26 / 38
優しく、時に嫉妬深い彼からの溢れる程の愛情
6
しおりを挟む
「莉世には話そうと思ったんだけど、お前も最近忙しそうだったし、仕事以外の事で負担掛けたくなかったから⋯⋯話さなかった。次会えた時に全て話そうと思ったら、週刊誌の方が先に出ちまった⋯⋯本当に軽率だった、ごめん」
私の悲しい気持ちを感じてくれたのか、雪蛍くんは自分の軽率な行動に悔しさを滲ませながらただひたすら謝ってくれる。
隠そうとしていた訳じゃない。話そうとしてくれたし、話せなかったのは私の為を思っての事。
それが分かっているから、いつまでも許さないでいるのは違う。
だから、「――雪蛍くん、私⋯⋯」と言葉を紡いだその時、雪蛍くんのすぐ側にあった私のスマホから音が鳴り、反射的にスマホに目を向けた彼の表情がみるみる険しいものへと変わっていく。
そんな雪蛍くんがスマホを手に取ると、私に手渡しながら、「――誰だよ、『遊』って」と着信画面に表示されていた遊の名前を見ながら問い掛けてきた。
「あ⋯⋯ゆ、遊は⋯⋯」
隠すつもりは無い。やましい事も無い。だから、連絡先を交換した。
だけど、今この状況下で遊が『元カレ』だと告げれば空気がどうなるか分かってしまったからなのか、何故か答えられなくなって言葉を詰まらせるけど、これはもっと逆効果だと気付いた私は、
「あのね、遊は――学生時代に付き合っていた⋯⋯元カレなの」
包み隠さず、遊が元カレである事を告げた。
「⋯⋯元、カレ⋯⋯。つーか、何でそんな奴が電話掛けてくる訳?」
予想通り、不機嫌さを露わにした雪蛍くんは遊が連絡してきた経緯を尋ねてくる。
「⋯⋯今日、偶然再会して、話たい事もあったから、連絡先を交換したの⋯⋯。だけど、本当にそれだけだよ? 元カレって言っても付き合ってたのもだいぶ前だし、お互い気持ちは無いから――」
「莉世にその気は無くても! 相手がどう思ってるかなんて、分からねぇじゃん」
「そ、それは⋯⋯」
「何? 俺への当てつけ? 俺が女と週刊誌に撮られて、隠されてムカついたから自分も良いかって思った?」
「違っ! そんな事は――」
「なら、今すぐコイツと話して、もう連絡は取れないって言えよ」
「なっ⋯⋯」
「元カレなんて、連絡取る必要ねぇだろ?」
雪蛍くんの言い分は間違ってない。逆の立場なら、同じようにして欲しいと思うに決まってる。やっぱり元カレである遊と連絡を取るなんて間違ってるのは私の方。
「⋯⋯分かった。それで雪蛍くんの気が済むのなら、そうするよ」
こんな事で雪蛍くんと険悪になりたく無かった私は彼の要求を呑む為、遊からの電話に出る事にした。
「――もしもし」
『莉世、なかなか出ないから心配したよ。大丈夫か?』
「あ、うん、ごめんね⋯⋯実はさっき訪ねて来たのは⋯⋯彼だったの」
『彼氏が? そう、なんだ。それじゃあ俺、邪魔しちまったか。悪いな』
「そんな事⋯⋯わざわざ心配してくれてありがとう⋯⋯」
いざ電話に出ると、遊は先程のアポ無しの訪問者の事を気にしてくれて電話を掛けてきたと分かり、この話の流れで「もう連絡しないで」と告げるのは何だか気が引けてしまう。
なかなか私が本題を切り出さない事に苛立っている様子の雪蛍くんを前に、焦る気持ちが増していく。
(言わなきゃ⋯⋯)
一旦切りよく話が途切れたタイミングで私が本題に入ろうと口を開き掛けた次の瞬間、
『あのさ、莉世⋯⋯彼氏が来てるところでこんな事言うのも違うとは思うんだけど⋯⋯さっきの続き⋯⋯良い?』
遊が何やら意味深な言葉を投げ掛けてきた。
「う、うん⋯⋯何?」
そして、私が尋ね返すと――
『俺さ、本当はまだ、莉世の事⋯⋯吹っ切れてねぇんだよ⋯⋯彼氏いるって聞いても⋯⋯その気持ちはやっぱり変わらねぇ⋯⋯ウザいよな⋯⋯ごめん。けど俺⋯⋯伝えるなら今しか無いって感じたから、言わせてもらう。莉世、俺はお前が好きだ。別れた事もずっと後悔してた。無理だって分かってるけど、可能性がゼロじゃないなら、俺との事、もう一度考えて欲しい』
遊は私への思いが断ち切れていない事、私に彼氏がいると知った上で、改めて告白してきたのだ。
好きだと言われて、嬉しくない訳じゃない。
当時、遊の事は本当に大好きだった。
だけど今は、それ以上に雪蛍くんの事が好きだから。
「――ごめん、遊の気持ちは⋯⋯嬉しい。私も遊の事は、本当に好きだったから。でも、今は彼の事しか考えられないの。彼が大切だから⋯⋯、だから、ごめん。それと、もう、連絡も取れない。さよなら⋯⋯」
私は遊への気持ちが無い事をハッキリと伝えると同時にもう連絡も取れない事を口にしてそのまま電話を切った。
これでいい。やっぱり元カレと連絡先なんて交換するんじゃ無かったと反省しながら雪蛍に視線を移すと、
「雪蛍⋯⋯くん?」
何故か雪蛍くんは悲しげな表情を浮かべながら私を見つめてきた。
私の悲しい気持ちを感じてくれたのか、雪蛍くんは自分の軽率な行動に悔しさを滲ませながらただひたすら謝ってくれる。
隠そうとしていた訳じゃない。話そうとしてくれたし、話せなかったのは私の為を思っての事。
それが分かっているから、いつまでも許さないでいるのは違う。
だから、「――雪蛍くん、私⋯⋯」と言葉を紡いだその時、雪蛍くんのすぐ側にあった私のスマホから音が鳴り、反射的にスマホに目を向けた彼の表情がみるみる険しいものへと変わっていく。
そんな雪蛍くんがスマホを手に取ると、私に手渡しながら、「――誰だよ、『遊』って」と着信画面に表示されていた遊の名前を見ながら問い掛けてきた。
「あ⋯⋯ゆ、遊は⋯⋯」
隠すつもりは無い。やましい事も無い。だから、連絡先を交換した。
だけど、今この状況下で遊が『元カレ』だと告げれば空気がどうなるか分かってしまったからなのか、何故か答えられなくなって言葉を詰まらせるけど、これはもっと逆効果だと気付いた私は、
「あのね、遊は――学生時代に付き合っていた⋯⋯元カレなの」
包み隠さず、遊が元カレである事を告げた。
「⋯⋯元、カレ⋯⋯。つーか、何でそんな奴が電話掛けてくる訳?」
予想通り、不機嫌さを露わにした雪蛍くんは遊が連絡してきた経緯を尋ねてくる。
「⋯⋯今日、偶然再会して、話たい事もあったから、連絡先を交換したの⋯⋯。だけど、本当にそれだけだよ? 元カレって言っても付き合ってたのもだいぶ前だし、お互い気持ちは無いから――」
「莉世にその気は無くても! 相手がどう思ってるかなんて、分からねぇじゃん」
「そ、それは⋯⋯」
「何? 俺への当てつけ? 俺が女と週刊誌に撮られて、隠されてムカついたから自分も良いかって思った?」
「違っ! そんな事は――」
「なら、今すぐコイツと話して、もう連絡は取れないって言えよ」
「なっ⋯⋯」
「元カレなんて、連絡取る必要ねぇだろ?」
雪蛍くんの言い分は間違ってない。逆の立場なら、同じようにして欲しいと思うに決まってる。やっぱり元カレである遊と連絡を取るなんて間違ってるのは私の方。
「⋯⋯分かった。それで雪蛍くんの気が済むのなら、そうするよ」
こんな事で雪蛍くんと険悪になりたく無かった私は彼の要求を呑む為、遊からの電話に出る事にした。
「――もしもし」
『莉世、なかなか出ないから心配したよ。大丈夫か?』
「あ、うん、ごめんね⋯⋯実はさっき訪ねて来たのは⋯⋯彼だったの」
『彼氏が? そう、なんだ。それじゃあ俺、邪魔しちまったか。悪いな』
「そんな事⋯⋯わざわざ心配してくれてありがとう⋯⋯」
いざ電話に出ると、遊は先程のアポ無しの訪問者の事を気にしてくれて電話を掛けてきたと分かり、この話の流れで「もう連絡しないで」と告げるのは何だか気が引けてしまう。
なかなか私が本題を切り出さない事に苛立っている様子の雪蛍くんを前に、焦る気持ちが増していく。
(言わなきゃ⋯⋯)
一旦切りよく話が途切れたタイミングで私が本題に入ろうと口を開き掛けた次の瞬間、
『あのさ、莉世⋯⋯彼氏が来てるところでこんな事言うのも違うとは思うんだけど⋯⋯さっきの続き⋯⋯良い?』
遊が何やら意味深な言葉を投げ掛けてきた。
「う、うん⋯⋯何?」
そして、私が尋ね返すと――
『俺さ、本当はまだ、莉世の事⋯⋯吹っ切れてねぇんだよ⋯⋯彼氏いるって聞いても⋯⋯その気持ちはやっぱり変わらねぇ⋯⋯ウザいよな⋯⋯ごめん。けど俺⋯⋯伝えるなら今しか無いって感じたから、言わせてもらう。莉世、俺はお前が好きだ。別れた事もずっと後悔してた。無理だって分かってるけど、可能性がゼロじゃないなら、俺との事、もう一度考えて欲しい』
遊は私への思いが断ち切れていない事、私に彼氏がいると知った上で、改めて告白してきたのだ。
好きだと言われて、嬉しくない訳じゃない。
当時、遊の事は本当に大好きだった。
だけど今は、それ以上に雪蛍くんの事が好きだから。
「――ごめん、遊の気持ちは⋯⋯嬉しい。私も遊の事は、本当に好きだったから。でも、今は彼の事しか考えられないの。彼が大切だから⋯⋯、だから、ごめん。それと、もう、連絡も取れない。さよなら⋯⋯」
私は遊への気持ちが無い事をハッキリと伝えると同時にもう連絡も取れない事を口にしてそのまま電話を切った。
これでいい。やっぱり元カレと連絡先なんて交換するんじゃ無かったと反省しながら雪蛍に視線を移すと、
「雪蛍⋯⋯くん?」
何故か雪蛍くんは悲しげな表情を浮かべながら私を見つめてきた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
俺が乳首痴漢におとされるまで
ねこみ
BL
※この作品は痴漢行為を推奨するためのものではありません。痴漢は立派な犯罪です。こういった行為をすればすぐバレますし捕まります。以上を注意して読みたいかただけお願いします。
<あらすじ>
通勤電車時間に何度もしつこく乳首を責められ、どんどん快感の波へと飲まれていくサラリーマンの物語。
完結にしていますが、痴漢の正体や主人公との関係などここでは記載していません。なのでその部分は中途半端なまま終わります。今の所続編を考えていないので完結にしています。
隠れて物件探してるのがバレたらルームシェアしてる親友に押し倒されましたが
槿 資紀
BL
どこにでもいる平凡な大学生、ナオキは、完璧超人の親友、御澤とルームシェアをしている。
昔から御澤に片想いをし続けているナオキは、親友として御澤の人生に存在できるよう、恋心を押し隠し、努力を続けてきた。
しかし、大学に入ってからしばらくして、御澤に恋人らしき影が見え隠れするように。
御澤に恋人ができた時点で、御澤との共同生活はご破算だと覚悟したナオキは、隠れてひとり暮らし用の物件を探し始める。
しかし、ある日、御澤に呼び出されて早めに家に帰りつくと、何やらお怒りの様子で物件資料をダイニングテーブルに広げている御澤の姿があって――――――――――。
うちのワンコ書記が狙われてます
葉津緒
BL
「早く助けに行かないと、くうちゃんが風紀委員長に食べられる――」
怖がりで甘えたがりなワンコ書記が、風紀室へのおつかいに行ったことから始まる救出劇。
ワンコ書記総狙われ(総愛され?)
無理やり、お下品、やや鬼畜。
シロクロさんの乳首時間
ねこみ
BL
※この作品は痴漢行為、またSNSでの出会いを推奨するためのものではありません。痴漢は立派な犯罪です。お互いが了承していたとしても公共の場ですればすぐバレますし捕まります。知らない人との出会いも上手くいっているのは創作だからです。以上を踏まえて自己責任でお読みください。
<あらすじ>
乳首を苛めてほしい願望からSNSで知り合った男性に電車での乳首痴漢をもちかけて……。
タイトルがシロクロですがカプリング位置的には逆です。言いやすさから逆に書いているだけで深い意味はありません。
転生したら主人公を裏切ってパーティを離脱する味方ヅラ悪役貴族だった~破滅回避のために強くなりすぎた結果、シナリオが完全崩壊しました~
おさない
ファンタジー
徹夜で新作のRPG『ラストファンタジア』をクリアした俺は、気づくと先程までプレイしていたゲームの世界に転生していた。
しかも転生先は、味方としてパーティに加わり、最後は主人公を裏切ってラスボスとなる悪役貴族のアラン・ディンロードの少年時代。
おまけに、とある事情により悪の道に進まなくても死亡確定である。
絶望的な状況に陥ってしまった俺は、破滅の運命に抗うために鍛錬を始めるのだが……ラスボスであるアランには俺の想像を遥かに超える才能が眠っていた!
※カクヨムにも掲載しています
【R18】私はただ好きな人と手を繋ぎたい
mokumoku
恋愛
私には毎回冷たい態度の婚約者…でも私は毎回デートのときは手を繋ぎたくてたまらないんです。だって私の好きな小説や映画ではいつもデートの時には手を繋いで仲良く歩いてるんですもの!だから「手を繋ぎませんか?」と勇気を振り絞るんですが…いつも断られてしまいます…
でも私めげない!せっかくのご縁…仲良くなりたいんですもの!
…と思っていたけれど、なんだか急にどうでもよくなってきちゃった!!
デート?もう別に大丈夫です…
と突き放したらなんだか婚約者の様子が…
元サヤハッピーエンドです。
ムーンライトさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる