27 / 38
優しく、時に嫉妬深い彼からの溢れる程の愛情
7
しおりを挟む
「⋯⋯何でだよ」
「え?」
「何で⋯⋯そんな顔してんだよ」
突然の雪蛍くんの言葉の意味が分からなかった。
そんな顔って、どんな顔なの? そう疑問に思っている私をよそに雪蛍くんは言葉を続けていく。
「俺、お前にそんな顔させたくて連絡断てって言ったんじゃねぇよ? 俺の事が大切とか言っときながらそんな顔されても⋯⋯嬉しくねぇよ。お前今、どんな顔してるか分かる? すげぇ悲しげな顔してんだよ⋯⋯相手だけじゃなくて、莉世も、未練あんじゃん⋯⋯」
「違っ、そんな事⋯⋯私は本当に、雪蛍くんの事が――」
「今日はもう帰る。また暫く忙しくなるから⋯⋯連絡も出来ない」
「雪蛍くん、待って!」
顔を背けた彼は帰ると口にするとそのまま立ち上がり私の呼び掛けにも反応を示してくれず、玄関まで歩いていく。
そんな雪蛍くんを追いかけて靴を履いてドアノブに手を掛けたところで彼の腕を掴んだけれど、
「悪いけど、今は何も話したくない。その意味、分かるよな」
振り向かず、そう素っ気なく言い放って私の手を振り解くとそのまま外へ出て行ってしまった。
(私⋯⋯そんなに未練がましい顔をしていたの?)
雪蛍くんが帰って静まり返る部屋をトボトボ歩き洗面台の鏡で自分の顔を見てみるけれど、今は彼が帰ってしまった事で悲しい気持ちになっているから当然浮かない表情をしている。
正直、遊と電話をしていた時の自分の表情なんて分からない。確認のしようが無いから。
だけど、さっき遊に改めて気持ちを伝えられて、複雑な思いと切ない気持ちを抱いたのは事実。
初めて付き合った人だったし本当に好きな人だったから、別れた時は悲しかった。
暫くは、よりを戻したいと願った事だってあった。
それでも、雪蛍くんを好きになってからは、そんな気持ち、忘れてた。
再会した瞬間は懐かしく思いはしたけど、今更遊に恋愛感情なんて抱かない。
雪蛍くんの事が大切な気持ちは本当なのに⋯⋯それを信じて貰えなかった。
その事が、何よりも悲しかった。
あの日から数週間、雪蛍くんと会う事はおろか連絡すら取っていない。
彼の近況についてはマネージャー補佐として逐一報告を受けているから忙しいのは分かっているのだけど、傍に居られない事、話すら出来ない事が辛く悲しい。
週刊誌の熱愛報道については雪蛍くん本人から聞いていた通り二人の間にはやましい事が何も無いと双方の事務所から回答があり、それを受け入れた世間は納得したようで騒ぎはすぐに収まった。
遊との事さえ無ければ雪蛍くんと険悪になる理由なんて無かったのにと思うと、あの日遊と再会して連絡先を交換した軽率な自分の行動を悔やむばかりだった。
そして遊からはというと、あの日以降一度だけ電話が掛かってきたのだけど、それに出る事はしなかった。
もう連絡は取らないと決めたし、これ以上雪蛍くんとの関係が壊れるような行動を取る事だけは絶対避けたかったから。
悲しみと後悔を抱いたまま時間だけが流れていく毎日。
雪蛍くんから連絡が来たのは、それから更にひと月半が過ぎた頃、「仕事終わりに会いたい、話がある」と言われたので、彼の帰りを彼の部屋で待っていた。
「ただいま⋯⋯久しぶり」
「おかえりなさい。うん、久しぶり」
会った最後の日が気まずい別れ方だった事や会うのが久々過ぎてお互い何だかよそよそしい感じがしてなかなか上手く話せないし、ついつい視線を外してしまう。
「あ、リクエスト通りご飯は煮物にしたよ。お風呂も沸かしてあるから先にお風呂入っちゃう?」
あまりの気まずい空気に耐え切れなくなった私は何か話題をと思い夕飯の話を切り出しながらお風呂に入る事を勧めようとすると、
「――ごめん、この前はあんな態度しか取れなくて」
「⋯⋯!」
少し弱々しい声でそう口にながら、雪蛍くんが後ろから私の身体を抱き締めてきた。
「え?」
「何で⋯⋯そんな顔してんだよ」
突然の雪蛍くんの言葉の意味が分からなかった。
そんな顔って、どんな顔なの? そう疑問に思っている私をよそに雪蛍くんは言葉を続けていく。
「俺、お前にそんな顔させたくて連絡断てって言ったんじゃねぇよ? 俺の事が大切とか言っときながらそんな顔されても⋯⋯嬉しくねぇよ。お前今、どんな顔してるか分かる? すげぇ悲しげな顔してんだよ⋯⋯相手だけじゃなくて、莉世も、未練あんじゃん⋯⋯」
「違っ、そんな事⋯⋯私は本当に、雪蛍くんの事が――」
「今日はもう帰る。また暫く忙しくなるから⋯⋯連絡も出来ない」
「雪蛍くん、待って!」
顔を背けた彼は帰ると口にするとそのまま立ち上がり私の呼び掛けにも反応を示してくれず、玄関まで歩いていく。
そんな雪蛍くんを追いかけて靴を履いてドアノブに手を掛けたところで彼の腕を掴んだけれど、
「悪いけど、今は何も話したくない。その意味、分かるよな」
振り向かず、そう素っ気なく言い放って私の手を振り解くとそのまま外へ出て行ってしまった。
(私⋯⋯そんなに未練がましい顔をしていたの?)
雪蛍くんが帰って静まり返る部屋をトボトボ歩き洗面台の鏡で自分の顔を見てみるけれど、今は彼が帰ってしまった事で悲しい気持ちになっているから当然浮かない表情をしている。
正直、遊と電話をしていた時の自分の表情なんて分からない。確認のしようが無いから。
だけど、さっき遊に改めて気持ちを伝えられて、複雑な思いと切ない気持ちを抱いたのは事実。
初めて付き合った人だったし本当に好きな人だったから、別れた時は悲しかった。
暫くは、よりを戻したいと願った事だってあった。
それでも、雪蛍くんを好きになってからは、そんな気持ち、忘れてた。
再会した瞬間は懐かしく思いはしたけど、今更遊に恋愛感情なんて抱かない。
雪蛍くんの事が大切な気持ちは本当なのに⋯⋯それを信じて貰えなかった。
その事が、何よりも悲しかった。
あの日から数週間、雪蛍くんと会う事はおろか連絡すら取っていない。
彼の近況についてはマネージャー補佐として逐一報告を受けているから忙しいのは分かっているのだけど、傍に居られない事、話すら出来ない事が辛く悲しい。
週刊誌の熱愛報道については雪蛍くん本人から聞いていた通り二人の間にはやましい事が何も無いと双方の事務所から回答があり、それを受け入れた世間は納得したようで騒ぎはすぐに収まった。
遊との事さえ無ければ雪蛍くんと険悪になる理由なんて無かったのにと思うと、あの日遊と再会して連絡先を交換した軽率な自分の行動を悔やむばかりだった。
そして遊からはというと、あの日以降一度だけ電話が掛かってきたのだけど、それに出る事はしなかった。
もう連絡は取らないと決めたし、これ以上雪蛍くんとの関係が壊れるような行動を取る事だけは絶対避けたかったから。
悲しみと後悔を抱いたまま時間だけが流れていく毎日。
雪蛍くんから連絡が来たのは、それから更にひと月半が過ぎた頃、「仕事終わりに会いたい、話がある」と言われたので、彼の帰りを彼の部屋で待っていた。
「ただいま⋯⋯久しぶり」
「おかえりなさい。うん、久しぶり」
会った最後の日が気まずい別れ方だった事や会うのが久々過ぎてお互い何だかよそよそしい感じがしてなかなか上手く話せないし、ついつい視線を外してしまう。
「あ、リクエスト通りご飯は煮物にしたよ。お風呂も沸かしてあるから先にお風呂入っちゃう?」
あまりの気まずい空気に耐え切れなくなった私は何か話題をと思い夕飯の話を切り出しながらお風呂に入る事を勧めようとすると、
「――ごめん、この前はあんな態度しか取れなくて」
「⋯⋯!」
少し弱々しい声でそう口にながら、雪蛍くんが後ろから私の身体を抱き締めてきた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
若妻シリーズ
笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。
気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。
乳首責め/クリ責め/潮吹き
※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様
※使用画像/SplitShire様
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
俺様な極道の御曹司とまったりイチャイチャ溺愛生活
那珂田かな
恋愛
高地柚子(たかちゆずこ)は天涯孤独の身の上。母はすでに亡く、父は音信不通。
それでも大学に通いながら、夜はユズカという名で、ホステスとして生活費を稼ぐ日々を送っていた。
そんなある日、槇村彰吾(まきむらしょうご)という男性が店に現れた。
「お前の父には世話になった。これから俺がお前の面倒を見てやる」
男の職業は、なんとヤクザ。
そんな男に柚子は言い放つ。
「あなたに面倒見てもらう必要なんてない!」
オレサマな極道の若と、しっかり者だけどどこか抜けてる女の子との、チグハグ恋愛模様が始まります。
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる