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さくら1st写真集 編
さくら1st写真集編 6〜一緒に入る?〜
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遥香「はぁ~~……いい香り。やっぱり、ここでこうしてるのがいちばん落ち着く」
さくら「かっきー、くんくんし過ぎ…笑」
写真集の発売日を来週に控えた日の夜。
かっきーが、私の部屋へ来てくれていた。
休養中は実家に帰省する予定もあったらしいし、一人でのんびり休んでもらいたかったから、かっきーが私の部屋にいるのは久しぶりだった。
今はデリバリーで注文したご飯を一緒に食べ終えて、リビングのソファでくつろいでいる。あとはお風呂に入って眠るだけ、という状態だ。
うちのソファは二人用だから、横に並んで座っている……わけではなく。
かっきーが座っている前に私が重なって座るような格好になっていた。
私がバックハグされる形になるこの座り方が、かっきーのお気に入りらしい。
「さくちゃんの髪の良い香りを一生堪能できる」のが良いんだとか。
「さくちゃん、もっと後ろに寄りかかっていいんだよ?」
「えー?重くないの?」
「ぜ~んぜん。さくちゃん、綿毛みたいに軽いから」
「なにそれ~。かっきーだってそんなに変わらないでしょ?」
恋人同士とはいえ、具体的な体重は訊いたことがないし、訊かれたこともない。親しき仲にもなんとやら、だ。
でも、身長はほぼ同じで似たような体型だし、体重だって同じくらいのはず。
「どうかなー。私お休み中にあんまり運動しなかったから、ちょっとお腹がぷにぷにしてきたかも…」
「ほんとかな~?どれどれ…」
前を向いたまま後ろに手だけ伸ばして、かっきーのお腹のあたりを探ってみる。
「ちょっ、さくちゃんっ…くすぐったい…!」
「も~、これのどこがぷにぷになんだよ~。ちゃんとご飯食べてたの~?」
かっきーの食生活はなかなか個性的で、マスカットを2粒だけ食べて朝ごはんにしちゃうようなところがある。
私と一緒の時は同じくらい食べているけど、1人の時にどうしているのかはちょっと怪しい。
でも、服の上から確認した限りでは大きな変化はなく、これまでの体型を維持できていたらしい。
かっきーの健康状態に一安心したところで、キッチンのほうから聞き慣れたメロディーが流れてきた。
続いて、『お風呂が沸きました』という、女性の自動音声。
(よし…言うぞ……)
この部屋に住み始めてから聴き続けてきたこのメロディーだけど、今日はこれを聴くと緊張してしまう。
この日のために練ってきた私の"作戦"が始まる合図だからだ。
「あ、このお風呂の音も懐かしいな~。さくちゃん、私は後でいいから先に…」
「かっきー、えっと、、今日は、……一緒に入らない…?」
「………………ふぇ?」
かっきーがたっぷり3秒は固まった後で、「え」と「へ」の中間みたいな言葉を発した。
無理もない。
私の部屋で一緒にお風呂に入る提案をしたことなんて、これまで一度もなかったからだ。
「その…久しぶりに会えて嬉しいし…どうかな…?」
「い、いいの…?さくちゃんいつも、恥ずかしいからってお風呂は別々に…」
「ダメ…?」
「ううん!!入る、入りますっ、入ろう!」
「なんで一回敬語になったの?ふふふ」
お風呂がいまだに恥ずかしいのは、かっきーの言う通りだ。
初めてのお泊り旅行で一緒にお風呂に入ったことはあるけど。
あれはかっきーが半分寝ぼけて私に続いて入ってきてくれたおかげだし、外にある客室露天風呂で暗かったからまだ平気だった。
それよりも、部屋で一緒にお風呂に入るほうが恥ずかしいし緊張してしまう。
脱衣所で服を脱ぐ時って、かっきーと同じくらいのペースで脱いだほうがいいの?
湯船に浸かる時は正面から向かい合っていいの?
かっきーがシャンプーしてる時はどれくらい見ていいの?
考え出すと、キリがない。
でも、今日私が考えてきた"作戦"のためにお風呂は欠かせなかった。
(よし…第1段階はクリア。あとは…)
「じゃあ私、ちょっと洗い物してから行くね。かっきー、先に入ってあったまってて」
「うん、分かった」
私の部屋に常備してあるかっきー専用パジャマを持って、バスルームへ向かっていった。
(これで第2段階もOK…)
宣言した通り洗い物を手早く済ませてタオルで手を拭くと、寝室へ向かう。
クローゼットを開けて引き出しから取り出したのは、とあるブランドのロゴが入った袋。
(かっきー…喜んでくれるといいな…)
袋を握る手に力を込めると、私はバスルームへ向かった。
~続く~
※プロローグのシーンにつながって、次話へ続きます
さくら「かっきー、くんくんし過ぎ…笑」
写真集の発売日を来週に控えた日の夜。
かっきーが、私の部屋へ来てくれていた。
休養中は実家に帰省する予定もあったらしいし、一人でのんびり休んでもらいたかったから、かっきーが私の部屋にいるのは久しぶりだった。
今はデリバリーで注文したご飯を一緒に食べ終えて、リビングのソファでくつろいでいる。あとはお風呂に入って眠るだけ、という状態だ。
うちのソファは二人用だから、横に並んで座っている……わけではなく。
かっきーが座っている前に私が重なって座るような格好になっていた。
私がバックハグされる形になるこの座り方が、かっきーのお気に入りらしい。
「さくちゃんの髪の良い香りを一生堪能できる」のが良いんだとか。
「さくちゃん、もっと後ろに寄りかかっていいんだよ?」
「えー?重くないの?」
「ぜ~んぜん。さくちゃん、綿毛みたいに軽いから」
「なにそれ~。かっきーだってそんなに変わらないでしょ?」
恋人同士とはいえ、具体的な体重は訊いたことがないし、訊かれたこともない。親しき仲にもなんとやら、だ。
でも、身長はほぼ同じで似たような体型だし、体重だって同じくらいのはず。
「どうかなー。私お休み中にあんまり運動しなかったから、ちょっとお腹がぷにぷにしてきたかも…」
「ほんとかな~?どれどれ…」
前を向いたまま後ろに手だけ伸ばして、かっきーのお腹のあたりを探ってみる。
「ちょっ、さくちゃんっ…くすぐったい…!」
「も~、これのどこがぷにぷになんだよ~。ちゃんとご飯食べてたの~?」
かっきーの食生活はなかなか個性的で、マスカットを2粒だけ食べて朝ごはんにしちゃうようなところがある。
私と一緒の時は同じくらい食べているけど、1人の時にどうしているのかはちょっと怪しい。
でも、服の上から確認した限りでは大きな変化はなく、これまでの体型を維持できていたらしい。
かっきーの健康状態に一安心したところで、キッチンのほうから聞き慣れたメロディーが流れてきた。
続いて、『お風呂が沸きました』という、女性の自動音声。
(よし…言うぞ……)
この部屋に住み始めてから聴き続けてきたこのメロディーだけど、今日はこれを聴くと緊張してしまう。
この日のために練ってきた私の"作戦"が始まる合図だからだ。
「あ、このお風呂の音も懐かしいな~。さくちゃん、私は後でいいから先に…」
「かっきー、えっと、、今日は、……一緒に入らない…?」
「………………ふぇ?」
かっきーがたっぷり3秒は固まった後で、「え」と「へ」の中間みたいな言葉を発した。
無理もない。
私の部屋で一緒にお風呂に入る提案をしたことなんて、これまで一度もなかったからだ。
「その…久しぶりに会えて嬉しいし…どうかな…?」
「い、いいの…?さくちゃんいつも、恥ずかしいからってお風呂は別々に…」
「ダメ…?」
「ううん!!入る、入りますっ、入ろう!」
「なんで一回敬語になったの?ふふふ」
お風呂がいまだに恥ずかしいのは、かっきーの言う通りだ。
初めてのお泊り旅行で一緒にお風呂に入ったことはあるけど。
あれはかっきーが半分寝ぼけて私に続いて入ってきてくれたおかげだし、外にある客室露天風呂で暗かったからまだ平気だった。
それよりも、部屋で一緒にお風呂に入るほうが恥ずかしいし緊張してしまう。
脱衣所で服を脱ぐ時って、かっきーと同じくらいのペースで脱いだほうがいいの?
湯船に浸かる時は正面から向かい合っていいの?
かっきーがシャンプーしてる時はどれくらい見ていいの?
考え出すと、キリがない。
でも、今日私が考えてきた"作戦"のためにお風呂は欠かせなかった。
(よし…第1段階はクリア。あとは…)
「じゃあ私、ちょっと洗い物してから行くね。かっきー、先に入ってあったまってて」
「うん、分かった」
私の部屋に常備してあるかっきー専用パジャマを持って、バスルームへ向かっていった。
(これで第2段階もOK…)
宣言した通り洗い物を手早く済ませてタオルで手を拭くと、寝室へ向かう。
クローゼットを開けて引き出しから取り出したのは、とあるブランドのロゴが入った袋。
(かっきー…喜んでくれるといいな…)
袋を握る手に力を込めると、私はバスルームへ向かった。
~続く~
※プロローグのシーンにつながって、次話へ続きます
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