?」
「おお、これか? これはな。明るい場所から暗い場所に行くとなにも見えねえだろ? こいつをして暗闇に目を慣らしておくと奇襲なんかで灯りを消されても、眼帯をずらすことで対応できるようになんのさ」
「へえー、生活の知恵だね」
無難な話を続けながら今世最大の筋力を総動員して綺麗な笑顔を保ち続ける。唸れ俺の口角挙筋。死んでも笑みを絶やすな。できる、できる。アイ・キャン・スマイル!
隣のカリスは遠慮なく背後をガン見しているが、ここで俺まで振りかえればライノルドやクサビエも気にしてしまうだろう。
この酒場には村をうろついていた騎士の息がかかった人間が潜んでいる可能性もある。そんな中で無作為に竜が暴れれば、もう情報収集とか言ってる場合じゃない。今後、動きづらくなること必至。
いざとなれば俺が竜体とってトンズラすりゃいいんだろうが、ここまで上手く人里に溶け込んだのだ。できるだけ最後まで足掻いておきたい。俺の徳的にも。
幸い酒が入ってご機嫌な一味は、まだ【賭しきもの】の存在に気づいていないご様子。
なら【賭しきもの】だけに念話を飛ばし――
『女よ、人形呼ばわりとは無礼であるぞ。我輩は北の山より出でし高貴なる竜【賭しきも』
「ちゅうもおおおおおおく!」
念話の隙すら与えてもらえなかった俺は内心血涙を流しながら、ジョッキ片手に長椅子に乗り上げた。
静まり返った店内の視線を一身に浴びているのを、ひしひしと肌で感じる。
「お、おう。どうしたデル坊」
「やかましい。テーブルに足をかけるな」
「…………」
ライノルド、クサビエ、カリスによる三者三様の反応にもめげず、ニコッとした笑顔を振り撒く。
致し方なし。ここはいつものゴリ押しと参りましょう。
パチン! と指を鳴らす音が高らかに響き渡った。
『やれ、困った死霊である。また 手土産でも用意して出直すがよかろう 』
え、嘘でしょ。こんな振り向きたくないことある?
あまりの衝撃でジョッキを握りつぶす一歩手前だったぞ!
某猫型ロボットの今はいなかったことにされてるアラビアンな親友みたいな語尾しやがって。こんな独特のしゃべり方、確実に一柱しか存在しない。
というか普通に念話使うな【賭しきもの】!
というか、なんで? なんでここにいるの? いつの間についてきたの?
ダンジョン出がけの時も挨拶くらいしとこうと思って地面バンバンしても案内スライム探しても地下への穴開けてくれなかった癖に、なぜわざわざこんな所でひょっこり出て来るんだ。
「なんだい、この妙な感じでしゃべる肉の切り身でできた人形は」
「いー」
「いーいー」
「い~」
「アンタらの方便ほんと変わってるわねえ。何言ってるのか全然分かんないわ。それで本当に伝わってんのかしら」
パレードのフロートの中にいたみたいって、なにそれ全然気づかなかった……!
聞いた本人である女主人には死霊の言語は通じなかっただろうが、お陰でこっちは把握できた。
要点は掴めたので現状への経緯は逆算できる。
あの花吹雪はフロートの花だ。
骸骨フロートの中に忍び込んでいた【賭しきもの】は、骨魔ちゃんと骨小僧が花を回収する際に出てきてくっついてきたのだろう。
そういや今日は制裁が解かれる日だったか。
そこまで分かったはいいが、さてどうする。
こうなってくると打合せも糞もないこの現状では【賭しきもの】の機嫌次第で、どんな状況にも転び得る。
【賭しきもの】は身に纏う肉の量が少なくなっただけで力が弱くなった訳じゃない。機嫌を損なえば最悪、カザ村に生肉パーティーが開催されてしまうだろう。
「ライちゃんさー、お仲間みんなその黒い眼帯してるけど何か意味あるのかい?」
「おお、これか? これはな。明るい場所から暗い場所に行くとなにも見えねえだろ? こいつをして暗闇に目を慣らしておくと奇襲なんかで灯りを消されても、眼帯をずらすことで対応できるようになんのさ」
「へえー、生活の知恵だね」
無難な話を続けながら今世最大の筋力を総動員して綺麗な笑顔を保ち続ける。唸れ俺の口角挙筋。死んでも笑みを絶やすな。できる、できる。アイ・キャン・スマイル!
隣のカリスは遠慮なく背後をガン見しているが、ここで俺まで振りかえればライノルドやクサビエも気にしてしまうだろう。
この酒場には村をうろついていた騎士の息がかかった人間が潜んでいる可能性もある。そんな中で無作為に竜が暴れれば、もう情報収集とか言ってる場合じゃない。今後、動きづらくなること必至。
いざとなれば俺が竜体とってトンズラすりゃいいんだろうが、ここまで上手く人里に溶け込んだのだ。できるだけ最後まで足掻いておきたい。俺の徳的にも。
幸い酒が入ってご機嫌な一味は、まだ【賭しきもの】の存在に気づいていないご様子。
なら【賭しきもの】だけに念話を飛ばし――
『女よ、人形呼ばわりとは無礼であるぞ。我輩は北の山より出でし高貴なる竜【賭しきも』
「ちゅうもおおおおおおく!」
念話の隙すら与えてもらえなかった俺は内心血涙を流しながら、ジョッキ片手に長椅子に乗り上げた。
静まり返った店内の視線を一身に浴びているのを、ひしひしと肌で感じる。
「お、おう。どうしたデル坊」
「やかましい。テーブルに足をかけるな」
「…………」
ライノルド、クサビエ、カリスによる三者三様の反応にもめげず、ニコッとした笑顔を振り撒く。
致し方なし。ここはいつものゴリ押しと参りましょう。
パチン! と指を鳴らす音が高らかに響き渡った。
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