ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情【完】

夏目萌(月嶋ゆのん)

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ヤキモチ妬きな彼からの狂おしい程の愛情

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「ふざけるな!  二人きりでなんて会わせる訳ねぇだろうが。その意味、分かるよなぁ?」
「……君が何を言っているのか僕にはさっぱりだよ」
「あくまでもしらを切るつもりかよ」
「そんなつもりはないけどね。それじゃあ、渋谷くんも同席してもらって構わないから、時間取って貰えるかな?  僕の方は、夜なら何時でも構わないから」
「…………分かった。明日、俺の方から連絡する。だからこの電話にはもう掛けてくるな。いいな?」
「……ああ、分かったよ。それじゃあ、また明日」

 電話を終えても尚、雪蛍くんの表情は険しいまま。

「……雪蛍……くん……」

 そんな彼に、どのタイミングで声を掛けたら良いのか迷った末、私が遠慮がちに声を掛けると、

「――悪ぃ、勝手に会う約束しちまった。莉世、明日行けるか?  無理なら俺一人で会ってくるけど」

 急に表情が和らいだ雪蛍くんは、優しく労わりながら問い掛けてくれた。

「大丈夫、体調はもういいの。ただ、ずっと不安で……なかなか復帰出来なかっただけだから……」
「そうだよな。ごめんな、気付いてやれなくて」
「ううん、雪蛍くんは何も悪くないよ。それに、ね……こうして来てくれて、嬉しかった」
「莉世……」

 名前を呼んだ雪蛍くんの手が私の頬に触れる。

「雪蛍……くん……」

 私が名前を呼び返すと彼の指が私の顎を軽く持ち上げ、

「っん……」

 優しく触れるように、唇に口付けてくれた。

 いつになく控えめで、まるで啄むようなキスをされるけれど、会うのも触れるのも久しぶりなせいか、何だか少しだけ物足りなさを感じてしまう。

 それは雪蛍くんも同じだったようで、徐々に熱を帯びる唇や少しずつ荒くなる息遣いに、私たちはどちらからともなく互いを求めていく。

「雪蛍……くん」
「莉世……」

 名前を呼び合い、互いの存在を確かめ合うように何度も交わされるキス。

 それはどんどん激しさを増していき、身体は疼き出してくる。

 そして、息継ぎをする為に口が薄ら開きかけた瞬間をまるで待ち構えていたかのように、雪蛍くんの舌が私の口内に入り込んでくる。

「んっ、……ふぁ……」

 幾度となく口内を刺激され、舌を絡め取られた私の身体からは力が抜けていく。

 すると、一旦唇を離した雪蛍くんは私の身体をカーペットの敷いてある床に優しく倒すと、熱を帯びた瞳で見下ろしてきた。

「莉世が欲しい……」

 その言葉を合図に私たちは会えなかった時間を埋めるように互いの身体を求め合い、温もりを肌で感じていく。

 結局この夜は私を一人にしたくないと雪蛍くんが泊まってくれて、二人一緒に眠りに就いた。

 あの日から不安で夜もろくに眠れなかった私は彼の温もりに包まれたおかげで、安心して眠る事が出来たのだった。

 そして翌日、雪蛍くんの仕事終わりに合流した私たちは原さんと待ち合わせているホテルの一室を訪れた。

「わざわざ来て貰ってすまないね。まあ、座ってよ」

 原さんに出迎えられた私たちは部屋に入るとソファーに座るよう促され、向かい合う形で席に着いた。

「あ、何か飲み物でも頼もうか」

 ルームサービスを頼もうとした原さんを遮るように、「そんなのはいいから、さっさと本題に入ろうぜ」と雪蛍くんは彼を睨みつけながらそう言い放った。

 すると、そんな雪蛍くんの言葉に同調した原さんは、

「……そうだね、それじゃあそうしようか」

 ふうっと、軽く息を吐いて話を始めた。

「話っていうのは、あの日、南田さんとホテルで話をした日の事だよ」
「そんな事は分かってんだよ。今更何なんだ?  弁解でもする気か?」
「弁解……というより、あの日の事を、順に説明しなければと思って呼んだんだ」
「説明だ?」
「……南田さんが仕事を休んでいると聞いて、あの日の事が原因ならば謝らなければならないと思ったんだ。南田さん、僕はある人に頼まれて君を罠にかけてしまったんだ。申し訳なかった」
「……ある人に、頼まれた?」

 雪蛍くんに居るだけでいいと言われていた私は今の今まで黙っていたのだけど、彼のその言葉に驚き思わず声を上げていた。
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