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第43話 初夜
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招待客を見送り、ボナーとアンセリーナに扮したパンナの挙式及び披露宴は幕を閉じた。二人はほっと一息つくとそのままオールヴァートの元に見舞いに向かったが、オールヴァートは眠りについており、面会は出来なかった。
「医師の話では容態は落ち着いているそうです。今日のところはこのまま休ませましょう」
ボナーの言葉に頷き、パンナは彼に肩を抱かれ部屋へ向かった。夫婦となった二人のために用意された広い寝室に着くと、パンナはその豪華さに目を丸くした。
「あ、あの……本当にここが?」
「ええ。僕とパンナさ……おまえの部屋だよ」
肩を抱かれたまま間近でそう言われ、パンナの顔が真っ赤になる。しかしボナーの方が微妙にパンナより背が低いため、肩を抱く手が持ち上げたような状態になっているのがいまいちサマになっていなかった。
「こういう時、もう少し背が欲しいとつくづく思いますよ。恰好がつかなくてすいません」
「そ、そのような!わ、私こそこのような部屋を使わせていただくなど恐れ多くて」
「何を言ってるんです。あなたはもう僕の妻。サンクリスト公爵夫人なんですよ。堂々としていて下さい」
「は、はい」
緊張してコクコクと頷くパンナを見て、ボナーがぷっと吹きだす。それを見てパンナも笑顔になった。
「そう、それでいい。笑っていて下さい。それが僕の力になる」
「ボナー様……」
「違うでしょう?」
「はい。あ、あなた」
ボナーはゆっくりと頷き、パンナをベッドへ導く。二人でベッドに腰掛けると、ボナーは真剣な顔でパンナを見つめて話し始めた。
「まずは僕のところに来て下さってありがとうございます」
「おやめ下さい。私はあなたの理想に感銘を受け、あなたの支えになると決めたのです。傍に置いて下さりお礼を言うのはこちらの方ですわ」
「うん。そうですね。もう僕たちは夫婦なのですから、腹を割って話しましょう」
「はい。ですからその言葉づかいもおやめ下さい」
「お互いそうしましょう。いや、そうしよう。パンナ、早速だが話しておきたいことがある」
「はい」
「今この国は窮地にある。帝国が大規模な動きを見せつつあるという情報が入ってきていてね」
「噂は聞いています」
「王都は今ややこしい状況にあるようだ。ここへの軍の増派も見送られているし、このままでは取り返しのつかない状態になるかもしれない」
「そうですね」
「だから僕は王都へ行き、ハッサム殿下とキーレイ大公の力添えを得て軍の北部結集を陳情するつもりだ。表向きは家督相続の報告と礼という形を取るが」
「上手くいきましょうか?」
「いかせなければこの北部は帝国の手に落ちる。何としてもやり遂げなければならない。出来れば他の『四公』の賛同も得たい。それで思い出したんだが、アンセリーナ嬢の兄上、クリス殿はキシュナー家の嫡男、オランド殿と同級生だったはずだ」
「そうなのですか?」
「僕の記憶が確かならね。それでクリス殿からオランド殿へ僕の考えを伝え、キシュナー公に賛同して貰いたいんだ」
「クリス様は二、三日コットナーに逗留されるはずです。連絡をしてみましょう」
「頼む。手紙はメルキンに持たせる」
「就任早々大変ですね」
「ああ。だが父上はこういう状況だからこそ僕に家督を譲ったんだ。その期待に応えなければならない」
「はい」
「それで僕が留守の間、帝国に動きがあったり、何か問題が起きた時はあなたにこのサンクリスト家を守ってもらいたい」
「わ、私にそのような大役は……」
「あなたにしか出来ないんです。ギルバートは正直言って信用できない。僕が自分の名代としてあなたの命に従うよう言い残しておきます」
「言い残すなんて言葉を使わないで!」
思わず出た叫びにパンナははっとして「申し訳ありません」と頭を下げる。
「パンナ……」
「あなたはこの国に必要な方。無事にお戻りになって、この国を守って下さい」
「ええ。せっかくあなたと結婚出来たのに新婚生活も楽しめないのは御免ですからね」
「まあ」
照れて俯くパンナの顔に手を当て、ボナーはそっと顔を寄せる。そのまま顔を上げさせ、しばらく見つめ合った後、二人は優しく唇を重ねた。
「……」
唇を話した後、しばらく沈黙が続き、ボナーは困ったように頭を掻く。
「すいません。そのこういうことに慣れていないもので。気の利いた言葉の一つも言えればいいのですが」
「い、いえ、私こそ」
「こういう気持ちに……女性を好きになったのは初めてなので」
「今までお付き合いをされていた方はいらっしゃらないのですか?」
「はい。そういう機会に恵まれなかった、というのは言い訳ですね。実際は背の低いことを気にして気後れしていただけなんでしょう」
「ボナー様のお立場であればそのような事は何の問題にもならないでしょう」
「『四公』の立場を狙って近づく女性に興味はありません。あなたならお分かりでしょう?」
「はい」
家格の低い家の出である母。しかしその母が厳格で誇り高い女性だったから、ボナーは女というものに対してある種の壁というか理想を高く持ってしまったようにパンナには思えた。ある意味それは呪いのようなものだ、と感じる。
「ですが……さしでがましいことを申し上げるようですが」
「構いませんよ。僕たちは夫婦なのですから」
「その、もしかしたら純粋にボナー様のお人柄に惹かれた女性がいらしたのではいかと。貴族の娘だからといって家格にこだわる人間だけではないと思います」
「そうですね。だからそこは僕が逃げていたということでしょう。それは反省しています。でもそのおかげで僕はあなたと出会えた。それは本当に嬉しい事です」
「身に余るお言葉ですが、今こうしていてももっとあなたにふさわしい女性がいたのではないかと不安になってしまうのです」
「そんな事はない。これまでお披露目に出たことも何回かありましたが、あなたのように心を惹かれた人はいなかった。運命の出会いだと僕は信じています」
「本当に私でよろしいのですか?」
「あなたでなければダメなんです。本当にこんな気持ちになったのは初めてで自分でも驚いているのですが、あなたが愛おしくてたまらない。メルキンにも心配されていたようです。僕が女性に興味がないのではないかとね。でも興味がなかったわけじゃないんです。ただ何というか……」
「私はモンテーニュ様のようにご立派な女性ではありませんわ」
「え?」
「失礼を承知で申し上げます。あなたはお母上を尊敬なさるあまり、他の女性にも同じだけの高潔さをお求めになっておられるのではありませんか?背の低いことを理由に逃げていたとおっしゃいましたが、本当はモンテーニュ様の高潔さを持つ方を求めていらしたのでは?」
「そう……か。そうですね。知らず知らず僕は母の幻影を追いかけていたわけか」
「差し出がましいことを申し上げました。お詫びいたします」
「何を言ってるんです!そういうことを言ってくれる者は今までいなかった。僕の未熟さを指摘してくれるものは精々メルキンくらいで、それでも今のように踏み込んだことを言ってはくれなかった。あなたを妻に出来て改めて本当によかったと思っています」
「ありがとうございます」
「あなたは母の代わりなんかじゃない。一人の女性としてあなたを愛しているんです。それは信じてほしい」
「勿論です。私も……お披露目であなたに初めてお会いした時から心惹かれておりました。お見合いであなたの理想を聞き、ますます。……でもあまりにも立場が違いすぎてとても叶わぬ想いだと思っておりました」
「やはりこれは運命ですよ。僕は本当に幸せです」
「私も……これ以上ないほど幸せです」
再び沈黙が降り、二人は照れて目をそらした。ぼうっとした頭でパンナはメイドの間で交わした会話を思い出し、乏しい性知識を引っ張り出す。
『こ、これはあれよね。ふ、ふ、夫婦なんだし、初めての夜なんだし、そ、そ、そういうことをする……のよね』
胸がドキドキとして顔が真っ赤になる。現実感が希薄で、夢の中にいるような心持だった
「どうしました?」
そんなパンナを見てボナーが心配そうに顔を覗き込む。
「い、いえ何でも!で、ですがまたお互いよそよそしい口調になってしまってますわね」
「ああ、そうですね。やっぱりいきなりは難しいのかな。でも少しずつ慣れていきましょう」
「そ、そ、そうですね」
「本当に大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが」
「は、はい。その……ボナーさ……あなたは女性に興味がないわけではないとおっしゃいましたわよね?」
「ええ。特にあなたには興味津々ですよ」
ボナーの言葉にパンナはさらに照れて頭に血が昇る。
「こ、こういう時はその……どうするかはお分かりですのね」
「こういう時とは?」
「で、ですから私たちはもう夫婦ですし、その、は、初めて夜を共に過ごすわけですし……」
パンナの言葉の意味を悟り、ボナーも顔が真っ赤になる。
「そ、そうですね。その……ええと、あ、あなたさえお嫌でなければ」
「嫌だなんて!」
「す、すいません。恥ずかしながらこういうことは初めてでして」
「わ、私もです」
「無理はなさらなくてもいいですよ」
「い、いえ。ボナー様が、あなたが私を求めてくださるのなら、私は喜んで」
「愛しています。僕は……あなたが欲しい」
ボナーが真剣な顔で見つめられ、パンナは小さく頷いて立ち上がると、金髪のウィッグを外し、ドレスに手をかける。そのまま服を脱ぎ捨て、全裸になってボナーの前に立つ。
「綺麗だ」
「あ、あまり見つめないでください。恥ずかしいです」
そう言いながら体を隠すことなくパンナはボナーの前に立ち続ける。そして彼が立ち上がると強く抱擁し、キスを交わした。
「いいんですね?」
「はい。私を愛してください」
パンナの言葉に頷き、ボナーも衣服を脱ぎ捨てる。たくましい裸身が露わになり、パンナは思わず息を呑んだ。
『初めての相手が『四公』になるなんて。少し前の私だったらとても信じられなかったわね』
パンナは恥ずかしさと喜びと困惑が混じり合った感情を抱きながら、美しい裸身をベッドに横たえさせた。
「医師の話では容態は落ち着いているそうです。今日のところはこのまま休ませましょう」
ボナーの言葉に頷き、パンナは彼に肩を抱かれ部屋へ向かった。夫婦となった二人のために用意された広い寝室に着くと、パンナはその豪華さに目を丸くした。
「あ、あの……本当にここが?」
「ええ。僕とパンナさ……おまえの部屋だよ」
肩を抱かれたまま間近でそう言われ、パンナの顔が真っ赤になる。しかしボナーの方が微妙にパンナより背が低いため、肩を抱く手が持ち上げたような状態になっているのがいまいちサマになっていなかった。
「こういう時、もう少し背が欲しいとつくづく思いますよ。恰好がつかなくてすいません」
「そ、そのような!わ、私こそこのような部屋を使わせていただくなど恐れ多くて」
「何を言ってるんです。あなたはもう僕の妻。サンクリスト公爵夫人なんですよ。堂々としていて下さい」
「は、はい」
緊張してコクコクと頷くパンナを見て、ボナーがぷっと吹きだす。それを見てパンナも笑顔になった。
「そう、それでいい。笑っていて下さい。それが僕の力になる」
「ボナー様……」
「違うでしょう?」
「はい。あ、あなた」
ボナーはゆっくりと頷き、パンナをベッドへ導く。二人でベッドに腰掛けると、ボナーは真剣な顔でパンナを見つめて話し始めた。
「まずは僕のところに来て下さってありがとうございます」
「おやめ下さい。私はあなたの理想に感銘を受け、あなたの支えになると決めたのです。傍に置いて下さりお礼を言うのはこちらの方ですわ」
「うん。そうですね。もう僕たちは夫婦なのですから、腹を割って話しましょう」
「はい。ですからその言葉づかいもおやめ下さい」
「お互いそうしましょう。いや、そうしよう。パンナ、早速だが話しておきたいことがある」
「はい」
「今この国は窮地にある。帝国が大規模な動きを見せつつあるという情報が入ってきていてね」
「噂は聞いています」
「王都は今ややこしい状況にあるようだ。ここへの軍の増派も見送られているし、このままでは取り返しのつかない状態になるかもしれない」
「そうですね」
「だから僕は王都へ行き、ハッサム殿下とキーレイ大公の力添えを得て軍の北部結集を陳情するつもりだ。表向きは家督相続の報告と礼という形を取るが」
「上手くいきましょうか?」
「いかせなければこの北部は帝国の手に落ちる。何としてもやり遂げなければならない。出来れば他の『四公』の賛同も得たい。それで思い出したんだが、アンセリーナ嬢の兄上、クリス殿はキシュナー家の嫡男、オランド殿と同級生だったはずだ」
「そうなのですか?」
「僕の記憶が確かならね。それでクリス殿からオランド殿へ僕の考えを伝え、キシュナー公に賛同して貰いたいんだ」
「クリス様は二、三日コットナーに逗留されるはずです。連絡をしてみましょう」
「頼む。手紙はメルキンに持たせる」
「就任早々大変ですね」
「ああ。だが父上はこういう状況だからこそ僕に家督を譲ったんだ。その期待に応えなければならない」
「はい」
「それで僕が留守の間、帝国に動きがあったり、何か問題が起きた時はあなたにこのサンクリスト家を守ってもらいたい」
「わ、私にそのような大役は……」
「あなたにしか出来ないんです。ギルバートは正直言って信用できない。僕が自分の名代としてあなたの命に従うよう言い残しておきます」
「言い残すなんて言葉を使わないで!」
思わず出た叫びにパンナははっとして「申し訳ありません」と頭を下げる。
「パンナ……」
「あなたはこの国に必要な方。無事にお戻りになって、この国を守って下さい」
「ええ。せっかくあなたと結婚出来たのに新婚生活も楽しめないのは御免ですからね」
「まあ」
照れて俯くパンナの顔に手を当て、ボナーはそっと顔を寄せる。そのまま顔を上げさせ、しばらく見つめ合った後、二人は優しく唇を重ねた。
「……」
唇を話した後、しばらく沈黙が続き、ボナーは困ったように頭を掻く。
「すいません。そのこういうことに慣れていないもので。気の利いた言葉の一つも言えればいいのですが」
「い、いえ、私こそ」
「こういう気持ちに……女性を好きになったのは初めてなので」
「今までお付き合いをされていた方はいらっしゃらないのですか?」
「はい。そういう機会に恵まれなかった、というのは言い訳ですね。実際は背の低いことを気にして気後れしていただけなんでしょう」
「ボナー様のお立場であればそのような事は何の問題にもならないでしょう」
「『四公』の立場を狙って近づく女性に興味はありません。あなたならお分かりでしょう?」
「はい」
家格の低い家の出である母。しかしその母が厳格で誇り高い女性だったから、ボナーは女というものに対してある種の壁というか理想を高く持ってしまったようにパンナには思えた。ある意味それは呪いのようなものだ、と感じる。
「ですが……さしでがましいことを申し上げるようですが」
「構いませんよ。僕たちは夫婦なのですから」
「その、もしかしたら純粋にボナー様のお人柄に惹かれた女性がいらしたのではいかと。貴族の娘だからといって家格にこだわる人間だけではないと思います」
「そうですね。だからそこは僕が逃げていたということでしょう。それは反省しています。でもそのおかげで僕はあなたと出会えた。それは本当に嬉しい事です」
「身に余るお言葉ですが、今こうしていてももっとあなたにふさわしい女性がいたのではないかと不安になってしまうのです」
「そんな事はない。これまでお披露目に出たことも何回かありましたが、あなたのように心を惹かれた人はいなかった。運命の出会いだと僕は信じています」
「本当に私でよろしいのですか?」
「あなたでなければダメなんです。本当にこんな気持ちになったのは初めてで自分でも驚いているのですが、あなたが愛おしくてたまらない。メルキンにも心配されていたようです。僕が女性に興味がないのではないかとね。でも興味がなかったわけじゃないんです。ただ何というか……」
「私はモンテーニュ様のようにご立派な女性ではありませんわ」
「え?」
「失礼を承知で申し上げます。あなたはお母上を尊敬なさるあまり、他の女性にも同じだけの高潔さをお求めになっておられるのではありませんか?背の低いことを理由に逃げていたとおっしゃいましたが、本当はモンテーニュ様の高潔さを持つ方を求めていらしたのでは?」
「そう……か。そうですね。知らず知らず僕は母の幻影を追いかけていたわけか」
「差し出がましいことを申し上げました。お詫びいたします」
「何を言ってるんです!そういうことを言ってくれる者は今までいなかった。僕の未熟さを指摘してくれるものは精々メルキンくらいで、それでも今のように踏み込んだことを言ってはくれなかった。あなたを妻に出来て改めて本当によかったと思っています」
「ありがとうございます」
「あなたは母の代わりなんかじゃない。一人の女性としてあなたを愛しているんです。それは信じてほしい」
「勿論です。私も……お披露目であなたに初めてお会いした時から心惹かれておりました。お見合いであなたの理想を聞き、ますます。……でもあまりにも立場が違いすぎてとても叶わぬ想いだと思っておりました」
「やはりこれは運命ですよ。僕は本当に幸せです」
「私も……これ以上ないほど幸せです」
再び沈黙が降り、二人は照れて目をそらした。ぼうっとした頭でパンナはメイドの間で交わした会話を思い出し、乏しい性知識を引っ張り出す。
『こ、これはあれよね。ふ、ふ、夫婦なんだし、初めての夜なんだし、そ、そ、そういうことをする……のよね』
胸がドキドキとして顔が真っ赤になる。現実感が希薄で、夢の中にいるような心持だった
「どうしました?」
そんなパンナを見てボナーが心配そうに顔を覗き込む。
「い、いえ何でも!で、ですがまたお互いよそよそしい口調になってしまってますわね」
「ああ、そうですね。やっぱりいきなりは難しいのかな。でも少しずつ慣れていきましょう」
「そ、そ、そうですね」
「本当に大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが」
「は、はい。その……ボナーさ……あなたは女性に興味がないわけではないとおっしゃいましたわよね?」
「ええ。特にあなたには興味津々ですよ」
ボナーの言葉にパンナはさらに照れて頭に血が昇る。
「こ、こういう時はその……どうするかはお分かりですのね」
「こういう時とは?」
「で、ですから私たちはもう夫婦ですし、その、は、初めて夜を共に過ごすわけですし……」
パンナの言葉の意味を悟り、ボナーも顔が真っ赤になる。
「そ、そうですね。その……ええと、あ、あなたさえお嫌でなければ」
「嫌だなんて!」
「す、すいません。恥ずかしながらこういうことは初めてでして」
「わ、私もです」
「無理はなさらなくてもいいですよ」
「い、いえ。ボナー様が、あなたが私を求めてくださるのなら、私は喜んで」
「愛しています。僕は……あなたが欲しい」
ボナーが真剣な顔で見つめられ、パンナは小さく頷いて立ち上がると、金髪のウィッグを外し、ドレスに手をかける。そのまま服を脱ぎ捨て、全裸になってボナーの前に立つ。
「綺麗だ」
「あ、あまり見つめないでください。恥ずかしいです」
そう言いながら体を隠すことなくパンナはボナーの前に立ち続ける。そして彼が立ち上がると強く抱擁し、キスを交わした。
「いいんですね?」
「はい。私を愛してください」
パンナの言葉に頷き、ボナーも衣服を脱ぎ捨てる。たくましい裸身が露わになり、パンナは思わず息を呑んだ。
『初めての相手が『四公』になるなんて。少し前の私だったらとても信じられなかったわね』
パンナは恥ずかしさと喜びと困惑が混じり合った感情を抱きながら、美しい裸身をベッドに横たえさせた。
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