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「悪かったって。ああするしかどっちにしろレイラは政略結婚させられてたじゃないか」
「そうよ!」
「なら、何でそんなに怒ってるんだよ…」
「少しだけカッコいいって思ったのが嫌なのよ」
「え? 何か言った?」
「何でもない!」
町を出てからのレイラは不機嫌だった。まぁ、あんな無理矢理なことしたら当然か。
にしても、これからどうするかなー。
「それで、これからどうするの?」
「分かんねぇ。そもそも魔王って何するんだ?」
「うーん…他の魔王はそれぞれの種族の長として国を作ってるわね。
人間も関わらないようにしてるわ。不可侵条約が長年保たれてるの」
「へぇー魔王って凄いんだな」
「凄いってレベルじゃないわよ。私たちからすれば、畏怖すべき存在な訳なんだし」
「俺はどうなんだ?」
「…変人ね」
「なかなか厳しい評価だなー」
レイラと喋りながらトボトボと歩き続ける。
「なぁ、俺が魔王だってのはすぐに分かるものなのか?」
「一目見れば分かるわよ。加護によって相手がどういった存在なのか私たちは分かるの」
『職…に近い物が即座にステータスとして判断出来るようになっています』
なるほどねー。なら、俺が大きな街に行くのはマズイ感じか。
「大きな街にも行けないしどうしたものかね」
「私が知る訳ないでしょ! あぁ、もう! どうしてこんなことになったのよ…」
「そう怒るなって。どっちにしろあのままだったらしたくもない結婚をさせられてたんだしさ」
「まぁ、そうなんだけど…」
「魔王は各種族の王か…。俺は何の魔王なんだろうか」
『何にも属していません』
何にも属してないってどういうこと?
『言葉の通りです。サタン様は魔物という種族の括りが無いのです』
それって何かマズイのか?
『問題は無いです。ですが、魔王としての存在意義は失っています』
存在意義か…。前世でも何のために存在してるのかって考えてたっけか。
「と、止まれ!!」
「レイラ、何か言った?」
「私じゃないわよ」
「なら、誰?」
「俺たちだ! 止まれ!」
声のする方を向くと何十という魔物がいた。何なんだ?
『種族ゴブリン。この世界では無害であり、時には人の助けとなる存在です』
メチャクチャいい奴じゃん。なんでそれが殺気立ってるんだ。
「分かった。止まるよ。どうしたんだ? そんなに殺気立って」
「魔王がこんな辺境の地へ来るなんて聞いてないぞ! しかも、知らない魔王だ。俺たちをどうする気だ!?」
「なぁ、魔王ってもしかしなくても悪い奴?」
「どうなのかしら。魔物から魔王に対してどう思ってるのか考えたことも無かったわ」
「人間!? 人間が魔王に襲われてるぞ!」
うおおおぉぉぉーーー!! という怒号と共にゴブリン達が一斉に襲ってきた。
マジかよ。俺がレイラを襲ってるって勘違いしたのか。
システムガイド。この状況をうまく切り抜ける方法は?
『攻撃魔法全般はゴブリンを倒してしまいます。よって、プリズンが最適です』
「了解っと。プリズン!!」
魔法の発動と共に俺とレイラの周りに鏡のような物が積まれていく。
防御魔法ってことか。
『その通りです。全ての攻撃を防ぐ絶対防御魔法。更に! 攻撃も反射する効果もあります』
通販番組みたいな謳い文句だったな。ん? 反射?
「うわあああぁぁぁーーー!!」
「仲間がやられたぞ!」
「クソー…。魔王強すぎる」
『レベルが3→4になりました』
なりました。じゃねぇぇぇーーー!! 無害であるゴブリンを傷付けないようにしてたのに。
『回復魔法があります。どうしますか?』
「リザレクションヒール」
「傷が…治っていく…」
使うに決まってる。俺は殺したいわけじゃ無いからな。
「なぜだ?」
「なぜって。戦う気が無いし別に何かしようってことも無い」
「魔王なのに…」
魔王の印象最悪だな。…なぁ、俺のレベルって相手から見えるのか?
『見えるように許可すれば見えるようになります』
なるほどね。だったらーーー
「魔王だけど弱いんだぜ。俺のレベルの可視化を許可する」
パアアアァァァという効果音と共に何かが変更された。仰々しい演出だな。
「魔王、レベル…4? 嘘だろ」
「分かったろ? 俺は弱いんだって」
「レベル4でその強さ…」
ゴブリン達は意を決したように俺へと向き直ると深々を頭を下げた。
「今までの非礼をお許し下さい。また、こんな事を言える立場では無いのですが、一つだけお願いを聞いては貰えないでしょうか」
「お願い?」
「はい。実はーーー」
どうやら、ゴブリンの街を襲ってる魔物がいるらしい。種族名 オーク。人間と仲が良いゴブリンは交易も盛んで、物資が豊富にある。そこを狙われたのだ。
どこの世界も理不尽な弱肉強食ってのはあるんだな。
「まさかとは思うけど、助けるなんて言わないわよね?」
「え!? よく分かったな」
「はぁー…あのね、オークはゴブリンとは違ってかなり強い魔物なのよ。レベル4のあなたが敵う訳ないでしょ!」
そうなのか?
『真正面から近接戦をした場合は確実に負けます。ですが、魔法での戦闘なら負ける要素はゼロです』
言うねー。確かに力比べだと俺の負けだよな。体は人間そのものだし。
「何にせよやってみないと分からないだろ?」
「やった結果、死んだらどうするのよ…」
「心配してくれてるの?」
バチン! と大きな音が響き渡る。マジか。思い切りビンタされたの初めてなんだけど。メチャクチャ痛い。
『世界に通用する逸材です。あのビンタは世界を獲れます』
確かにそんな威力だった。だって魔物であるゴブリンが恐怖で下がるぐらいだし。
まぁ、そんなことよりオークか。レベル上げがてら頼まれますか。
俺はゴブリンからのお願いを承諾して村へと向かう。
「そうよ!」
「なら、何でそんなに怒ってるんだよ…」
「少しだけカッコいいって思ったのが嫌なのよ」
「え? 何か言った?」
「何でもない!」
町を出てからのレイラは不機嫌だった。まぁ、あんな無理矢理なことしたら当然か。
にしても、これからどうするかなー。
「それで、これからどうするの?」
「分かんねぇ。そもそも魔王って何するんだ?」
「うーん…他の魔王はそれぞれの種族の長として国を作ってるわね。
人間も関わらないようにしてるわ。不可侵条約が長年保たれてるの」
「へぇー魔王って凄いんだな」
「凄いってレベルじゃないわよ。私たちからすれば、畏怖すべき存在な訳なんだし」
「俺はどうなんだ?」
「…変人ね」
「なかなか厳しい評価だなー」
レイラと喋りながらトボトボと歩き続ける。
「なぁ、俺が魔王だってのはすぐに分かるものなのか?」
「一目見れば分かるわよ。加護によって相手がどういった存在なのか私たちは分かるの」
『職…に近い物が即座にステータスとして判断出来るようになっています』
なるほどねー。なら、俺が大きな街に行くのはマズイ感じか。
「大きな街にも行けないしどうしたものかね」
「私が知る訳ないでしょ! あぁ、もう! どうしてこんなことになったのよ…」
「そう怒るなって。どっちにしろあのままだったらしたくもない結婚をさせられてたんだしさ」
「まぁ、そうなんだけど…」
「魔王は各種族の王か…。俺は何の魔王なんだろうか」
『何にも属していません』
何にも属してないってどういうこと?
『言葉の通りです。サタン様は魔物という種族の括りが無いのです』
それって何かマズイのか?
『問題は無いです。ですが、魔王としての存在意義は失っています』
存在意義か…。前世でも何のために存在してるのかって考えてたっけか。
「と、止まれ!!」
「レイラ、何か言った?」
「私じゃないわよ」
「なら、誰?」
「俺たちだ! 止まれ!」
声のする方を向くと何十という魔物がいた。何なんだ?
『種族ゴブリン。この世界では無害であり、時には人の助けとなる存在です』
メチャクチャいい奴じゃん。なんでそれが殺気立ってるんだ。
「分かった。止まるよ。どうしたんだ? そんなに殺気立って」
「魔王がこんな辺境の地へ来るなんて聞いてないぞ! しかも、知らない魔王だ。俺たちをどうする気だ!?」
「なぁ、魔王ってもしかしなくても悪い奴?」
「どうなのかしら。魔物から魔王に対してどう思ってるのか考えたことも無かったわ」
「人間!? 人間が魔王に襲われてるぞ!」
うおおおぉぉぉーーー!! という怒号と共にゴブリン達が一斉に襲ってきた。
マジかよ。俺がレイラを襲ってるって勘違いしたのか。
システムガイド。この状況をうまく切り抜ける方法は?
『攻撃魔法全般はゴブリンを倒してしまいます。よって、プリズンが最適です』
「了解っと。プリズン!!」
魔法の発動と共に俺とレイラの周りに鏡のような物が積まれていく。
防御魔法ってことか。
『その通りです。全ての攻撃を防ぐ絶対防御魔法。更に! 攻撃も反射する効果もあります』
通販番組みたいな謳い文句だったな。ん? 反射?
「うわあああぁぁぁーーー!!」
「仲間がやられたぞ!」
「クソー…。魔王強すぎる」
『レベルが3→4になりました』
なりました。じゃねぇぇぇーーー!! 無害であるゴブリンを傷付けないようにしてたのに。
『回復魔法があります。どうしますか?』
「リザレクションヒール」
「傷が…治っていく…」
使うに決まってる。俺は殺したいわけじゃ無いからな。
「なぜだ?」
「なぜって。戦う気が無いし別に何かしようってことも無い」
「魔王なのに…」
魔王の印象最悪だな。…なぁ、俺のレベルって相手から見えるのか?
『見えるように許可すれば見えるようになります』
なるほどね。だったらーーー
「魔王だけど弱いんだぜ。俺のレベルの可視化を許可する」
パアアアァァァという効果音と共に何かが変更された。仰々しい演出だな。
「魔王、レベル…4? 嘘だろ」
「分かったろ? 俺は弱いんだって」
「レベル4でその強さ…」
ゴブリン達は意を決したように俺へと向き直ると深々を頭を下げた。
「今までの非礼をお許し下さい。また、こんな事を言える立場では無いのですが、一つだけお願いを聞いては貰えないでしょうか」
「お願い?」
「はい。実はーーー」
どうやら、ゴブリンの街を襲ってる魔物がいるらしい。種族名 オーク。人間と仲が良いゴブリンは交易も盛んで、物資が豊富にある。そこを狙われたのだ。
どこの世界も理不尽な弱肉強食ってのはあるんだな。
「まさかとは思うけど、助けるなんて言わないわよね?」
「え!? よく分かったな」
「はぁー…あのね、オークはゴブリンとは違ってかなり強い魔物なのよ。レベル4のあなたが敵う訳ないでしょ!」
そうなのか?
『真正面から近接戦をした場合は確実に負けます。ですが、魔法での戦闘なら負ける要素はゼロです』
言うねー。確かに力比べだと俺の負けだよな。体は人間そのものだし。
「何にせよやってみないと分からないだろ?」
「やった結果、死んだらどうするのよ…」
「心配してくれてるの?」
バチン! と大きな音が響き渡る。マジか。思い切りビンタされたの初めてなんだけど。メチャクチャ痛い。
『世界に通用する逸材です。あのビンタは世界を獲れます』
確かにそんな威力だった。だって魔物であるゴブリンが恐怖で下がるぐらいだし。
まぁ、そんなことよりオークか。レベル上げがてら頼まれますか。
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