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飛鳥さん卒コン 編
最後の最後まで
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「 ……っていうお話を、どうしても直接お伝えしたかったんです」
飛鳥さんに背中を押される形になり、ついに私はかっきーとの関係を打ち明けた。
今まで秘密にし続けてきた後ろめたさのせいだろうか。
一度話し始めると言葉が次々と溢れ出そうになった。
かと言って、じっくりと話を聞いてもらうような時間は無いはずだから。
46時間TVがあった日の夜に、初めてキスしたこと。
翌朝、かっきーが私の部屋まで来て、告白してくれたこと。
私も、その気持ちに応えたこと。
それ以来、メンバーにもスタッフさんにも内緒で、交際を続けていること。
なるべく要点だけを、簡潔に、誠意を持って伝えた。
飛鳥さんは、私の話の所々で驚いて目を丸くしていたけど。
急かしたり止めたりすることもなく、私の顔をまっすぐ見ながら話を聞いてくれた。
いつもの様子で。
そう。思っていたよりもいつも通りだったので、話しながら気になっていたことを訊いてみた。
「あの、飛鳥さん、もしかして気付いてましたか…?」
「えっ?いや、そんなことないよ。これでも驚いてるし」
ぼんやりと楽屋の天井を見上げながら、飛鳥さんは言葉を続けた。
「でもなんとなく、2人の間の空気っていうか、それが変わったのかもって思ったことはあったかな。ま、なんとなくだけどね」
そうだ。
そういえば、去年の10周年ライブのリハ中だったかな。
私とかっきーの関係について、飛鳥さんが心配してくれた日があった。
あの頃から感づいていたんだとしたら、それほどびっくりされなかったのも納得だ。
それからは、
私達の関係を知っている人はいるのか、
二人だけで出かけることはあるのか、
バレそうになったことがあるか、
そんなことを心配してくれた。
「そっか。それくらい気をつけていれば大丈夫そうだね。私も、会社やメンバーには、とりあえず秘密にしておくのがいいと思う。でもね、2人だけでどうしようもない問題があったら、ちゃんと会社の人には言うんだよ?絶対に助けになってくれるから」
(そっか…飛鳥さん、私たちがツラい目に遭わないように心配してくれてるんだ)
私たちの関係が世間に知られたら、どんな反応があるか分からない。
ファンの皆さんの中には、喜んでくれる人もいるかもしれない。実際、ライブで私とかっきーが、なんていうか、イチャイチャした時に盛り上がってくれる人たちがいてくれるのも知っている。
でもきっと、それだけじゃないんだろうな…
女性アイドルグループで、グループ内で付き合っているメンバーがいる。
こんな前例はないだろうから予想できないけど、面白がって憶測だけで心ないことをネットに投稿する人だっているかもしれない。
そんな事態にならないように。
私たちが巻き込まれないように。
飛鳥さんは心配してくれて、必要なことを教えようとしてくれてるんだ。
本当に、最後の最後まで私の面倒を見てくれる先輩。
この恩はいつか絶対に返したい。
いや、飛鳥さんの言葉を借りるなら、返すよりも大事なことがある。
この恩を、他の誰かに、出来ればグループ内に送りたい。
それがきっと、"恩送り"になるから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あの、飛鳥さん、本当にありがとうございました。こんな大事な日に、私の話に付き合って下さって…」
「いいんだよ。元はといえば私がえんちゃんを呼んで来てもらったんだから。それに、ちゃんと話してくれてありがとね。私も最後に、ちょっとは先輩っぽいことが出来て良かったよ」
そう言うと、飛鳥さんが一瞬だけ時計を気にしたようだった。
突然の予定変更で与えられた時間も、残り少ないのかもしれない。
伝えたかったことは伝えられた。
名残惜しいけど、もう、十分だ。
「飛鳥さん、それじゃ私、そろそろ…」
そう言いながら立ち上がろうとしたところを、なぜか飛鳥さんに引き止められた。
「ねぇ、、、かっきーって今、どうしてるかな?」
そう訊いてきた飛鳥さんの目には、ためらいが見えた。
「えっ…?たしか、さっきマネージャーさんに呼ばれて挨拶に…あ、でもそろそろ終わってるかな…」
「あの、えんちゃん、、私、最後にわがまま言っていい?」
~続く~
飛鳥さんに背中を押される形になり、ついに私はかっきーとの関係を打ち明けた。
今まで秘密にし続けてきた後ろめたさのせいだろうか。
一度話し始めると言葉が次々と溢れ出そうになった。
かと言って、じっくりと話を聞いてもらうような時間は無いはずだから。
46時間TVがあった日の夜に、初めてキスしたこと。
翌朝、かっきーが私の部屋まで来て、告白してくれたこと。
私も、その気持ちに応えたこと。
それ以来、メンバーにもスタッフさんにも内緒で、交際を続けていること。
なるべく要点だけを、簡潔に、誠意を持って伝えた。
飛鳥さんは、私の話の所々で驚いて目を丸くしていたけど。
急かしたり止めたりすることもなく、私の顔をまっすぐ見ながら話を聞いてくれた。
いつもの様子で。
そう。思っていたよりもいつも通りだったので、話しながら気になっていたことを訊いてみた。
「あの、飛鳥さん、もしかして気付いてましたか…?」
「えっ?いや、そんなことないよ。これでも驚いてるし」
ぼんやりと楽屋の天井を見上げながら、飛鳥さんは言葉を続けた。
「でもなんとなく、2人の間の空気っていうか、それが変わったのかもって思ったことはあったかな。ま、なんとなくだけどね」
そうだ。
そういえば、去年の10周年ライブのリハ中だったかな。
私とかっきーの関係について、飛鳥さんが心配してくれた日があった。
あの頃から感づいていたんだとしたら、それほどびっくりされなかったのも納得だ。
それからは、
私達の関係を知っている人はいるのか、
二人だけで出かけることはあるのか、
バレそうになったことがあるか、
そんなことを心配してくれた。
「そっか。それくらい気をつけていれば大丈夫そうだね。私も、会社やメンバーには、とりあえず秘密にしておくのがいいと思う。でもね、2人だけでどうしようもない問題があったら、ちゃんと会社の人には言うんだよ?絶対に助けになってくれるから」
(そっか…飛鳥さん、私たちがツラい目に遭わないように心配してくれてるんだ)
私たちの関係が世間に知られたら、どんな反応があるか分からない。
ファンの皆さんの中には、喜んでくれる人もいるかもしれない。実際、ライブで私とかっきーが、なんていうか、イチャイチャした時に盛り上がってくれる人たちがいてくれるのも知っている。
でもきっと、それだけじゃないんだろうな…
女性アイドルグループで、グループ内で付き合っているメンバーがいる。
こんな前例はないだろうから予想できないけど、面白がって憶測だけで心ないことをネットに投稿する人だっているかもしれない。
そんな事態にならないように。
私たちが巻き込まれないように。
飛鳥さんは心配してくれて、必要なことを教えようとしてくれてるんだ。
本当に、最後の最後まで私の面倒を見てくれる先輩。
この恩はいつか絶対に返したい。
いや、飛鳥さんの言葉を借りるなら、返すよりも大事なことがある。
この恩を、他の誰かに、出来ればグループ内に送りたい。
それがきっと、"恩送り"になるから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あの、飛鳥さん、本当にありがとうございました。こんな大事な日に、私の話に付き合って下さって…」
「いいんだよ。元はといえば私がえんちゃんを呼んで来てもらったんだから。それに、ちゃんと話してくれてありがとね。私も最後に、ちょっとは先輩っぽいことが出来て良かったよ」
そう言うと、飛鳥さんが一瞬だけ時計を気にしたようだった。
突然の予定変更で与えられた時間も、残り少ないのかもしれない。
伝えたかったことは伝えられた。
名残惜しいけど、もう、十分だ。
「飛鳥さん、それじゃ私、そろそろ…」
そう言いながら立ち上がろうとしたところを、なぜか飛鳥さんに引き止められた。
「ねぇ、、、かっきーって今、どうしてるかな?」
そう訊いてきた飛鳥さんの目には、ためらいが見えた。
「えっ…?たしか、さっきマネージャーさんに呼ばれて挨拶に…あ、でもそろそろ終わってるかな…」
「あの、えんちゃん、、私、最後にわがまま言っていい?」
~続く~
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