さくらと遥香

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かっきー2回目のセンター 編

さくちゃんの手料理 後編

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ピンポーン…


さくら「かっきー、お帰り!」

朝からのお仕事を終えて私の部屋へ直行してくれたかっきーを、笑顔で出迎える。
移動中に着く時間も知らせてもらっていたから、ちょうど良いタイミングでご飯の準備も終えてある。

遥香「さくちゃーん!ヒット祈願、行ってきたよ…って、えー?!!」

ドアを開けたかっきーが、私の姿を見て驚いたまま固まっている。

かっきーが驚いたのは、私が初めてエプロンを着ていたから。
オーディションに合格して上京する時に母が持たせてくれた、花柄のエプロンだった。

さくら「えへへ、、いつもは着ないんだけどね…どう、かな…?」

遥香「か…かわいすぎるよ…すっごく似合ってる!!もうー、さくちゃーーん!!」

荷物も降ろさないまま、全力でハグしてくるかっきー。

さくら「わわっ…!!かっきー、ほら、ご飯、もう出来てるから、一緒に食べよ?」

興奮するかっきーをなんとか落ち着かせると、リビングへ連れていく。

遥香「わー!!ほんとに豚カツだー!!それに、すごい!なんか、定食屋さんみたい!!」

私が用意したのは、かっきーがリクエストしてくれた豚カツと、キャベツの千切り。

それにご飯とお味噌汁だけだった。

さくら「豚カツだけだと寂しいかなって…かっきーの誕生日をお祝いするにしては、これしかなくて申し訳ないくらいだけど…」

遥香「うぅ…さくちゃん、十分だよ…十分過ぎるよ…私、こんなに幸せでいいのか……」

さくら「もぅ、大袈裟だなぁ。じゃあ、さっそく食べよ♪」

豪華、とは言えないかもしれない。
おかずと呼べるものは豚カツ一品だけだし。

それでも、かっきーは心の底から喜んでくれていたし、味にも満足してくれた。
美味しそうに食べるかっきーの、幸せそうな顔。

この顔を独り占めできる私こそ、こんなに幸せでいいのかな…

========================

さくら「え?!ロッククライミング?!」

つい大きな声が出てしまった。

リビングのテーブルを2人で囲んで座り、ご飯を食べながら今日のヒット祈願の話を聞いていたところ。
かっきーの口から出た今回のヒット祈願は、あまりに予想外だった。

さくら「ロッククライミングってあの、岩っていうか壁っていうか、なんかよじ登っていくやつ?」

遥香「そうそう。もちろん命綱のロープは付けてるし、プロのガイドさんも下から見ててくれるんだけどね」

かっきーのスマホで、現場の写真を何枚か見せてもらう。
かっきーが登ったという"それ"は、ほぼ垂直にそびえ立つ絶壁だった。

これを、自分の手足だけで登るなんて…

私だったら、絶対に無理だ。無理な自信がある。
想像すら出来ない。

さくら「かっきー、こんなの登ったの…?」

遥香「うん。途中で何回心折れたかわかんないけど…美月さんとかみんなの応援もあって、なんとか登りきったよ」

かっきーの話では、他のメンバーも全員登れたらしい。
同期の奈於だけは初めの挑戦で失敗しちゃったけど、そのあと自分からリベンジを申し出て見事に登りきったそうだ。

さくら「すごい…みんなも、かっきーも、すごいね…!」

遥香「うん、改めて写真でこの壁見ると、こんなのよく登れたなって思う…あぁ、なんか、思い出したら、体が…」

見ると、箸を持つかっきーの右手が小さく震えていた。
それだけ過酷なロケだったんだ。

(前にヒット祈願でバンジージャンプした時の私も、こんなふうに震えてたのかな…)

震えながら持っていた箸をそっと預かってテーブルに置くと、両手でかっきーの右手を包み込んだ。

さくら「かっきー、がんばったね…大丈夫……もう大丈夫だから…」

震えが止まるように、ぎゅーっと握って念を送る。

遥香「うん、さくちゃん、ありがとう…」

私の両手に、今度はかっきーの左手が添えられる。

私の手の中にある右手の震えも、今は落ち着いたみたい。
こうやって、かっきーに安らぎを与える存在に少しでもなれているのかなと思うと、嬉しい。
それも、かっきーの21歳の誕生日に。

両手を重ねたまま目が合った私たちは、そのまま引き寄せられるようにキスをした。


ちゅっ…


2,3回お互いの唇の感触を確かめ合った。

遥香「ふふ…さくちゃん、唇がちょっと、甘じょっぱい…」

さくら「かっきーだって、ソースの味したよ…?ふふっ」

遥香「そういえばこのソースってもしかして、番組でも紹介してたやつ?えっと、なんだっけ、食べてみ~そ…?」

さくら「つけてみ~そ、かけてみそ❤️…だよ?」

遥香「あっ、それそれ!さくちゃんが言うとなんでそんなにかわいいのかな~?」

豚カツにかけてある少し甘めのたれは、地元名古屋では有名なソース。
実家のお母さんに事情を説明すると、この日のために送ってくれたんだった。

遥香「さくちゃんのお母さんも協力してくれたなんて、本当にありがたいよ。あ~、いつか会えたらお礼をしたいなぁ」

さくら「そんな~、全然いいのに」

遥香「いや、やっぱりお母様にはいつかちゃんとご挨拶を……さくちゃんを産んでくれたことへの感謝も伝えたいし…」

さくら「えーなにそれ~?お母さんびっくりしちゃうよ笑」

そこからも、真面目だけどなぜかちょっとクスッとしてしまうかっきーの話が続いて。
私たちは楽しい食事を終えた。


================


さくら「かっきー、デザートにプリン買ってあるけど、もう食べちゃう?」

洗い物も終えてひと段落したところで、キッチンからかっきーに声をかけた。

本当はデザートも手作り、といきたかったけど。
今回は慣れない揚げ物で手一杯になってしまいそうだったから、デザートは諦めていた。
今日の帰りに買っておいたプリンが2つ、冷蔵庫にある。

遥香「わぁー!ありがとう!!う~ん、でもどうしようかなぁ…プリンもいいけど…」

ベッドに座っているかっきーが、私のほうをチラチラと見ながら自分の隣をぽんぽんと叩く。
隣に座って、という意思表示らしい。

かっきーにぴったりくっ付くように、私もベッドへ座る。
かっきーの横顔を見ると、少し恥ずかしそうだ。

さくら「かっきー…?どうしたの?」

遥香「プリンもいいけど……さくちゃんが…」

さくら「えっ…?」

こちらを向いたかっきーと目線が合うと、いきなり唇を重ねられた。
さっきよりも、ずっと情熱的なキス。

(……?!!)

驚いたままかっきーの唇を受け入れていると、そのままベッドに押し倒された。

さくら「えっ…か、かっきー…?!シャワー、まだだけど…いいの…?」

遥香「今日は、いい……もう、我慢できないから…汗、においしたらごめんね…?でも、もう無理…」

かっきーの目がいつもと違う。
すごく真剣で、余裕がなさそうで、それなのに熱を感じる視線。

さくら「じゃ、じゃあ……!電気だけ……明るいままだと、ちょっと…」

遥香「あ、ごめん……」

上半身を起こしたかっきーが腕を伸ばし、照明を暗くしてくれた。

カチッ…

その音が、まるでかっきーの理性が途切れた合図みたいだった。

かっきーのキスが唇から耳へ、耳から首筋へ、首筋から…もっと、いろんなところへと標的を変えていく。

お泊まり旅行で一線を越えて以来、何度か体を重ねてきた私たちだったけど。

この夜のかっきーは、これまでで一番強く激しく、私を求めてくれた…

もしかしたら、ヒット祈願で強い恐怖を味わった反動で、本能的な欲求が強まったせいなのかもしれない。
シャワーを浴びる前から求められたのは初めてだったから、びっくりしたけど。

かっきーが良いなら私も全然イヤじゃなかったし、むしろいつもよりかっきーの汗の香りを強く感じてドキドキしちゃったっていうか…

こうして、かっきー21歳の誕生日の夜。

私とかっきーは、また一つ、大人の階段を一緒に上った気がした…

~続く~
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