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第107話 解散宣言
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「女神オーディアルは母なる原初の闇よりその資質を受け継ぎました」
オネーバーの北、帝国北部の中心都市であるノヴァーゼの大広場に集まった帝国軍人を中心としたオーディアル信徒に向かってイリノアが滔々と語りかける。幼き教主の言葉に一同は静かに聞き入っていた。
「闇と死を司るオーディアルは不吉な存在としてイシュナル教の信徒より禁忌の扱いを受けてきました。しかし彼女が司るのは暗き闇と冷たい死だけではありません。光が差すからこそ闇が生まれ、死の後に新たな誕生があります。光と闇、生と死の連なりによって世界は続いていくのです」
広場に設けられた演説台の上に立ち、少女とは思えぬ落ち着いた物言いをするイリノアに聴衆は引き込まれていく。
「女神オーディアルはイシュナルと一対の存在。イシュナル教とオーディアル教もまた表裏一体と言っていいでしょう」
イリノアの言葉に一部の軍人がざわめき始める。
「神聖オーディアル教団は本来はオーディアルを信奉し、この世界の始まりである創世神アーシアと原初の闇に感謝を捧げるものであるはずでした。ところが実際は一部の過激な者たちの歪んだ教義の解釈によって本来の姿からかけ離れてしまいました。六芒星なるそれらの者の暴走を止められなかった責任は私にあります」
余計な混乱を避けるため、教団を操っていた真の六芒星には言及せず、あくまで教団内の過激派としての六芒星のことを話す。それがイリノアとエラインの一致した考えだった。
「過激派によってゆがめられた教団は本来の姿を無くし、帝国と王国に混乱を招きました。私はその責任を重く受け止め、今の神聖オーディアル教団を解散することを決意しました」
イリノアの言葉に聴衆が動揺し、一部の者が騒いだり悲鳴を上げる。
「落ち着いて下さい。オーディアルを信奉すること自体を無くすわけではありません。新たな信徒の集まりとして再生するのです。名を変え、組織の形も変わりますが、基本的な教義は変わりません。神への信仰は名前や形ではないはずです。女神を信奉する心がある限り、あなた方の敬虔な信仰にオーディアルは応えてくださるでしょう」
「教主様はどうなさるのですか!?」
聴衆の中から質問が飛ぶ。
「教団が新生するにあたり、私の存在は邪魔になると思っています。私は教主を辞し、一信徒として生きていくつもりです」
イリノアの言葉にまた悲鳴が上がる。「辞めないでください!」「ご神託を!」と声があちこちで上がるが、イリノアは目を閉じて静かに首を振り、深々と頭を下げる。
「新しい教団の立ち上げには私も協力します。しかしそこの教主は私よりもふさわしい者になっていただくつもりです」
イリノアはそう言ってもう一度頭を下げ、飛び交う悲鳴と怒号の中ゆっくりと演説台を降りる。
「ご苦労さん、いやいや、その歳で大したもんだな」
演説台の下で聴衆を見張っていたバーガット大尉がイリノアを睨みながら言う。彼は例の侵攻作戦には参加していたものの、イオットの村に通じる獣道を監視する後詰の部隊にいたため、助かっていた。
「お飾りでも何年か教主として振舞ってきたから、これくらいはね」
「それにしてもお前が教団の教主だったとはな。すっかり騙されたぜ」
「嘘をついて利用したのは謝るわ。あの時はどうしてもオネーバーを……教団を離れなければいけなかったから」
「教団が崩壊するって言ったのはこのことか」
「ええ。私の異能。予知でこうなることは分かっていたから」
「正直言いたいことはあるが、エライン閣下直々の命令だからな。お前の護衛はしっかりやってやるよ。おい、聴衆が暴徒化しないよう目を光らせとけよ」
バーガットが部下の帝国兵に命令する。イリノアの教団解散宣言を聞いて信徒が暴れたり、イリノアを襲ったりしないよう警護するよう、バーガットはエラインから命を受けていた。
「帝国の信徒はとりあえずこれでいいとして、問題は王国にいる信徒よね」
「こっちだってすんなりとはいかないだろうよ。新しい教団の教主や司教なんかの幹部はどうするつもりだ?」
「それは温厚派の司教たちに任せるわ。マードック卿も協力してくれることになってるし」
「お前も協力するって今言ってたじゃねえか」
「やれることはするわよ。でもその前に王国の信徒たちにも解散を伝えないといけないから。一度あっちに行くわ」
「参謀本部も王国との和平協議に応じるらしいな」
「ええ。エライン中将がサンクリスト公に会うことになってるからそれに同行するの。その後王都に行って信徒たちを集めるつもり」
「そこまで俺たちが護衛しなきゃならんのか?」
「それはエライン中将に訊いて」
イリノアはそう言ってとりあえずの役目を果たしたことにホッとして息を吐いた。
「まずは侵攻の失敗で弱体化した帝国軍を潰す」
ヘルナンデスの言葉にロリエルとマルノー、護星剣のスターゲイトが頷く。
「ロリエル、完成体は何匹残っている?」
「使えるのは二体だね」
「戦力としては当てに出来んか。こっちに付いた帝国兵は?」
「二百といったところです。キドナーが他に信徒を集めていますが」
「素人の信徒など盾代わりにもならん。まあいないよりはよいか」
マルノーの答えにヘルナンデスが不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「しかしキドナーって男に面識が無くてよかったよ。コスイナの手前、僕たちも教団の敵だって振りをしてたからね。今更あいつらを操ってたって知ったら素直に協力しなかったろう」
「研究のできる場所を確保するためとはいえ、ややこしい事態になっていたからな」
「クリムを殺したのはやりすぎたかな?」
「どうせあいつらは使い捨ての駒だ。あの時はまだコスイナの方が利用価値があったろう」
「アーノルドもアクアットももうどうでもよいことだ。出来れば奴らの家の騎士団もこちらに付けたかったがな」
「ヘルナンデス様とアイアコス様がいれば帝国軍など問題ではないでしょう」
「アイアコスは来ん。ラダマンティスを迎えに行くとか言ってな」
「ラダマンティス様がこちらに?」
「ああ。鍵がこの大陸にいると分かったのでな。捜索のためこっちに来るそうだ」
「HLOに潜入している意味がなくなりましたからね」
ロリエルの言葉にヘルナンデスはまた不機嫌そうな顔で頷く。
「とにかく帝都を落とし、帝国軍の指揮権を奪って王国に攻め入る。鍵探しは奴らに任せて我らはこの大陸の掌握を急ぐのだ」
ヘルナンデスはそう言って自らを鼓舞するように右手を突き上げた。
「お初にお目にかかります、閣下」
ピピルがそう言って深々と頭を下げる。ウルベルト大将は葉巻を持ったまま椅子に座るよう促し、じっとピピルを見つめた。
「この参謀本部に獣人族が入ったのは初めてだ。帝都にはほとんど君たちの仲間はおらんからな」
「いたとしてもここに来ることはなかったでしょう。王国南部ほどではないにせよ、我々が差別、いえ敬遠されているのは存じております」
「言葉を取り繕う必要はない、ピピル殿。帝国民に貴殿たちへの差別感情があることは確か。今更それを否定もせんし、言い訳するつもりもない。無意味だからな」
「恐れ入ります、閣下」
頭を下げながら、ピピルはこの男、思ったより正直だな、と心の中で呟く。それともそう思わせることがすでにこの男の策略なのか。帝国軍のトップの人となりを観察しながらピピルは気を引き締める。彼はエライン中将がオネーバーを訪れるのと入れ違いにこの帝都にやって来ていた。
「それにしてもマードック卿が君のような者を雇っていたとはな。彼は我々より柔軟な思考の持ち主らしい。猛省せねばならぬな」
「買いかぶりです閣下。結果的に私は帝国軍の敗走を予見しながらそれを防げませんでした」
「今回の敗北を予見していたと?」
「確証はありませんでした。しかし嫌な予感のようなものは感じておりました、戦死された兵とご遺族には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「貴殿が気に病むことはない。作戦の決行を判断したのは我々だ。それでマードック卿からの親書では今後のことについての献策があるということだが?」
「はい。サンクリスト公からの手紙は届いていると思いますが、現在この大陸には他の大陸の様々な勢力がj入り込み、陰から影響を与えております」
「うむ。この参謀本部にもそれは入り込んでいる。今までは戦力増強のため見て見ぬ振りをしておったが、そういうわけにもいかなくなったようだな」
「はい。特に六芒星という連中とグランダ大陸のクアマリン皇国ははっきりとこの大陸を侵攻する意図を持っていると思われます。猶予はございません」
「さしあたっての脅威はどちらかね?」
「六芒星でしょうね。奴らが表に姿を現した上、教団の教主が奴らの手を離れた今すぐに攻勢をかけてくる可能性が高いです」
「奴らがどう動くかは予想できるかね?」
「推測でよろしければ」
「無論構わん」
「まずはこの帝都を襲撃してくるかと」
「何!?」
「侵攻作戦の失敗で士気が落ちているうえに指揮官もかなり減っているとお聞きしています。軍内にいる奴らのシンパが反乱を起こす可能性は高いかと」
「すぐに対策を打たねばならんか」
「はい。それについて王国側からも協力の意思があると確認しています」
「助かる。昨日の敵は今日の友と言うが、共通の脅威に対して共闘してもらえるのはありがたい」
「帝都の防備については閣下にお任せします。私はこの後この帝都にやって来る手はずの王国の戦士たちを迎えます。彼らの宿所をご用意いただけると幸いです」
「すぐに手配しよう。その者らが到着したらすぐに話し合いの場を持ちたい。セッティングを頼めるかね?」
「かしこまりました。では」
ピピルは立ち上がって頭を下げると、部屋を出て行く。それを見送ったウルベルトは葉巻の煙を吐き出し、鋭い目で呟く。
「他国の者に好きにやらせはせん。我らに技術供与としたことが墓穴であったと思い知らせてやるわ」
葉巻を灰皿に押し潰し、ウルベルトは帝都防衛体勢の構築のため参謀本部の参集を部下に命じた。
オネーバーの北、帝国北部の中心都市であるノヴァーゼの大広場に集まった帝国軍人を中心としたオーディアル信徒に向かってイリノアが滔々と語りかける。幼き教主の言葉に一同は静かに聞き入っていた。
「闇と死を司るオーディアルは不吉な存在としてイシュナル教の信徒より禁忌の扱いを受けてきました。しかし彼女が司るのは暗き闇と冷たい死だけではありません。光が差すからこそ闇が生まれ、死の後に新たな誕生があります。光と闇、生と死の連なりによって世界は続いていくのです」
広場に設けられた演説台の上に立ち、少女とは思えぬ落ち着いた物言いをするイリノアに聴衆は引き込まれていく。
「女神オーディアルはイシュナルと一対の存在。イシュナル教とオーディアル教もまた表裏一体と言っていいでしょう」
イリノアの言葉に一部の軍人がざわめき始める。
「神聖オーディアル教団は本来はオーディアルを信奉し、この世界の始まりである創世神アーシアと原初の闇に感謝を捧げるものであるはずでした。ところが実際は一部の過激な者たちの歪んだ教義の解釈によって本来の姿からかけ離れてしまいました。六芒星なるそれらの者の暴走を止められなかった責任は私にあります」
余計な混乱を避けるため、教団を操っていた真の六芒星には言及せず、あくまで教団内の過激派としての六芒星のことを話す。それがイリノアとエラインの一致した考えだった。
「過激派によってゆがめられた教団は本来の姿を無くし、帝国と王国に混乱を招きました。私はその責任を重く受け止め、今の神聖オーディアル教団を解散することを決意しました」
イリノアの言葉に聴衆が動揺し、一部の者が騒いだり悲鳴を上げる。
「落ち着いて下さい。オーディアルを信奉すること自体を無くすわけではありません。新たな信徒の集まりとして再生するのです。名を変え、組織の形も変わりますが、基本的な教義は変わりません。神への信仰は名前や形ではないはずです。女神を信奉する心がある限り、あなた方の敬虔な信仰にオーディアルは応えてくださるでしょう」
「教主様はどうなさるのですか!?」
聴衆の中から質問が飛ぶ。
「教団が新生するにあたり、私の存在は邪魔になると思っています。私は教主を辞し、一信徒として生きていくつもりです」
イリノアの言葉にまた悲鳴が上がる。「辞めないでください!」「ご神託を!」と声があちこちで上がるが、イリノアは目を閉じて静かに首を振り、深々と頭を下げる。
「新しい教団の立ち上げには私も協力します。しかしそこの教主は私よりもふさわしい者になっていただくつもりです」
イリノアはそう言ってもう一度頭を下げ、飛び交う悲鳴と怒号の中ゆっくりと演説台を降りる。
「ご苦労さん、いやいや、その歳で大したもんだな」
演説台の下で聴衆を見張っていたバーガット大尉がイリノアを睨みながら言う。彼は例の侵攻作戦には参加していたものの、イオットの村に通じる獣道を監視する後詰の部隊にいたため、助かっていた。
「お飾りでも何年か教主として振舞ってきたから、これくらいはね」
「それにしてもお前が教団の教主だったとはな。すっかり騙されたぜ」
「嘘をついて利用したのは謝るわ。あの時はどうしてもオネーバーを……教団を離れなければいけなかったから」
「教団が崩壊するって言ったのはこのことか」
「ええ。私の異能。予知でこうなることは分かっていたから」
「正直言いたいことはあるが、エライン閣下直々の命令だからな。お前の護衛はしっかりやってやるよ。おい、聴衆が暴徒化しないよう目を光らせとけよ」
バーガットが部下の帝国兵に命令する。イリノアの教団解散宣言を聞いて信徒が暴れたり、イリノアを襲ったりしないよう警護するよう、バーガットはエラインから命を受けていた。
「帝国の信徒はとりあえずこれでいいとして、問題は王国にいる信徒よね」
「こっちだってすんなりとはいかないだろうよ。新しい教団の教主や司教なんかの幹部はどうするつもりだ?」
「それは温厚派の司教たちに任せるわ。マードック卿も協力してくれることになってるし」
「お前も協力するって今言ってたじゃねえか」
「やれることはするわよ。でもその前に王国の信徒たちにも解散を伝えないといけないから。一度あっちに行くわ」
「参謀本部も王国との和平協議に応じるらしいな」
「ええ。エライン中将がサンクリスト公に会うことになってるからそれに同行するの。その後王都に行って信徒たちを集めるつもり」
「そこまで俺たちが護衛しなきゃならんのか?」
「それはエライン中将に訊いて」
イリノアはそう言ってとりあえずの役目を果たしたことにホッとして息を吐いた。
「まずは侵攻の失敗で弱体化した帝国軍を潰す」
ヘルナンデスの言葉にロリエルとマルノー、護星剣のスターゲイトが頷く。
「ロリエル、完成体は何匹残っている?」
「使えるのは二体だね」
「戦力としては当てに出来んか。こっちに付いた帝国兵は?」
「二百といったところです。キドナーが他に信徒を集めていますが」
「素人の信徒など盾代わりにもならん。まあいないよりはよいか」
マルノーの答えにヘルナンデスが不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「しかしキドナーって男に面識が無くてよかったよ。コスイナの手前、僕たちも教団の敵だって振りをしてたからね。今更あいつらを操ってたって知ったら素直に協力しなかったろう」
「研究のできる場所を確保するためとはいえ、ややこしい事態になっていたからな」
「クリムを殺したのはやりすぎたかな?」
「どうせあいつらは使い捨ての駒だ。あの時はまだコスイナの方が利用価値があったろう」
「アーノルドもアクアットももうどうでもよいことだ。出来れば奴らの家の騎士団もこちらに付けたかったがな」
「ヘルナンデス様とアイアコス様がいれば帝国軍など問題ではないでしょう」
「アイアコスは来ん。ラダマンティスを迎えに行くとか言ってな」
「ラダマンティス様がこちらに?」
「ああ。鍵がこの大陸にいると分かったのでな。捜索のためこっちに来るそうだ」
「HLOに潜入している意味がなくなりましたからね」
ロリエルの言葉にヘルナンデスはまた不機嫌そうな顔で頷く。
「とにかく帝都を落とし、帝国軍の指揮権を奪って王国に攻め入る。鍵探しは奴らに任せて我らはこの大陸の掌握を急ぐのだ」
ヘルナンデスはそう言って自らを鼓舞するように右手を突き上げた。
「お初にお目にかかります、閣下」
ピピルがそう言って深々と頭を下げる。ウルベルト大将は葉巻を持ったまま椅子に座るよう促し、じっとピピルを見つめた。
「この参謀本部に獣人族が入ったのは初めてだ。帝都にはほとんど君たちの仲間はおらんからな」
「いたとしてもここに来ることはなかったでしょう。王国南部ほどではないにせよ、我々が差別、いえ敬遠されているのは存じております」
「言葉を取り繕う必要はない、ピピル殿。帝国民に貴殿たちへの差別感情があることは確か。今更それを否定もせんし、言い訳するつもりもない。無意味だからな」
「恐れ入ります、閣下」
頭を下げながら、ピピルはこの男、思ったより正直だな、と心の中で呟く。それともそう思わせることがすでにこの男の策略なのか。帝国軍のトップの人となりを観察しながらピピルは気を引き締める。彼はエライン中将がオネーバーを訪れるのと入れ違いにこの帝都にやって来ていた。
「それにしてもマードック卿が君のような者を雇っていたとはな。彼は我々より柔軟な思考の持ち主らしい。猛省せねばならぬな」
「買いかぶりです閣下。結果的に私は帝国軍の敗走を予見しながらそれを防げませんでした」
「今回の敗北を予見していたと?」
「確証はありませんでした。しかし嫌な予感のようなものは感じておりました、戦死された兵とご遺族には申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「貴殿が気に病むことはない。作戦の決行を判断したのは我々だ。それでマードック卿からの親書では今後のことについての献策があるということだが?」
「はい。サンクリスト公からの手紙は届いていると思いますが、現在この大陸には他の大陸の様々な勢力がj入り込み、陰から影響を与えております」
「うむ。この参謀本部にもそれは入り込んでいる。今までは戦力増強のため見て見ぬ振りをしておったが、そういうわけにもいかなくなったようだな」
「はい。特に六芒星という連中とグランダ大陸のクアマリン皇国ははっきりとこの大陸を侵攻する意図を持っていると思われます。猶予はございません」
「さしあたっての脅威はどちらかね?」
「六芒星でしょうね。奴らが表に姿を現した上、教団の教主が奴らの手を離れた今すぐに攻勢をかけてくる可能性が高いです」
「奴らがどう動くかは予想できるかね?」
「推測でよろしければ」
「無論構わん」
「まずはこの帝都を襲撃してくるかと」
「何!?」
「侵攻作戦の失敗で士気が落ちているうえに指揮官もかなり減っているとお聞きしています。軍内にいる奴らのシンパが反乱を起こす可能性は高いかと」
「すぐに対策を打たねばならんか」
「はい。それについて王国側からも協力の意思があると確認しています」
「助かる。昨日の敵は今日の友と言うが、共通の脅威に対して共闘してもらえるのはありがたい」
「帝都の防備については閣下にお任せします。私はこの後この帝都にやって来る手はずの王国の戦士たちを迎えます。彼らの宿所をご用意いただけると幸いです」
「すぐに手配しよう。その者らが到着したらすぐに話し合いの場を持ちたい。セッティングを頼めるかね?」
「かしこまりました。では」
ピピルは立ち上がって頭を下げると、部屋を出て行く。それを見送ったウルベルトは葉巻の煙を吐き出し、鋭い目で呟く。
「他国の者に好きにやらせはせん。我らに技術供与としたことが墓穴であったと思い知らせてやるわ」
葉巻を灰皿に押し潰し、ウルベルトは帝都防衛体勢の構築のため参謀本部の参集を部下に命じた。
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