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46時間TV 編
46時間TV 完結~恋人繋ぎ~
しおりを挟む私の部屋の玄関で、かっきーと2人で寄り添いながら静かな時を過ごした後。
生配信の会場へ向かわなきゃいけない時間が近付いてきたので、私たちは一緒に出発した。
なんだか、すごく不思議な感じ。
かっきーが初めて私の部屋へ来てくれただけでも大きな出来事なのに。
かっきーから告白されて。
昨日とは逆に、私のほうからキスをして。
私も、かっきーに気持ちを伝えて。
そして今、かっきーと一緒にお仕事の現場へ向かっている。
1時間も経たないうちに、たくさんの初めてを経験した。
それだけで世界が変わって見えた、なんて大袈裟な話じゃないけど。
今までないくらいドキドキして、勇気を出して、あたたかい気持ちになれたのは本当だと思う。
・・・・・・・
迎えのバスに乗っていたマネージャーさんは、私と一緒にかっきーがいることに驚いてた。
でも、「どうしてもさくちゃんに直接話したいことがあったから、ここまで会いに来てたんです」とかっきーから説明してくれた。
うん、嘘は言ってない。
私たち2人だけの事情があると察してくれたのか、マネージャーさんからそれ以上質問されることはなかった。
バスにはまだマネージャーさんしか乗っていなかったから、席はガラガラだったけど。
私たちは、お互い何も言わずに2人がけの席に並んで座る。
私もかっきーもやっぱり寝不足だったみたいで、バスが動き出してすぐ眠りに落ちたらしい。
・・・・・・・
目が覚めると、バスはもう停まっていた。
カーテンの隙間から外を覗くと、どうやら生配信の会場に着いたところらしい。
(私、バスに乗ってすぐ寝ちゃったんだ……)
隣を見ると、安らかな寝顔を無防備にこちらへ向けているかっきー。顔を少し動かせばキスできてしまいそうな距離に、ドキッとする。
(いやいや……今朝したばっかりだし…いや、そういう問題じゃなくて、寝てる隙に不意打ちみたいなのはよくないよね、うん…)
かっきーを起こそうと思って体の向きを変えると、なにやら怪しげな視線を感じた。
目線を前方に移すと、同期の4期生メンバー数人がニコニコ、というかむしろニヤニヤしながら私たちを凝視していた。
さくら「えっ…?!み、みんなどうしたの…?」
紗耶「いや、2人仲良く寝てるな~と思ってさ」
美緒「あ~いまさくちゃんの寝顔を撮ろうと思ってたのに~。せーらが騒ぐから起きちゃったじゃん」
聖来「いやいや、さくちゃんの寝顔撮って待ち受けにしたいって騒いでたの誰よ!」
さくら「もぅ!着いたんならすぐ起こしてよ~!」
寝顔を見られていた恥ずかしさから、みんなに抗議する。
聖来「っていうかさくちゃん、"それ"って、かっきーのこと大好きな私に見せ付けてるん?」
さくら「えっ…?"それ"って…?」
聖来の視線の先にある"それ"が分からなくて、私は自分の手元を見てみた。
(あっ…)
私とかっきーは、寝ている間に手を繋いでいたらしい。
それも、指と指を絡め合う、いわゆる"恋人繋ぎ"をしていた。
美緒「かっきーだけずるーい!さくちゃーん、私とも恋人繋ぎしようよ~!」
さくら「ち、違うのっ…これは、気付いたらこうなってて…!」
聖来「ほおほお。寝ている間にそうなっていたと。じゃあ、さくちゃんの体が無意識のうちにかっきーを求めていたってことやんな~?」
聖来の悪いノリが始まった。
(私の体が…かっきーを求める…?)
よく分からない。
分からないけど、とんでもなく恥ずかしい想像をしてしまいそうになったので、慌てて脳内でかき消した。
さくら「求めて、いた…とか…そういうのじゃ、なくて……」
あまりの恥ずかしさで全身がカーッと熱くなってきて、顔を上げていられない。
美緒「か、かわいすぎる……あ~やばい……私の推しが今日も朝からかわいすぎる…」
紗耶「っていうかせーら、かっきーのこと大好きなのは私も同じなんですけど!やんちゃなやんちゃんで相棒だったし!」
聖来「それゆーたら私だって、お互いに物真似し合う仲だし!」
(も~、みんな朝から賑やかだなぁ……)
そのうちマネージャーさんがやって来て、いつまでバスに残ってるのと叱られ、みんな生配信の会場に向かっていった。
マネ「さくちゃんも!かっきーのこと起こしたらすぐ来てね!」
さくら「はーい」
車内には私とかっきーだけになった。
さっきまでとは一変して、静かな車内。
さくら「かっきー…?バス、着いたよ…?」
かっきー「う~ん…?」
かっきーの肩を揺すると、ようやく目が覚めたみたい。
でもまだ寝ぼけてる。
私には、その油断した顔がたまらなく愛おしかった。
(もぅ…しょうがないなぁ…)
車内には誰もいない。
運転手さんは外に出て休憩してる。
今なら、誰にも見られない。
(かっきー…大好きだよ…)
まだ寝ぼけているかっきーの目を覚ますために、私は今日2度目のキスをするのだった。
~46時間TV編 完~
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