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農家の娘と、王位継承権一位の王子の元に生まれた子、それが私。今ではその父がこの国の王だ。

この国は一夫多妻制を採用しており、母もそんなたくさんいる妻の一人。と母からは聞いているが、実体は妾(めかけ)の一人にすぎなかったようだ。

庶民の血が混ざっているから、小さい頃から当然酷く差別された。

一緒に遊びたいと思い話しかけた同級生にも「庶子(しょし)が来た!みんな逃げてー!」と言われ、彼女らとまともに会話することさえできなかった。

こんな人生の始まりでぐれない方がおかしい。ティーンエイジャーになる頃には、私に話しかけた人みんなにキツく当たるようになった。

そんな私の名前はフレーズ(fraise)。フランスでは「remenger ta fraise」という下品なスラングの一部に使われる表現であり、フランスの裁判所はこの名前をつけようとした親に、その子の名前を改名するよう指示している。ちなみに、「ケツ上げな。こっち来い。」という意味だ。

そんな私とは正反対に、チヤホヤされる姫がいる。私の父の正室の娘で、名はエズメ。

小さな頃からそれはもう大切に育てられた。私の2歳年下だが、その恵まれた環境が羨ましかった。

そんな周囲の人間の鼻を明かすべく、小学校に入ってからは必死に勉強した。そうして視力が悪くなり、眼鏡をかけると「ガリ勉」だとさらに笑われた。

それでも私は努力することを止めなかった。毎日学校が終われば王室の図書室にこもって本を読んだ。幸い王室には、学校の図書館の蔵書にも負けない数の本が並んだ大きな図書室があった。

誰も私の味方はいなかった。どうせ悪口しか言われないからと、私に話しかける人間全てに威嚇していたら、私の周りに誰も人はいなくなった。

そんな私に転機が訪れたのは、もうすぐ20歳の誕生日を迎えるという、ある日のことだった。
エズメがうつ病と診断されたのだ。

「どうしましょう、奥様。」
「エズメは今どこに?」
「お部屋に引きこもってらっしゃいます。」

王室全体がざわついているのがわかる。私は自分の部屋の中で、この屋敷の使用人や、エズメの母親の声を聞いていた。

こんな慌てたエズメの母は見たことがない。彼女はもちろん私の父の正室であり、現在の女王である。

直接話したことはないが、私は彼女から言付かった嫌味を他の側室たちから何度も聞いた。

私はふと思った。これはチャンスなのではないかと。エズメは生まれてからこれまで受けてきた重圧に耐えきれなくなったのだろう。

私はエズメと同じく、王室の一員としてのマナーは身につけてきている。それに加えて、5カ国後をネイティブレベルに話せるし、この国の政治家にも劣らない教養を身につけている。

次の女王は私だ。
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