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ビッグボイスなんていらない

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※さくちゃんとかっきーが付き合い始めてからのショートストーリーです。
※付き合い始めるまでの物語は『さくらと遥香』46時間TV編をお読み下さい。

夜10時までのラジオ生放送のお仕事を終えて、私は帰りのタクシーに乗っていた。

窓に映る東京の夜景を眺めながら、頭の中で今夜の放送を振り返る。

今日の番組は、スタッフさんが毎回色んな企画を考えてくれている。
MCの芸人さんも優しいし盛り上げてくれるし、とてもありがたい。

ただ…

(今日の企画はちょっと大変だったなぁ…)

今日は帰ってすぐ休もう。
そういえば、かっきーは今頃どうしてるだろう。

そう思っていたら、LINEが届いた。

(あ…❤️)

送信者の名前を見て、顔がにやけそうになってしまう。

遥香LINE「おつかれさま。ラジオ聴いてたよ!」

さくらLINE「ありがとー。かっきーが聴いててくれてうれしい♡でも、ちょっと恥ずかしいなぁ…」

遥香LINE「面白かったし、さくちゃんすっごく可愛かったよ。特にあれ!大きい声を出す企画のやつ!」

さくらLINE「あれがいちばん大変だったよぉ~…大きい声を出すなんて普段は全然ないから」

かっきーが話しているのは、大きい声を出せないことで悩む私のために「これなら大きい声を出しやすいんじゃないか?」というセリフをリスナーが考えてくれる企画だ。

遥香LINE「さくちゃん、いま帰りのタクシー?」

さくらLINE「うん、そうだよ」

数秒すると、電話がかかってきた。

さくら「かっきー、どうしたの?」

遥香「ううん、何かあったわけじゃないんだけど、さくちゃんの声聴きたくなっちゃって…」

さくら「え~?ラジオで声、たくさん聴いてたでしょ?」

遥香「う~ん、ラジオの声もかわいかったけど、さくちゃんが私だけに向けてしゃべってくれる声が良いんだもん…」

さくら「いや、そう言ってるかっきーの声がすごくかわいいんだけど…」

スマホから聞こえてくる甘えた声にきゅんきゅんしてしまう。

忙しい日が続いてるせいか、今夜は甘えたいモードのかっきーなのかもしれない。

遥香「さくちゃ~ん、私にもあれ言ってほしい…」

さくら「え?あれ、って?」

遥香「ほらほら、企画で言ってたあれ…×××××ってやつ…」

さくら「え~?!あんな恥ずかしいの、いま無理だよ…大きい声も出せないし…」

遥香「じゃあ、おっきい声じゃなくてもいいから~……言ってほしいなぁ…リスナーにだけじゃなくて、私にも言ってほしいなぁ~…」

(やっぱり、今日は完全に甘えん坊モードだ…)

ファンの前ではあまり見せない、かっきーの一面。

さくら「もぉ~、しょうがないなぁ…じゃあ、ちゃんと聴いててね?」

遥香「うん!」

私はタクシーの運転手さんとの距離を確認して、どれくらいの声量なら聴かれないか頭の中で想像した。

一度深呼吸をして、喉を整える。

(よしっ…)

さくら「……かっきーのことが、大大大大…だーーーーいすき❤️」

遥香「わぁ~!!さくちゃ~~ん!私も大好き!!だーーーーいすき!!」

かっきーが、まるで子供のように喜んでくれる。
こんなに良い反応をしてくれるなら、やってよかったかな?
めちゃくちゃ恥ずかしかったけど…

遥香「さくちゃん、わがまま聞いてくれてありがと~。すっごく嬉しい。それに…」

さくら「ん?」

遥香「やっぱりさくちゃんは、大きい声なんか出せなくても大丈夫だよ…?」

さくら「え~、なんで~?」

大きい声を出せないと、お仕事で苦労する場面もある。
ライブの煽りとか。

それを、かっきーは大丈夫だと言ってくれる。

遥香「だって、私がいつもさくちゃんの側にいれば、大きい声を出さなくても届くでしょ…?」

さくら「もぉ~、そういうことじゃないよ~……でも、ありがと♡」

遥香「ふふふ」

……どうしよう…

電話しながら、かっきーのことがどんどん愛おしくなってきた。

だから、私からも一つわがままを言ってみる。

さくら「かっきー…じゃあ、今夜も私の側にいてくれる…?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

わがままを即座に快諾してくれたかっきー。

私は運転手さんに寄り道してもらうようお願いすると、"恋人"と過ごすこれからの夜に胸を躍らせるのだった。

~おしまい~
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