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#36ワインをかぶりまして
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沈んでいく夕陽をバックに、下半身を露出した男どもは村の警ら隊にしょっ引かれていった。
るーるーるるーとお決まりのBGMを脳内再生しながらも気にかかるのは、ただひとつ。
「パンツ履かせてあげないんだあ……」
前かがみ気味に縛られた両手で前を隠しながら連行されていく彼らをなんともいえない気持ちで見送ってやる。しょぼくれたケツのくぼみが、ちょっぴりシュール。
遠巻きに周囲の村民から放たれる、変態を見下す視線がこれまたきっつい。
「見せしめの意味もあります。村の者が出資者の連れにやらかしましたからね。これくらいはさせて頂きますよ」
のんびりした調子で苦笑を零すのは俺たちの監視としてつけられていた村長の息子さんだった。
彼の朴訥とした雰囲気とは裏腹な、他者を罰することに手慣れた様子をみるに、こういう事件沙汰はカザ村にはよくあることらしい。
カザリ少年を納得させるための参加型ゲリラパレードで場が盛り上がる中、慌てた様子でカリスが連れていかれたことを知らせてくれた彼には頭が上がらない。
初っ端から管理側に大枚はたいておいてよかった……本当によかった!
内心だらだらの冷や汗をかきつつ、ホッと胸をなでおろす。
海外の旅先で高額請求をされてぼったくられた、なんて苦々しく零す人間もいるが実は知らず知らずのうちにその金で自分の命が買えていたケースってのは案外あったりするものだ。
地元の人間しか知り得ない不文律というのは確実に存在する。それが治安のよろしくない地域なら尚更だ。特に現地のガイドや交通費なんかで出し渋ると最悪、骨すら回収されない事態も想定される。
身の安全が買えるならぼったくりなんぞ上等だ、というのが俺の旅先での心構えである。
「デルタ」
「ん、着終わった?」
「ああ」
竜気で接合しなおした納屋から服を整えたカリスが出てきた。
今しがた集団で襲われたとは思えぬほど冷静なカリスに、複雑な気持ちを抱えながら笑みを返す。
現場に踏み込み、カリスがあられもない姿で押さえつけられているのを見た時は、徳なぞかなぐり捨てて男どものちんぽ全員分切り落としてやろうかと血管破裂寸前ブチ切れ状態だったが、即座に脳内ロールモデル近藤くんを総動員してなんとか平和的にことを治めることができた。
頭を冷やすために時間稼ぎの茶番を繰り広げたのも功を奏したのだろう。
強引にカリスを押し倒していた彼らだが話を聞けば最初は本人に許可を得ていたようだし、何よりめちゃんこキュートでビューティフルなゴールデン・カリスにハートを撃ち抜かれてしまったが故の暴挙だとすれば多少は同情する。
いやしないけど。俺は無理に押し倒したりはしないけど。でももし俺の理性が蒸発するようなシチュエーションにでもなったりすれば明日はわが身な訳で。
お、おおお、おそろしい。理性と同時に徳まで蒸発してしまう。カリス、なんて罪な子。
そんな感じでぶるぶる身震いしている俺に、カリスがすーっと首を傾げる。
やめっ、やめなさい。的確に死ぬでしょうが俺のハートが。
「大丈夫かい? 門の外でテント張らせてもらったから、もう休めるよ」
「……?」
うーむ。カリスの首傾げが戻らない。
通常こんなことがあった直後は精神が疲弊して休息を欲するものだが、流石は人形。
無表情ながら「何故こんなことを問われているのか分からない」という疑問を全身から発しておられる。マジで何も気にしてません感がものすごい。
「えーと。俺これから夜の酒場に招待されてるんだけど、ついてくるかい? 先に休んでてもいいんだよ?」
あえて弱めに聞いてみる。
語気を強めに言うと確実にカリスは頷くからね。
ちょっぴりドキドキしながら答えを待つ。
カリスは数秒、考えた素振りを見せたあと――僅かに俯いた。
黄昏時の光が表情の変わらないカリスの頬にほんのりと色を差しこむ。交わっていた黄金の瞳が斜め下にずれると、純白のブーツがじゃりりと音を鳴らした。
どこか駄々をこねる子供のような仕草をしたカリスは最後に、消え入りそうな声で「……デルタといく」と拙く呟いた。
「…………」
「…………」
あ”あああ”ぁあああぁぁ”ぁあああああ”あ”あぁ”ぁあぁ”ああああ”あぁあぁ――――――ッッッ!!!!!
「うんうん。じゃあ一緒にいこっか~」
「ああ」
あ”あ”ッ!! あ”あ”ぁッ!! ん”あ”ああ”あぁああ”あああぁぁッッ!!!!!!!!!!!
「あ、その前に骨士くんたちを呼びに行かなきゃね」
「ん」
んあ”あ”ああぁ”ぁ”あああ”あ”ああぁああ”あ”ああ”~~~~~~ッッ!!!!!!!!!!!!
死ぬかと思った。危うくカリスに殺されるところだった俺です、ごきげんよう。
その後、無事カザリ少年の雇用に成功し、酒場までの道のりを案内してもらった俺は道中、翌日もガイドの予約を取り付けることができた。
もちろん完全に暗くなるまでにちゃんと帰すのは当然だ。酒場の前で手を振る俺とカリスと死霊の一行は微妙な顔つきをしつつ律儀に手を振り返すカザリ少年を見送った。
しかして人生とは往々にして上手くいかないのが常である。
なぜなら現在、本当の意味で殺される危機に陥っているのだから。
「おい、余裕だな兄ちゃん」
「いや今日は超展開が続きすぎて俺もそろそろ本気で焦燥感を覚えている頃ですよ」
四方八方からバラエティーに富んだ刃物を首筋につきつけられているこの状況、俺もびっくりだよ。
呼ばれて飛びでてなんとかな感じに酒場の扉を開いたまでは良かった。
ところがどっこい、なんと本日の酒場は随分物々しい男たちでほぼ貸し切り状態だったのである。
どうやらタイミング悪く山賊だか盗賊だかの悪党グループが揃ってご来店したようで、いつもたむろしているはずの常連は逃げてしまったご様子。社会って厳しいよね。
「何者だ、てめえ」
「村の奴らが妙に浮き足だってんのはお前のせいか?」
「後ろの連中は死霊じゃねえか」
全員が全員、お揃いの真っ黒な眼帯を巻いたご一行は、ついさっきカザ村に入ってきたらしく、俺の興したパレードを見ていないらしい。
圧迫面接の五十倍増しで圧迫感がある。
ちなみに死霊の諸君は余りこっちを注視していない。
というのも酒場に入店早々、骨士くんが酒場の女主人に一目惚れしたのだ。なかなかに恰幅のいい体型をした女主人を目にした途端、顎の骨をごとりと落とした骨士くんはイ音の声を上げながら一旦外に出たかと思うと、真っ白な花を手に舞い戻ってきて今に至る。
他の死霊たちも降って湧いた仲間の恋を応援するのに必死で俺の状況なんて見てもいない。骨魔ちゃんと骨小僧も、女主人に跪いて花を差し出す骨士くんの背後でイーイー言いながら花吹雪を散らしている。
まあな。こっち竜だからな。人間相手に俺自身がヤバい状況になる訳でもないわな。隣のカリスもノーリアクション芸かましてるし。いやこれはいつものことだった。
そういやあの白い花、昼のパレードで使ったフロートの花じゃないかな……と考えたところで意識を引き戻す。
視界の端で片目に絶対眼帯つけるマンの一人がカリスに向かって腕を伸ばしていた。
「ほお。野郎だがいい美人連れてんじゃねえか」
「すいまっせ~ん。この子お触りNGなんですよ~」
食い気味に遮りながら身体でカリスをブロックすると、周囲の男たちが一気に殺気立った。
なんとなく場の空気的に両手を上げてしまう。刑事ドラマでよく見るやつだこれ。逮捕される側に手上げさせられてるけど。
「おう、坊主。いい度胸してんねえ」
一歩踏み出てきたのは周囲よりいっとう筋骨隆々の、囲いお髭がチャームポイントな男だった。
他のメンバーの反応から見るに、この男がリーダー格だろう。なら心証好くしておいて損はない。
「これはお初にお目にかかる。俺はデルタといごぶべコポォ」
げらげらと周囲が笑い声を上げる中、リーダー格に頭上から赤ワインを傾けられて視界が赤紫に染まる。うーん、この赤ワインおいしい。
眉間にうっすら縦皺を寄せるカリスを制し、頭三つ以上高い悪人面を見上げて俺は笑みを浮かべた。
「俺の名はデルタという。君の名を聞いていいかな?」
「おうおう、よろしくなあ坊主。俺はライノルドってんだ」
なるほど。これ見よがしに岩のような拳を見せつけるリーダー格の男はライノルドという名前のようだ。
高みから見下してくる視線を正面から受け止めた俺は、口許に伝うワインをひと舐めして笑みを深める。
「ライノルド……」
十分後。
「ライ! ララライ! ラララ!」
「ライ縦、ライ横、ライ斜め的な!?」
「ライ! ララライ! ラララ!」
「ライ麦畑で隠れてオナニー!!」
奥ゆかしいコールと手拍子に合わせて、いい飲みっぷりを見せたライノルドが空の木製ジョッキを掲げる。
いええええええええええい! と濁音混じりの雄叫びが酒場に充満した。もちろんその雄叫びにはライノルドのお仲間一行に混じって、赤ワインの洗礼を浴びた俺も意気揚々と参加している。
「ライちゃん良いね~~!」
「デル坊ノってっかー!? フゥーッ!」
ワインの飛沫を上げながら、テンション高めに互いのジョッキをぶつけあう。
数多の宴会接待コンパを乗り越えたこの俺が、多少悪ぶったところで酒の入った男どもと意気投合するなぞ赤子の手をひねるようなものだ。
「ワ~ッハッハッハッハー!!」
「景気いいなあデル坊ー!!」
壁際で腕を組んで佇むカリスが形容しがたい視線を送っている気がするが、たぶん気のせいだと思う。うん。
※今回のエピソードでストックが切れたので本日から更新頻度が下がります。
現在、誠心誠意執筆中ですので次回までのんびりお待ち頂けると嬉しいです。
るーるーるるーとお決まりのBGMを脳内再生しながらも気にかかるのは、ただひとつ。
「パンツ履かせてあげないんだあ……」
前かがみ気味に縛られた両手で前を隠しながら連行されていく彼らをなんともいえない気持ちで見送ってやる。しょぼくれたケツのくぼみが、ちょっぴりシュール。
遠巻きに周囲の村民から放たれる、変態を見下す視線がこれまたきっつい。
「見せしめの意味もあります。村の者が出資者の連れにやらかしましたからね。これくらいはさせて頂きますよ」
のんびりした調子で苦笑を零すのは俺たちの監視としてつけられていた村長の息子さんだった。
彼の朴訥とした雰囲気とは裏腹な、他者を罰することに手慣れた様子をみるに、こういう事件沙汰はカザ村にはよくあることらしい。
カザリ少年を納得させるための参加型ゲリラパレードで場が盛り上がる中、慌てた様子でカリスが連れていかれたことを知らせてくれた彼には頭が上がらない。
初っ端から管理側に大枚はたいておいてよかった……本当によかった!
内心だらだらの冷や汗をかきつつ、ホッと胸をなでおろす。
海外の旅先で高額請求をされてぼったくられた、なんて苦々しく零す人間もいるが実は知らず知らずのうちにその金で自分の命が買えていたケースってのは案外あったりするものだ。
地元の人間しか知り得ない不文律というのは確実に存在する。それが治安のよろしくない地域なら尚更だ。特に現地のガイドや交通費なんかで出し渋ると最悪、骨すら回収されない事態も想定される。
身の安全が買えるならぼったくりなんぞ上等だ、というのが俺の旅先での心構えである。
「デルタ」
「ん、着終わった?」
「ああ」
竜気で接合しなおした納屋から服を整えたカリスが出てきた。
今しがた集団で襲われたとは思えぬほど冷静なカリスに、複雑な気持ちを抱えながら笑みを返す。
現場に踏み込み、カリスがあられもない姿で押さえつけられているのを見た時は、徳なぞかなぐり捨てて男どものちんぽ全員分切り落としてやろうかと血管破裂寸前ブチ切れ状態だったが、即座に脳内ロールモデル近藤くんを総動員してなんとか平和的にことを治めることができた。
頭を冷やすために時間稼ぎの茶番を繰り広げたのも功を奏したのだろう。
強引にカリスを押し倒していた彼らだが話を聞けば最初は本人に許可を得ていたようだし、何よりめちゃんこキュートでビューティフルなゴールデン・カリスにハートを撃ち抜かれてしまったが故の暴挙だとすれば多少は同情する。
いやしないけど。俺は無理に押し倒したりはしないけど。でももし俺の理性が蒸発するようなシチュエーションにでもなったりすれば明日はわが身な訳で。
お、おおお、おそろしい。理性と同時に徳まで蒸発してしまう。カリス、なんて罪な子。
そんな感じでぶるぶる身震いしている俺に、カリスがすーっと首を傾げる。
やめっ、やめなさい。的確に死ぬでしょうが俺のハートが。
「大丈夫かい? 門の外でテント張らせてもらったから、もう休めるよ」
「……?」
うーむ。カリスの首傾げが戻らない。
通常こんなことがあった直後は精神が疲弊して休息を欲するものだが、流石は人形。
無表情ながら「何故こんなことを問われているのか分からない」という疑問を全身から発しておられる。マジで何も気にしてません感がものすごい。
「えーと。俺これから夜の酒場に招待されてるんだけど、ついてくるかい? 先に休んでてもいいんだよ?」
あえて弱めに聞いてみる。
語気を強めに言うと確実にカリスは頷くからね。
ちょっぴりドキドキしながら答えを待つ。
カリスは数秒、考えた素振りを見せたあと――僅かに俯いた。
黄昏時の光が表情の変わらないカリスの頬にほんのりと色を差しこむ。交わっていた黄金の瞳が斜め下にずれると、純白のブーツがじゃりりと音を鳴らした。
どこか駄々をこねる子供のような仕草をしたカリスは最後に、消え入りそうな声で「……デルタといく」と拙く呟いた。
「…………」
「…………」
あ”あああ”ぁあああぁぁ”ぁあああああ”あ”あぁ”ぁあぁ”ああああ”あぁあぁ――――――ッッッ!!!!!
「うんうん。じゃあ一緒にいこっか~」
「ああ」
あ”あ”ッ!! あ”あ”ぁッ!! ん”あ”ああ”あぁああ”あああぁぁッッ!!!!!!!!!!!
「あ、その前に骨士くんたちを呼びに行かなきゃね」
「ん」
んあ”あ”ああぁ”ぁ”あああ”あ”ああぁああ”あ”ああ”~~~~~~ッッ!!!!!!!!!!!!
死ぬかと思った。危うくカリスに殺されるところだった俺です、ごきげんよう。
その後、無事カザリ少年の雇用に成功し、酒場までの道のりを案内してもらった俺は道中、翌日もガイドの予約を取り付けることができた。
もちろん完全に暗くなるまでにちゃんと帰すのは当然だ。酒場の前で手を振る俺とカリスと死霊の一行は微妙な顔つきをしつつ律儀に手を振り返すカザリ少年を見送った。
しかして人生とは往々にして上手くいかないのが常である。
なぜなら現在、本当の意味で殺される危機に陥っているのだから。
「おい、余裕だな兄ちゃん」
「いや今日は超展開が続きすぎて俺もそろそろ本気で焦燥感を覚えている頃ですよ」
四方八方からバラエティーに富んだ刃物を首筋につきつけられているこの状況、俺もびっくりだよ。
呼ばれて飛びでてなんとかな感じに酒場の扉を開いたまでは良かった。
ところがどっこい、なんと本日の酒場は随分物々しい男たちでほぼ貸し切り状態だったのである。
どうやらタイミング悪く山賊だか盗賊だかの悪党グループが揃ってご来店したようで、いつもたむろしているはずの常連は逃げてしまったご様子。社会って厳しいよね。
「何者だ、てめえ」
「村の奴らが妙に浮き足だってんのはお前のせいか?」
「後ろの連中は死霊じゃねえか」
全員が全員、お揃いの真っ黒な眼帯を巻いたご一行は、ついさっきカザ村に入ってきたらしく、俺の興したパレードを見ていないらしい。
圧迫面接の五十倍増しで圧迫感がある。
ちなみに死霊の諸君は余りこっちを注視していない。
というのも酒場に入店早々、骨士くんが酒場の女主人に一目惚れしたのだ。なかなかに恰幅のいい体型をした女主人を目にした途端、顎の骨をごとりと落とした骨士くんはイ音の声を上げながら一旦外に出たかと思うと、真っ白な花を手に舞い戻ってきて今に至る。
他の死霊たちも降って湧いた仲間の恋を応援するのに必死で俺の状況なんて見てもいない。骨魔ちゃんと骨小僧も、女主人に跪いて花を差し出す骨士くんの背後でイーイー言いながら花吹雪を散らしている。
まあな。こっち竜だからな。人間相手に俺自身がヤバい状況になる訳でもないわな。隣のカリスもノーリアクション芸かましてるし。いやこれはいつものことだった。
そういやあの白い花、昼のパレードで使ったフロートの花じゃないかな……と考えたところで意識を引き戻す。
視界の端で片目に絶対眼帯つけるマンの一人がカリスに向かって腕を伸ばしていた。
「ほお。野郎だがいい美人連れてんじゃねえか」
「すいまっせ~ん。この子お触りNGなんですよ~」
食い気味に遮りながら身体でカリスをブロックすると、周囲の男たちが一気に殺気立った。
なんとなく場の空気的に両手を上げてしまう。刑事ドラマでよく見るやつだこれ。逮捕される側に手上げさせられてるけど。
「おう、坊主。いい度胸してんねえ」
一歩踏み出てきたのは周囲よりいっとう筋骨隆々の、囲いお髭がチャームポイントな男だった。
他のメンバーの反応から見るに、この男がリーダー格だろう。なら心証好くしておいて損はない。
「これはお初にお目にかかる。俺はデルタといごぶべコポォ」
げらげらと周囲が笑い声を上げる中、リーダー格に頭上から赤ワインを傾けられて視界が赤紫に染まる。うーん、この赤ワインおいしい。
眉間にうっすら縦皺を寄せるカリスを制し、頭三つ以上高い悪人面を見上げて俺は笑みを浮かべた。
「俺の名はデルタという。君の名を聞いていいかな?」
「おうおう、よろしくなあ坊主。俺はライノルドってんだ」
なるほど。これ見よがしに岩のような拳を見せつけるリーダー格の男はライノルドという名前のようだ。
高みから見下してくる視線を正面から受け止めた俺は、口許に伝うワインをひと舐めして笑みを深める。
「ライノルド……」
十分後。
「ライ! ララライ! ラララ!」
「ライ縦、ライ横、ライ斜め的な!?」
「ライ! ララライ! ラララ!」
「ライ麦畑で隠れてオナニー!!」
奥ゆかしいコールと手拍子に合わせて、いい飲みっぷりを見せたライノルドが空の木製ジョッキを掲げる。
いええええええええええい! と濁音混じりの雄叫びが酒場に充満した。もちろんその雄叫びにはライノルドのお仲間一行に混じって、赤ワインの洗礼を浴びた俺も意気揚々と参加している。
「ライちゃん良いね~~!」
「デル坊ノってっかー!? フゥーッ!」
ワインの飛沫を上げながら、テンション高めに互いのジョッキをぶつけあう。
数多の宴会接待コンパを乗り越えたこの俺が、多少悪ぶったところで酒の入った男どもと意気投合するなぞ赤子の手をひねるようなものだ。
「ワ~ッハッハッハッハー!!」
「景気いいなあデル坊ー!!」
壁際で腕を組んで佇むカリスが形容しがたい視線を送っている気がするが、たぶん気のせいだと思う。うん。
※今回のエピソードでストックが切れたので本日から更新頻度が下がります。
現在、誠心誠意執筆中ですので次回までのんびりお待ち頂けると嬉しいです。
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