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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

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「あ?  んな訳ねぇだろーが。お前、自分が何したか分かってんのか?」
「何って?  私は何もしてないよ?  やったのはそこのマネージャーじゃない」
「ふざけるな!  お前が指示したんだろーが。何で莉世を目の敵にするんだよ?」
「……そんなの決まってるじゃない。うざいからよ。それに、マネージャーごときが雪蛍くんと付き合ってるのも納得いかないの」

 桜乃さんの言葉を聞いた私と雪蛍くんは思わず顔を見合せた。

 私たちが付き合っている事を知っていたという事実が衝撃的だったからだ。

「雪蛍くんが結萌と付き合ってくれるなら黙ってようかと思ったけど、それは無理みたいだし、スキャンダルにされたくないなら、口の利き方気をつけた方がいいんじゃない?  分かったら、この話は終わり。それでいい?」

 桜乃さんは全く悪びれた様子がない。

 彼女の態度にも発言にも腹が立つけど、私たちの関係を引き合いに出されてしまうと何も言う事が出来ない。

「雪蛍くん、もういいよ。この件はこれで終わりにしようよ……」

 言いたい事は山ほどあるけど、私と原さんの間に何も無かった事さえ知れればそれだけで十分だった。

 だからもう終わりにしようと雪蛍くんに提案したのだけど彼は納得せず、

「駄目だ。俺は桜乃に謝って貰わねぇと気が済まねぇ。莉世を苦しめたんだ、このままなし崩しにはさせねぇよ。自分が悪かったと認めろ。それと、金輪際俺らに仕事以外で関わらないと約束しろ。俺の要求はその二つだ」

 険しい表情のまま桜乃さんに詰め寄った。

「南田さん、愛されてるねぇ。羨ましい~」

 何がおかしいのか、彼女は笑いながら言葉を続けていく。

「雪蛍くんも馬鹿な男。そんな女の為に、せっかくのチャンスを無駄にするなんてねぇ」
「何が可笑しいんだよ?」
「だってそうでしょ?  私にそんな口利くんだもん。バラされてもいいって事なんでしょ?  二人の関係。証拠だって持ってるのよ?  ほら、二人が仲良さそうにしてる沢山の証拠」

 そう言って出してきたのは撮影で旅館に滞在していた時のを始め、プライベートで互いの部屋を行き来している場面など、多数のシーンを写した写真だった。

「まぁ、あまり親密なシーンの写真は無いけど、私やマネージャーの証言もあれば十分でしょ。どうする?  謝るなら、週刊誌に売り込むのだけは止めてあげてもいいよ?  雪蛍くんが結萌の彼氏になってくれるなら証拠は全部捨ててもいいよ?」

 まるで勝ち誇ったかのように有り得ない二択で迫る桜乃さん。

 この中なら当然謝罪を選ぶだろうけど雪蛍くんは、

「はは、笑っちまうな。そんな二択、誰が選ぶかよ。いいぜ?  そんなに週刊誌に売り込みたきゃ売ればいい。そんな事で脅せると思ったら大間違いだ」

 ハッキリそう断言すると、彼の反応が予想外だったのか、自信に満ち溢れていた桜乃さんは急に焦り始めた。

「な、何よ?  嘘じゃないわよ?  本当に売り込むわよ?  貴方自分の立場分かってるの?  そんな女の為に、人気や地位を失うかもしれないのよ?」

 桜乃さんのその台詞には、私も頷きたくなる。

 だって、私の存在のせいで雪蛍くんの今後が左右されてしまうなんて耐えられないから。

 何とかして彼に考え直してもらおうと口を開きかけた、その時、

「構わねぇよ。遅かれ早かれ俺は莉世との事を公表するって決めてるし、仮に公表して俺の人気が落ちたとしても、その程度で俺のファンを辞める奴からの応援なんていらねぇ。仕事だって、貰えるものだけを一生懸命やってく。もうこれで話は終いだ。桜乃、お前は謝る気がないらしいから俺はこの件を社長やアンタの事務所にも報告する。それじゃあな」
「渋谷くん、待ってくれ――」

 淡々と言葉を並べた雪蛍くんは話は終わりと言って私の手を取ると、原さんの呼び掛けを無視してそのまま部屋を出た。

「雪蛍くん、あんな事言って……」
「いいんだよ。前にも言ったけど俺は莉世と別れるつもりねぇんだから、いずれはバレる。それが早いか遅いかだけだ。さてとすっかり遅くなっちまったな。帰るぞ」

 啖呵を切って部屋を出た彼を心配する私をよそに雪蛍くんはというと、気にするどころか晴れやかな表情すら浮かべていた。


 そして、結局この件は宣言通り雪蛍くんが事務所を通して桜乃さんの事務所にも報告をしたのだけど、相手側からの謝罪と私たちの関係を週刊誌に売り込む事はしない、証拠も全て処分したから共演NGという条件だけは取り下げて欲しいという頼みを聞き入れる事で決着が着き、私たちはこれまで通りの日常を取り戻す事が出来たのだった。
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