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第87話 作戦準備
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「ちょ、ちょっと待ってくれよ。頭が混乱してきた」
カサンドラがそう言って頭を抱える。モースキンの騎士団駐屯所の中央会議室。そこに集まった面々を相手にファングが馬車の中で語った天使や上位霊種のことについて再度話をした。今回はクローも解説に加わっている、
「つまりこの国を創ったのはそのグランダ大陸を追われた天使の末裔であり、さらに彼らを追い出した上位霊種なる種族がその後で王国に入り込み影響力を強めていったと。そういうことですね?」
ミリアが厳しい表情で尋ねる。ここには彼女の他にボナー、パンナ、ファング、クロー、ミラージュ、ファンタム、ミッドレイ、ザック、オルト、バイアス、ネムム、フルル、ボボル、イリノア、カサンドラ、そしてユーシュが顏を揃えていた。
「まあそういうこったな。その上位霊種も純血と呼べる連中はグランダ大陸を追われ数を減らしてるがな。多分その大半はこの大陸にいるんじゃねえかな?」
「そして純血の上位霊種に差別され叛旗を翻した連中が今グランダ大陸を掌握していると」
「ああ。クアマリン皇国だ。こいつらはイシュナル信徒だが、オーディアルを信仰する奴らが人間至上主義を掲げるHLOと手を組んだことで情勢がややこしくなった。オーディアルが自分を信仰する者に原初の力を与えてしまった上、HLOが神装具を保管する宝物庫の鍵となる人間を確保したからな」
「原初の力を持たない者に神装具は使えない。オーディアル信徒とHLOが一緒にならなければ皇国は恐れる必要がなかったと」
「そうだ。まあオーディアル信徒もHLOも皇国から身を守るために同盟を組んでいるにすぎんから腹の中ではお互いを煙たがってるだろうがな」
「そのオーディアル信徒の中でも中心的な連中が教団を操っていた真の六芒星というわけですね?でも分かりませんね。私が皇国ならまず宝物庫の鍵である人間を殺しますけど。神装具が使えなければHLOは皇国の敵じゃないでしょう?」
ミリアが疑問を呈して首をかしげる。
「俺やクローが手にしていることからもすでに相当数の神装具が宝物庫から持ち出されているのは確実だろう。この大陸に運ばれた時点で俺のグングニルやクローのミョルニルは最上級の武器ではないと思われる」
「最上級のものはまだ宝物庫にあるか、持ち出されていても連合評議会の手にある、と」
「そうだ。そしてそんなものを扱うのは俺たちのような人工的に原初の力を与えられた存在じゃ無理だろう」
「その力で連合評議会は鍵である人間を守っているんですね?」
「でもそうなると別の意味で分かりませんね。それを扱えるのがオーディアル信徒だとするなら、それこそ六芒星が最上級の武器を持ったらHLOを駆逐して皇国と戦えるのでは?」
「六芒星でも扱えないような代物だったら?」
「それこそ意味がないじゃないですか。どんな強力な武器でも使えなければ……」
「それを扱える奴がHLOに協力してたらって話さ」
「へえ。あんた、あたしとおんなじことを考えてたのかい?意外に頭が回るんだね」
クローが感心したように言う。
「バカにするなよ。これくらいは察しがついてたさ」
ファングが不貞腐れたように言う。その顔にはクローに殴られた青あざが痛々しく残っていた。
「最上級の武器を使える者って……」
「こいつは俺を創った天使の記憶にも無かったし、俺らを雇ったHLOの連中も黙ってるから俺の予想に過ぎないが、おそらく奴らは闇天使を飼ってる」
「そんな!天使はグランダ大陸を追われたんじゃ……」
「全員が出たわけじゃねえだろう。そもそも純粋な天使はグランダ大陸以外では生きられん」
「人間と交配して出来た子供を他の大陸に逃がして、純粋な天使は最後まで上位霊種と戦ったんでしたね?」
「ああ。その生き残りがいたとしてもおかしくない。まして闇天使は天使に比べて目立たないように動いてたらしいからな」
「でも闇天使はオーディアルが創ったんでしょう?それならオーディアル信徒に手を貸すのが筋なんじゃ?」
「天使は上位霊種の反乱の際、自分たちを助けなかった女神を恨んでる。闇天使も同じだろうさ。ましてオーディアルは自分の信徒の人間に原初の力まで与えてる。面白いはずがない」
「HLOはそれを利用して闇天使に最上級の神装具を与え、六芒星、皇国双方ににらみを利かせていると」
「俺の想像だがな。天使が上位霊種の反乱に屈したのは宝物庫の鍵を奪われたからだ。俺が使ってもあれだけの力を発揮するグングニルだ。天使が最上級の神装具を使ったらどれだけの威力を持つのか想像も出来ん」
「でもそれなら闇天使が神装具を使って皇国を攻撃しそうなものですよね?純血ではないとはいえ皇国の人間も上位霊種でしょう?それもイシュナル教徒ですよ」
「そんなことを言ったら闇天使を飼ってる連合評議会だって上位霊種だ。おそらく数の問題だろうな。いかに強大な力を持つ神装具でも数が少なくては圧倒的に兵力で勝る皇国を簡単に滅ぼすのは無理だろう。闇天使はせいぜい数人しかいないと思うからな」
「全面戦争になれば殲滅戦になる、と」
「ああ。そうなれば天使の末裔や純血上位霊種の思う壺だ。だからおとなしく評議会の言いなりになってるんだろうさ」
「三すくみ、下手をすれば四すくみの状態で積極的に動くのは避けたいということですね」
「そういうことだ。天使の目的は皇国の中心にいるルシフェルに接触することだが、それは皇国も評議会も阻止したいところだろう。天使と反目している闇天使も目的は同じだ。天使を阻止するためなら評議会に協力するだろう。逆に皇国はルシフェルを人質に取っているともいえる」
「でもルシフェルは結界の中にいるんでしょう?」
「天使の記憶によると結界はルシフェルが外に出ないようにするためのもので、人間が中に入ることは出来るらしい。ルシフェル自身は結界の中で眠っているようだが、何らかの形で危害を加えることは可能かもしれん」
「ファングさんやクローさんなら神装具を持って結界に入ることも出来ますね」
「そこまで考えてHLOが俺たちを雇ったってのは穿ちすぎかもしれんがな。天使たちは墓穴を掘った形だな」
「そうなるとやはりHLO、連合評議会にとって法宝物庫の鍵である人間はまさに命綱ですね」
「ああ。だから六芒星は鍵を取り込もうとしているんだろう」
「その餌がこの大陸ということですか?」
「多分な。ここはそれなりに豊かな大陸だからな。そこの支配権を与えると言われたらぐらついてもおかしくない」
「ですがそう上手くいきますかね。ここには天使の末裔に純血の上位霊種が入り込んでるんでしょ?それぞれが王国と帝国で影響力を強めようとしてるんじゃ?」
ザックが考え込みながら言う。
「そうだね~。今の話を聞く限り、おそらくイグニアス公は純血の上位霊種の末裔だろうね~。そして八源家は天使派と上位霊種派に別れてる。クリムト卿は六芒星に取り込まれたみたいだけど」
ボボルが眠そうな顔で応える。
「ボボルさんもそう思いますか。僕も同意見です」
ボナーが感心したように言う。
「イグニアス公たちの狙いはなんでしょうか?」
ミリアがボボルとファングの顔を交互に見ながら尋ねる。
「純血の上位霊種は自分たちを追い出した皇国やHLOに復讐を考えてる。グランダ大陸に帰ること自体は重要な目的ではないと思うが」
「でもグランダ大陸に帰らなければ復讐も出来ないでしょう」
「人工天使のような兵器を積んだ船をグランダ大陸に送り込むという手もある」
「そんなことが出来るんですか?」
「奴らは造船技術や航海技術をわざとこの大陸で発展しないようにしていた節がある。俺ならその技術を使って大型船を造るな」
「異能を与えた獣人族などを戦力として送り込むと?」
「おそらくな。グランダ大陸の人間は原初の力を持っていない。異能は有効なはずだ」
「でもオーディアル信徒には効かないわよ」
「それは奴らにとっても誤算だろうな。だがそれを知っているかどうかは分からんがな」
「イグニアス公はオーディアル信徒を毛嫌いしてますからね。でもそれでイグニアス公は教団を倒すために異能者を雇っています。その者たちから報告は上がってるのでは?」
「ニケたちのことだな?しかしあいつらが追ってるのは教団の異能者狩りとかだ。ヘルナンデスのような原初の力を与えられたオーディアル信徒のことは知らんのじゃないか?」
パンナの言葉にオルトが反論する。
「そうだろうね。あたしだって真の六芒星なんて連中のことは聞いたこともなかったからね」
カサンドラが渋い表情で言う。
「純血の連中がグランダ大陸を追われた時にオーディアル信徒はまだ原初の力を与えられてなかったかもしれんしな」
「でもその前にこの国にいる天使の末裔やHLOの息のかかったものを排除しようとするでしょうね」
「それはそうだ。だがヘルナンデスが表に出たことで事態は急変するだろう。とにかく誰がどの勢力なのかを見極める必要がある。帝国も含めてな」
「ようやく本題に戻りましたね。明日グララさんが偽情報を与えることでおそらく帝国軍が動きます。その最終確認をしたいと思います」
ミリアがテーブルの上に地図を広げて言う。
「村を占拠した我々獣人族がモースキンの門を内側から開ける、という話になっているんだよな?」
ネムムの言葉にボボルが頷く。
「そうだよ~。それに合わせて煙でも上げとくと説得力が増すだろうね」
「門が開いたら帝国軍は雪崩を打って入って来るぞ。本当に大丈夫か?」
「怪物の襲来で予定が狂っちゃったけど、元々住民は町の奥へ避難する手筈だったからね。門の周りは罠を造って準備万端だよ」
「ある程度のダメージを与えたところで帝国軍内にいるオーディアル信徒に向けてイリノアが説得をする。いいわね?」
パンナの問いにイリノアがコックリと頷く。
「ファングさんたち予定外の戦力も加わってくれました。帝国側に聞く耳を持たせるためにもこの作戦は何としても成功させねばなりません」
ミリアが一同を見渡し、きっぱりとした口調で言った。
カサンドラがそう言って頭を抱える。モースキンの騎士団駐屯所の中央会議室。そこに集まった面々を相手にファングが馬車の中で語った天使や上位霊種のことについて再度話をした。今回はクローも解説に加わっている、
「つまりこの国を創ったのはそのグランダ大陸を追われた天使の末裔であり、さらに彼らを追い出した上位霊種なる種族がその後で王国に入り込み影響力を強めていったと。そういうことですね?」
ミリアが厳しい表情で尋ねる。ここには彼女の他にボナー、パンナ、ファング、クロー、ミラージュ、ファンタム、ミッドレイ、ザック、オルト、バイアス、ネムム、フルル、ボボル、イリノア、カサンドラ、そしてユーシュが顏を揃えていた。
「まあそういうこったな。その上位霊種も純血と呼べる連中はグランダ大陸を追われ数を減らしてるがな。多分その大半はこの大陸にいるんじゃねえかな?」
「そして純血の上位霊種に差別され叛旗を翻した連中が今グランダ大陸を掌握していると」
「ああ。クアマリン皇国だ。こいつらはイシュナル信徒だが、オーディアルを信仰する奴らが人間至上主義を掲げるHLOと手を組んだことで情勢がややこしくなった。オーディアルが自分を信仰する者に原初の力を与えてしまった上、HLOが神装具を保管する宝物庫の鍵となる人間を確保したからな」
「原初の力を持たない者に神装具は使えない。オーディアル信徒とHLOが一緒にならなければ皇国は恐れる必要がなかったと」
「そうだ。まあオーディアル信徒もHLOも皇国から身を守るために同盟を組んでいるにすぎんから腹の中ではお互いを煙たがってるだろうがな」
「そのオーディアル信徒の中でも中心的な連中が教団を操っていた真の六芒星というわけですね?でも分かりませんね。私が皇国ならまず宝物庫の鍵である人間を殺しますけど。神装具が使えなければHLOは皇国の敵じゃないでしょう?」
ミリアが疑問を呈して首をかしげる。
「俺やクローが手にしていることからもすでに相当数の神装具が宝物庫から持ち出されているのは確実だろう。この大陸に運ばれた時点で俺のグングニルやクローのミョルニルは最上級の武器ではないと思われる」
「最上級のものはまだ宝物庫にあるか、持ち出されていても連合評議会の手にある、と」
「そうだ。そしてそんなものを扱うのは俺たちのような人工的に原初の力を与えられた存在じゃ無理だろう」
「その力で連合評議会は鍵である人間を守っているんですね?」
「でもそうなると別の意味で分かりませんね。それを扱えるのがオーディアル信徒だとするなら、それこそ六芒星が最上級の武器を持ったらHLOを駆逐して皇国と戦えるのでは?」
「六芒星でも扱えないような代物だったら?」
「それこそ意味がないじゃないですか。どんな強力な武器でも使えなければ……」
「それを扱える奴がHLOに協力してたらって話さ」
「へえ。あんた、あたしとおんなじことを考えてたのかい?意外に頭が回るんだね」
クローが感心したように言う。
「バカにするなよ。これくらいは察しがついてたさ」
ファングが不貞腐れたように言う。その顔にはクローに殴られた青あざが痛々しく残っていた。
「最上級の武器を使える者って……」
「こいつは俺を創った天使の記憶にも無かったし、俺らを雇ったHLOの連中も黙ってるから俺の予想に過ぎないが、おそらく奴らは闇天使を飼ってる」
「そんな!天使はグランダ大陸を追われたんじゃ……」
「全員が出たわけじゃねえだろう。そもそも純粋な天使はグランダ大陸以外では生きられん」
「人間と交配して出来た子供を他の大陸に逃がして、純粋な天使は最後まで上位霊種と戦ったんでしたね?」
「ああ。その生き残りがいたとしてもおかしくない。まして闇天使は天使に比べて目立たないように動いてたらしいからな」
「でも闇天使はオーディアルが創ったんでしょう?それならオーディアル信徒に手を貸すのが筋なんじゃ?」
「天使は上位霊種の反乱の際、自分たちを助けなかった女神を恨んでる。闇天使も同じだろうさ。ましてオーディアルは自分の信徒の人間に原初の力まで与えてる。面白いはずがない」
「HLOはそれを利用して闇天使に最上級の神装具を与え、六芒星、皇国双方ににらみを利かせていると」
「俺の想像だがな。天使が上位霊種の反乱に屈したのは宝物庫の鍵を奪われたからだ。俺が使ってもあれだけの力を発揮するグングニルだ。天使が最上級の神装具を使ったらどれだけの威力を持つのか想像も出来ん」
「でもそれなら闇天使が神装具を使って皇国を攻撃しそうなものですよね?純血ではないとはいえ皇国の人間も上位霊種でしょう?それもイシュナル教徒ですよ」
「そんなことを言ったら闇天使を飼ってる連合評議会だって上位霊種だ。おそらく数の問題だろうな。いかに強大な力を持つ神装具でも数が少なくては圧倒的に兵力で勝る皇国を簡単に滅ぼすのは無理だろう。闇天使はせいぜい数人しかいないと思うからな」
「全面戦争になれば殲滅戦になる、と」
「ああ。そうなれば天使の末裔や純血上位霊種の思う壺だ。だからおとなしく評議会の言いなりになってるんだろうさ」
「三すくみ、下手をすれば四すくみの状態で積極的に動くのは避けたいということですね」
「そういうことだ。天使の目的は皇国の中心にいるルシフェルに接触することだが、それは皇国も評議会も阻止したいところだろう。天使と反目している闇天使も目的は同じだ。天使を阻止するためなら評議会に協力するだろう。逆に皇国はルシフェルを人質に取っているともいえる」
「でもルシフェルは結界の中にいるんでしょう?」
「天使の記憶によると結界はルシフェルが外に出ないようにするためのもので、人間が中に入ることは出来るらしい。ルシフェル自身は結界の中で眠っているようだが、何らかの形で危害を加えることは可能かもしれん」
「ファングさんやクローさんなら神装具を持って結界に入ることも出来ますね」
「そこまで考えてHLOが俺たちを雇ったってのは穿ちすぎかもしれんがな。天使たちは墓穴を掘った形だな」
「そうなるとやはりHLO、連合評議会にとって法宝物庫の鍵である人間はまさに命綱ですね」
「ああ。だから六芒星は鍵を取り込もうとしているんだろう」
「その餌がこの大陸ということですか?」
「多分な。ここはそれなりに豊かな大陸だからな。そこの支配権を与えると言われたらぐらついてもおかしくない」
「ですがそう上手くいきますかね。ここには天使の末裔に純血の上位霊種が入り込んでるんでしょ?それぞれが王国と帝国で影響力を強めようとしてるんじゃ?」
ザックが考え込みながら言う。
「そうだね~。今の話を聞く限り、おそらくイグニアス公は純血の上位霊種の末裔だろうね~。そして八源家は天使派と上位霊種派に別れてる。クリムト卿は六芒星に取り込まれたみたいだけど」
ボボルが眠そうな顔で応える。
「ボボルさんもそう思いますか。僕も同意見です」
ボナーが感心したように言う。
「イグニアス公たちの狙いはなんでしょうか?」
ミリアがボボルとファングの顔を交互に見ながら尋ねる。
「純血の上位霊種は自分たちを追い出した皇国やHLOに復讐を考えてる。グランダ大陸に帰ること自体は重要な目的ではないと思うが」
「でもグランダ大陸に帰らなければ復讐も出来ないでしょう」
「人工天使のような兵器を積んだ船をグランダ大陸に送り込むという手もある」
「そんなことが出来るんですか?」
「奴らは造船技術や航海技術をわざとこの大陸で発展しないようにしていた節がある。俺ならその技術を使って大型船を造るな」
「異能を与えた獣人族などを戦力として送り込むと?」
「おそらくな。グランダ大陸の人間は原初の力を持っていない。異能は有効なはずだ」
「でもオーディアル信徒には効かないわよ」
「それは奴らにとっても誤算だろうな。だがそれを知っているかどうかは分からんがな」
「イグニアス公はオーディアル信徒を毛嫌いしてますからね。でもそれでイグニアス公は教団を倒すために異能者を雇っています。その者たちから報告は上がってるのでは?」
「ニケたちのことだな?しかしあいつらが追ってるのは教団の異能者狩りとかだ。ヘルナンデスのような原初の力を与えられたオーディアル信徒のことは知らんのじゃないか?」
パンナの言葉にオルトが反論する。
「そうだろうね。あたしだって真の六芒星なんて連中のことは聞いたこともなかったからね」
カサンドラが渋い表情で言う。
「純血の連中がグランダ大陸を追われた時にオーディアル信徒はまだ原初の力を与えられてなかったかもしれんしな」
「でもその前にこの国にいる天使の末裔やHLOの息のかかったものを排除しようとするでしょうね」
「それはそうだ。だがヘルナンデスが表に出たことで事態は急変するだろう。とにかく誰がどの勢力なのかを見極める必要がある。帝国も含めてな」
「ようやく本題に戻りましたね。明日グララさんが偽情報を与えることでおそらく帝国軍が動きます。その最終確認をしたいと思います」
ミリアがテーブルの上に地図を広げて言う。
「村を占拠した我々獣人族がモースキンの門を内側から開ける、という話になっているんだよな?」
ネムムの言葉にボボルが頷く。
「そうだよ~。それに合わせて煙でも上げとくと説得力が増すだろうね」
「門が開いたら帝国軍は雪崩を打って入って来るぞ。本当に大丈夫か?」
「怪物の襲来で予定が狂っちゃったけど、元々住民は町の奥へ避難する手筈だったからね。門の周りは罠を造って準備万端だよ」
「ある程度のダメージを与えたところで帝国軍内にいるオーディアル信徒に向けてイリノアが説得をする。いいわね?」
パンナの問いにイリノアがコックリと頷く。
「ファングさんたち予定外の戦力も加わってくれました。帝国側に聞く耳を持たせるためにもこの作戦は何としても成功させねばなりません」
ミリアが一同を見渡し、きっぱりとした口調で言った。
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