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第6話 脱走系王太子、憂鬱
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脱走系王太子発見係。それが私だ。
私の得意な魔法は基礎の基礎である家事魔法系。そして対象物品と縁のある人間を探し出すもの。それがかつて妖精から祝福され受け取った初めての魔法だった。もともと魔法を行使する資格のない私は、子供の頃に妖精から偶然祝福を受け、後天的に魔法使いとなった。だが祝福を授けたのは偉大な精霊等ではなく、探し物を見つけるのが得意な低級妖精の内の1匹、ランプ・ブラウニー。私に授けられた魔法もまた低級妖精レベルなのだ。
さて現王の一人息子であり、王太子であるアドニスには脱走癖がある。そうして探し物特化型魔法使いの私は、いつの間にか王太子探索係と化していた。子供のころから王宮の魔法棟に出入りしていたが、アドニスの逃亡癖は年々悪化しているように思えてならない。
以前アドニスからもらったイヤリングから行き先を探す。
「追いかけて、ランプ・ブラウニー」
そっと囁くと、答えるようにイヤリングが輝きだす。
光り輝くイヤリングから伸びる光。それが持ち主とものを繋ぐ”縁”だ。縁を辿って目を凝らすと街の方へ蝶の鱗粉のようなキラキラが続いている。私は紙でできたオオスカシバに乗って街へ逃げ出したアドニスの元へと向かった。
程なくてして見つかったアドニスは街の食堂にいた。貴族など来なさそうな雑然とした食堂の入り口に私が立つと、食堂の中が少しざわつく。私の羽織った宮廷魔法使いのローブのせいだ。普通ならエリートである宮廷魔法使いがこんな大衆食堂に来るはずがない。
そうすると、騒ぎにしたくないアドニスは致し方なく店の外へと出てくるのだ。
「お戻りください、殿下」
「見つかっちゃったなあ。カトレアの魔法って、どうにか撒けないの?」
「はるか遠く、国外に出ればあるいは、ですかね」
アドニスは悪びれもしない。もっとも、私も本気で怒ったりはしない。王太子が逃げ出さなくなったら私の存在意義の大半が失われる。最低級と言ってもおかしくない魔法使いである私が、今も宮廷魔法使いの末席にいられるのは、得意な魔法を行使しての王太子探しがあってこそなのだ。
ただよわよわ魔法使いである私は人が二人乗れるような精霊を使役することも、それほどの強度のある紙の遣いを作れるほどの技量もないため、大半は歩いて王宮まで帰ることとなる。残念ながら私の相棒オオスカシバは一人乗りだ。以前アドニスと二人乗りしようとして墜落した前科がある。
「魔法っていうのは便利だなあ。僕も覚えられたら楽しいだろうなあ。カトレア、元は魔法使いじゃないんでしょ」
「殿下が覚えるようなものではありませんよ。それに後天的に魔法使いになろうとすると事故も多いと聞きます」
アドニスの目は美しい海の色だ。魔法を使うことも、妖精を見ることもできない。妖精を見ることができるのは紫眼だけだ。
私は偶然妖精から祝福を受けて魔法が使えるようになったが、通常妖精に「魔法を使えるようにしてほしい」とお願いするとろくでもないことしかされないのだという。
シモン曰く、妖精たちは魔法を使えない、見ることもできない人間のことを見下していて、魔法使いになりたがる人間のことを身の程知らずと心底嫌悪している。そして人間のルールなど知らない彼らは相手が王族だとかそんなことは考慮してくれない。下手したら芋虫に変身させられた挙句鳥の群れに放り出されるかもしれない。
彼らは忖度しない。純粋であり、純粋であるがために理不尽だ。
アドニスはさほど残念でもなさそうにふうん、と気のない返事をした。
「妖精ってさ、どんな姿をしてるの?」
「大抵は小さな人の姿です。翅のある者もいますし、ない者もいます。醜い者も、美しい者もいます」
「ふうん」
何かを見るように宙に視線を向けるアドニス。けれどその視線の先には何もいない。街の建物から顔をのぞかせる妖精たちは遠巻きに彼のことを見ていた。
「君って王宮にいるときはバタバタしてるけど、僕のことを迎えに来るときはいつも落ち着いてるよね。魔法の使い方が違うの?」
「ええ、王宮で雑務をするときは、その場その場で妖精にお願いをして力を貸してもらっています。でもこうして殿下を探すときは『祝福』を受けた魔法しか使わないのでいちいちお願いや交渉をする必要がないんですよ」
普段の私はバタバタしているように見えているのかと、心中苦笑する。
魔法には2種類ある。
一つは、その場にいる妖精、あるいは場に召喚した妖精に手を貸してくれるよう依頼するもの。大抵の魔法使いはこの方法で魔法を行使している。非魔法使いには見えないが、どこにでも妖精たちは住み着いているのだ。
もう一つが、妖精から『祝福』を受け、以降依頼することなく『祝福』を受けた内容の魔法を行使することができるもの。この魔法が使える者はあまりいない。よほど特定の妖精に気を掛けられなければ『祝福』を受けることはできない。私の場合は、本当に偶然が重なっただけだ。
シモンはどちらの魔法も誰よりもうまく使いこなす。お願いすれば断る妖精はいないし、彼が望まずとも彼を祝福したい妖精はごまんといる。妖精からの寵愛を一身に受けるからこそ、彼は若くして最高の魔法使いなのだ。その代わり、妖精に好かれるリスクも同じだけ背負うことになっているのだが。
ただこの非魔法使いのアドニスがそこまで私たちの魔法を見ているとは思わなかった。
「君たちの見ている世界は、きっと素敵なんだろうね」
「ええ、私たちには人よりも多くのものが見えています。ただすべての人に妖精の姿が見えていたら社会は成り立たなくなると思いますよ。彼らのすべてが人間に友好的なわけではありませんし、扱いにくい者たちがほとんどです」
気まぐれで、快楽を好み、悪戯を愛する彼らと、この人間の社会は決して相容れない。もしすべての人間がその姿を見られるようになったなら、きっと彼らは姿を隠すだろう。そうなったとき、この魔法使いという神秘は蜃気楼のようにこの国から姿を消すだろう。
だだ妖精から愛想をつかされる日はそう遠くないかもしれない。我々が妖精にする願って行使する魔法が、政治や戦争に使われるようになったら、彼らは呆れ、離れていくだろう。何を、どこまでしていいのか、その基準を持たない私たちは常に手探りだ。
ふと一匹の妖精がアドニスの顔を覗き込んだ。覗き込まれていることにも気が付かないアドニスに妖精はクスクスと笑う。私と目が合うと彼女はまた笑う。しかしすぐに興味をなくしてどこかへと飛んで行った。
夢は夢のままでいい。過ぎたものを望めば、碌なことにならない。あとはどれだけ偶然に愛されるか。ただ偶然という奇跡に祈るよりほかにない。
「ところで話は変わるけど君、シモンと結婚するらしいね」
本当に話が変わった。何もないところで躓きかける。
大丈夫?と気の抜けた声が降って来た。私ですらさっき知った話をどうしてアドニスがすでに知っているのかと瞠目する。
「そんなことを言っていたかと思いますが、私にもいまだ理解不能です」
「そもそもシモンっていう大魔法使いが結婚だなんて陳腐なことするとは思わなかったなあ」
「陳腐って……殿下が吹き込んだわけじゃないんですね」
「言い方が不敬だなあ。まあ僕じゃないよ。ただなんだかんだ、彼にあれこれ吹き込もうとする人間は多いだろうね」
宮廷魔法使い筆頭のシモンと王太子のアドニスは仲がいい。
年の差はそれなりにあるが、若くして王宮入りしたシモンは、アドニスのことを幼少期からずっと見守ってきた。貴族としての常識がなく、魔法一辺倒なシモンは、アドニスにとって目を引く存在であり、周囲の大人とはまた違う、特別な存在だったのだろう。雇用者と被用者である以前に、彼らは仲のいい友人でもある。
だからこそアドニスがシモンに吹き込んだのだろうと思ったのだが、違ったらしい。
人から吹き込まれたのか、はたまた自身の思い付きか。いずれにしてもほいほい実行に移そうとするあたり、いつまでたっても一般常識と言うものが身につかない人だな、と天を仰ぐ。
「僕も結婚しないといけないかなあ」
王宮の正門が見え、門番が私たちの姿を認め慌ただしく動き始めるのを眺めながら、ポツリと彼はそう言った。
この国の王太子であり、兄弟のいない身である彼には、選択の自由など与えられない。生まれた時から良い王子であることを求められ、賢王となることを教え込まれる。
彼はきっと、そうなるだろう。秀才であり、努力家である彼の前には最善の未来しか敷かれていない。未来は何も疑いようがないのだ。たとえ外れてみたいという好奇心が、彼の心の奥底にあろうとも。
けれど彼はいずれ運命的な出会いを果たすことになる。
「……私で良ければ愚痴でもなんでも聞かせていただきます。どうか、お戻りください」
王太子捜索係である私とともに王宮へ帰るまでの雑談は、きっと彼の息抜きにもなっているだろう。この最善であろうとする真面目なアドニスのガス抜き役として、並び歩くことができるなら、喜んでその役を承ろう。
けれどその手を引いて、彼の望みを叶えることは決してない。
彼は一国の王となるべき人であり、私はただのポンコツ魔法使いだ。
何より、逃げられては困るのだ。
彼にはシンデレラと結婚してもらわなければならないのだから。
尊敬していないわけではない。
年の近さ故のある種の気安さを気に入っていないわけでもない。
だがそれでも、私はアドニスの人格を尊重できない。尊重しない。彼を囲むすべての人と同じように。
不誠実で打算に塗れた私は、今日も近衛兵に王太子の身柄を引き渡すのだ。
それから数日後、王宮より舞踏会の招待状が我が家に届いた。
私の得意な魔法は基礎の基礎である家事魔法系。そして対象物品と縁のある人間を探し出すもの。それがかつて妖精から祝福され受け取った初めての魔法だった。もともと魔法を行使する資格のない私は、子供の頃に妖精から偶然祝福を受け、後天的に魔法使いとなった。だが祝福を授けたのは偉大な精霊等ではなく、探し物を見つけるのが得意な低級妖精の内の1匹、ランプ・ブラウニー。私に授けられた魔法もまた低級妖精レベルなのだ。
さて現王の一人息子であり、王太子であるアドニスには脱走癖がある。そうして探し物特化型魔法使いの私は、いつの間にか王太子探索係と化していた。子供のころから王宮の魔法棟に出入りしていたが、アドニスの逃亡癖は年々悪化しているように思えてならない。
以前アドニスからもらったイヤリングから行き先を探す。
「追いかけて、ランプ・ブラウニー」
そっと囁くと、答えるようにイヤリングが輝きだす。
光り輝くイヤリングから伸びる光。それが持ち主とものを繋ぐ”縁”だ。縁を辿って目を凝らすと街の方へ蝶の鱗粉のようなキラキラが続いている。私は紙でできたオオスカシバに乗って街へ逃げ出したアドニスの元へと向かった。
程なくてして見つかったアドニスは街の食堂にいた。貴族など来なさそうな雑然とした食堂の入り口に私が立つと、食堂の中が少しざわつく。私の羽織った宮廷魔法使いのローブのせいだ。普通ならエリートである宮廷魔法使いがこんな大衆食堂に来るはずがない。
そうすると、騒ぎにしたくないアドニスは致し方なく店の外へと出てくるのだ。
「お戻りください、殿下」
「見つかっちゃったなあ。カトレアの魔法って、どうにか撒けないの?」
「はるか遠く、国外に出ればあるいは、ですかね」
アドニスは悪びれもしない。もっとも、私も本気で怒ったりはしない。王太子が逃げ出さなくなったら私の存在意義の大半が失われる。最低級と言ってもおかしくない魔法使いである私が、今も宮廷魔法使いの末席にいられるのは、得意な魔法を行使しての王太子探しがあってこそなのだ。
ただよわよわ魔法使いである私は人が二人乗れるような精霊を使役することも、それほどの強度のある紙の遣いを作れるほどの技量もないため、大半は歩いて王宮まで帰ることとなる。残念ながら私の相棒オオスカシバは一人乗りだ。以前アドニスと二人乗りしようとして墜落した前科がある。
「魔法っていうのは便利だなあ。僕も覚えられたら楽しいだろうなあ。カトレア、元は魔法使いじゃないんでしょ」
「殿下が覚えるようなものではありませんよ。それに後天的に魔法使いになろうとすると事故も多いと聞きます」
アドニスの目は美しい海の色だ。魔法を使うことも、妖精を見ることもできない。妖精を見ることができるのは紫眼だけだ。
私は偶然妖精から祝福を受けて魔法が使えるようになったが、通常妖精に「魔法を使えるようにしてほしい」とお願いするとろくでもないことしかされないのだという。
シモン曰く、妖精たちは魔法を使えない、見ることもできない人間のことを見下していて、魔法使いになりたがる人間のことを身の程知らずと心底嫌悪している。そして人間のルールなど知らない彼らは相手が王族だとかそんなことは考慮してくれない。下手したら芋虫に変身させられた挙句鳥の群れに放り出されるかもしれない。
彼らは忖度しない。純粋であり、純粋であるがために理不尽だ。
アドニスはさほど残念でもなさそうにふうん、と気のない返事をした。
「妖精ってさ、どんな姿をしてるの?」
「大抵は小さな人の姿です。翅のある者もいますし、ない者もいます。醜い者も、美しい者もいます」
「ふうん」
何かを見るように宙に視線を向けるアドニス。けれどその視線の先には何もいない。街の建物から顔をのぞかせる妖精たちは遠巻きに彼のことを見ていた。
「君って王宮にいるときはバタバタしてるけど、僕のことを迎えに来るときはいつも落ち着いてるよね。魔法の使い方が違うの?」
「ええ、王宮で雑務をするときは、その場その場で妖精にお願いをして力を貸してもらっています。でもこうして殿下を探すときは『祝福』を受けた魔法しか使わないのでいちいちお願いや交渉をする必要がないんですよ」
普段の私はバタバタしているように見えているのかと、心中苦笑する。
魔法には2種類ある。
一つは、その場にいる妖精、あるいは場に召喚した妖精に手を貸してくれるよう依頼するもの。大抵の魔法使いはこの方法で魔法を行使している。非魔法使いには見えないが、どこにでも妖精たちは住み着いているのだ。
もう一つが、妖精から『祝福』を受け、以降依頼することなく『祝福』を受けた内容の魔法を行使することができるもの。この魔法が使える者はあまりいない。よほど特定の妖精に気を掛けられなければ『祝福』を受けることはできない。私の場合は、本当に偶然が重なっただけだ。
シモンはどちらの魔法も誰よりもうまく使いこなす。お願いすれば断る妖精はいないし、彼が望まずとも彼を祝福したい妖精はごまんといる。妖精からの寵愛を一身に受けるからこそ、彼は若くして最高の魔法使いなのだ。その代わり、妖精に好かれるリスクも同じだけ背負うことになっているのだが。
ただこの非魔法使いのアドニスがそこまで私たちの魔法を見ているとは思わなかった。
「君たちの見ている世界は、きっと素敵なんだろうね」
「ええ、私たちには人よりも多くのものが見えています。ただすべての人に妖精の姿が見えていたら社会は成り立たなくなると思いますよ。彼らのすべてが人間に友好的なわけではありませんし、扱いにくい者たちがほとんどです」
気まぐれで、快楽を好み、悪戯を愛する彼らと、この人間の社会は決して相容れない。もしすべての人間がその姿を見られるようになったなら、きっと彼らは姿を隠すだろう。そうなったとき、この魔法使いという神秘は蜃気楼のようにこの国から姿を消すだろう。
だだ妖精から愛想をつかされる日はそう遠くないかもしれない。我々が妖精にする願って行使する魔法が、政治や戦争に使われるようになったら、彼らは呆れ、離れていくだろう。何を、どこまでしていいのか、その基準を持たない私たちは常に手探りだ。
ふと一匹の妖精がアドニスの顔を覗き込んだ。覗き込まれていることにも気が付かないアドニスに妖精はクスクスと笑う。私と目が合うと彼女はまた笑う。しかしすぐに興味をなくしてどこかへと飛んで行った。
夢は夢のままでいい。過ぎたものを望めば、碌なことにならない。あとはどれだけ偶然に愛されるか。ただ偶然という奇跡に祈るよりほかにない。
「ところで話は変わるけど君、シモンと結婚するらしいね」
本当に話が変わった。何もないところで躓きかける。
大丈夫?と気の抜けた声が降って来た。私ですらさっき知った話をどうしてアドニスがすでに知っているのかと瞠目する。
「そんなことを言っていたかと思いますが、私にもいまだ理解不能です」
「そもそもシモンっていう大魔法使いが結婚だなんて陳腐なことするとは思わなかったなあ」
「陳腐って……殿下が吹き込んだわけじゃないんですね」
「言い方が不敬だなあ。まあ僕じゃないよ。ただなんだかんだ、彼にあれこれ吹き込もうとする人間は多いだろうね」
宮廷魔法使い筆頭のシモンと王太子のアドニスは仲がいい。
年の差はそれなりにあるが、若くして王宮入りしたシモンは、アドニスのことを幼少期からずっと見守ってきた。貴族としての常識がなく、魔法一辺倒なシモンは、アドニスにとって目を引く存在であり、周囲の大人とはまた違う、特別な存在だったのだろう。雇用者と被用者である以前に、彼らは仲のいい友人でもある。
だからこそアドニスがシモンに吹き込んだのだろうと思ったのだが、違ったらしい。
人から吹き込まれたのか、はたまた自身の思い付きか。いずれにしてもほいほい実行に移そうとするあたり、いつまでたっても一般常識と言うものが身につかない人だな、と天を仰ぐ。
「僕も結婚しないといけないかなあ」
王宮の正門が見え、門番が私たちの姿を認め慌ただしく動き始めるのを眺めながら、ポツリと彼はそう言った。
この国の王太子であり、兄弟のいない身である彼には、選択の自由など与えられない。生まれた時から良い王子であることを求められ、賢王となることを教え込まれる。
彼はきっと、そうなるだろう。秀才であり、努力家である彼の前には最善の未来しか敷かれていない。未来は何も疑いようがないのだ。たとえ外れてみたいという好奇心が、彼の心の奥底にあろうとも。
けれど彼はいずれ運命的な出会いを果たすことになる。
「……私で良ければ愚痴でもなんでも聞かせていただきます。どうか、お戻りください」
王太子捜索係である私とともに王宮へ帰るまでの雑談は、きっと彼の息抜きにもなっているだろう。この最善であろうとする真面目なアドニスのガス抜き役として、並び歩くことができるなら、喜んでその役を承ろう。
けれどその手を引いて、彼の望みを叶えることは決してない。
彼は一国の王となるべき人であり、私はただのポンコツ魔法使いだ。
何より、逃げられては困るのだ。
彼にはシンデレラと結婚してもらわなければならないのだから。
尊敬していないわけではない。
年の近さ故のある種の気安さを気に入っていないわけでもない。
だがそれでも、私はアドニスの人格を尊重できない。尊重しない。彼を囲むすべての人と同じように。
不誠実で打算に塗れた私は、今日も近衛兵に王太子の身柄を引き渡すのだ。
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